
「早稲田」と「慶應」をキーボードで入力すると左手中心と右手中心になる
パソコンでこの記事を読んでいる人がどれくらいいるのかはよくわからないのですが,もしもパソコンのキーボードが目の前にあるなら,次の文字を入力してみてください。
◎早稲田=waseda
◎慶應=keio
右手と左手,どちらをよく使って入力しましたか?
「早稲田」と入力するときは左手,「慶應」と入力するときは「e」以外は右手になったのではないでしょうか。もちろん,ホームポジションをちゃんと守っていればより確実です。
どうやって入力するの?
日本語や中国語のような,多くの種類の文字を使う言語をどうやってキーボードから入力するのか,アルファベットを使う国の人にとっては不思議に思うようです。それはそうですよね。
私も海外の研究者とそんな話をして,何度か実演してみたことがありますが,たいてい興味をもってもらえます。変換して確定していくようすが面白いようです。
私自身はキーの上にひらがなが書かれていないUSキーボードを使うのが好きなので(JISキーボードだと微妙に配置がズレるので入力ミスしてしまうのです),そのキーボードを使って実際に入力するとますます不思議に思われるようです。
QWERTY
それにしても,キーボード上のアルファベットの並び方って不思議ですよね。ABC順でもありませんし,ランダムに並んでいるように見えます。
しかし,タイプライターを使っていた頃には,この並び順にすることでタイプライターが壊れにくくなるというメリットもあったようです。もちろん今は壊れてしまうようなことはないのですが,このキー配列だけが残っているというわけです。
しかも,この配列が何か最適解となっているというものでもなく,タイプライターが1社による寡占状態になったことで,半ば強引にこのキー配列に確定していったという歴史があります。いま当然のように行われていることが,別に最適というわけでもなく,偶然や成り行きによってそうなってしまっていることもあるということは,認識しておいた方が良さそうです。
「こうなっているのが当たり前じゃないか」と思うようなことの中にも,「それはたまたまそうなっただけ」ということがあるのです。
QWERTY効果
このキー配列ですが,「ホームポジション」という指の配置がありますよね。そこからアルファベットを見てみてください。右手よりも左手の方が,たくさんのアルファベットを押さないといけないような配置になっていると思いませんか?
このことによって,右手よりも左手の方が押さなければならないアルファベットが多くなり,結果的にキー入力の難易度に左右差が生じると言われています。たとえば,キーボードの左手の範囲のアルファベットよりも右手の範囲のアルファベットの方が早く押すことができるということがあるそうです。
また,右手の範囲のアルファベットの方が左手の範囲のアルファベットよりも「ポジティブ」に評価されやすいということも言われています。
まさに,“QWERTY効果”です。偶然というか歴史の流れで決まったような配列なのに,そこに何か法則が生まれてしまうということですよね。
実際にあり得る?
この効果について実際に検討した研究があります。この論文(The QWERTY Effect: How typing shapes the meanings of words)です。
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