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謙虚さは怒りを抑制する

割引あり

パーソナリティ(性格)特性としての「謙虚さ(humility)」という心理特性が研究されています。自分自身を適切に評価し,他者を尊重しつつ過剰な自己中心性や誇張を避ける姿勢のことを指す概念です。

これまでの研究では,謙虚さは怒りや攻撃的な衝動の減少と関連している可能性があることが示唆されているようです(考えてみれば当たり前の関連のようにも思えますが)。


謙虚さの要素

謙虚さには,どのような要素があるのでしょうか。これもこれまでの研究から,次のような要素がふくまれることが示されているようです。

◎新しいアイデアに対する開放性
◎自己を正確に評価する意欲と能力
◎自分の過ちを認める能力
◎利他的で他者志向で,自己中心性が低いこと
◎他者の成功を祝福すること
◎他者と協調すること

謙虚さが,新しいアイデアに対してよりオープンになることや,他者の価値,美しさ,重要性を認識することにも関連するというのは,日本における「謙虚さ」というイメージとはちょっとズレがあるようにも感じます。とはいえ,謙虚であることは自分の意見よりも色々な意見を受け入れることにもつながるものです。このような要素もふくむものとして研究されているようです。

特性と状態

「謙虚さ」は,特性としての側面と状態としての側面の両面を持ちます。

「特性としての謙虚さ」は,パーソナリティ(性格)のように,時間と場所を越えてある程度一貫した個人の特徴を表します。パーソナリティのHEXACOモデルには「正直さー謙虚さ」という特性があり,これは誠実さ,公正,謙虚さといった言葉で表現される次元です。他にもこれまでには,謙虚さの個人差を測定する尺度も開発されているようです。また,自分の知識の限界を認識し,他者の知的な強みを評価する意欲とされる「知的謙虚さ」という概念も研究されています。

「状態としての謙虚さ」は,状況や時間と共に変動する可能性がある謙虚さのことです。たとえば,研究の参加者に「他人に対して思いやりがあり,情け深く,理解力があると感じたときや,あなたが親切や寛大さを示したとき,優雅さを発揮したとき」のことを思い出してもらうことで,状態としての謙虚さを喚起しています。また別の研究では,何かの課題の最中に,謙虚さに関連する言葉を短時間だけ示すことで,プライミング効果としての謙虚さの喚起を行っています。ただし,プライミング効果については再現性の問題も指摘されているようです。

状態としての謙虚さについて考えると,日々の生活の中で謙虚さを促すような介入にも効果がありそうです。

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