ナルシシズムどうしの複雑な関係
このnoteでも何度か登場している,誇大型の自己愛と過敏型の自己愛という2つの自己愛の形があります。
誇大な自己愛は,強い自己肯定感やすべてができるという全能感を持つ,自分が特別扱いを受けるべきだという特権意識を抱く,周囲の人々よりも自分が優れていると感じやすい,他人にもその自分の素晴らしさを認めるべきだと感じる傾向がある,といったように「イケイケ」な感じを醸し出す傾向があります。
その一方で過敏型の自己愛は,周囲の人に褒められたい,あわよくば注目されたい,周りの人がどう思っているかが心配になるなど,公的自意識が高そうな人物として描かれる傾向があります。
誇大と過敏
この,誇大な自己愛と過敏な自己愛がどのような関係になっているかということがよく問題になります。
そして私自身も以前,この問題について論文を書いたことがあります(自己愛傾向によって青年を分類する試み--対人関係と適応,友人によるイメージ評定からみた特徴)。普通に使われる自己愛的な特性を測定する尺度から,統計的にこの2種類の自己愛を導き出すことができるというアイデアについて書いた論文です。
この論文の中に書いてある2種類の自己愛の構造については,当時は「よく思いついたな」と我ながら思ったものなのですが……まあちょっと普通の尺度の扱い方からは外れていますので気軽にやりにくいかもしれません。
誇大と過敏の関係
近年,海外でもこの誇大型と過敏型の自己愛に関する研究が増えています。海外の研究では,誇大型と過敏型をそれぞれ別の尺度で測定する,というのがスタンダードです。日本でもそのような尺度があり,私の研究との対応についても確認した論文があります("2種類の自己愛"モデルにおける相互関係の検討)。
海外で関係を検討した論文
誇大型の自己愛と過敏型の自己愛の関係を検討した研究が近年発表されました。この論文です(The Higher the Score, the Darker the Core: The Nonlinear Association Between Grandiose and Vulnerable Narcissism)。なんとなくリンク先のグラフが見えるかと思うのですが……。
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