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愛着と思いやりへの恐れ

割引あり

子どもの頃の親や養育者との人間関係の中で,愛着が形成されると言われています。そして,形成された愛着は個人の中に取り込まれ,大人になってもそのパターンは残っていくとされます。

成人の愛着パターンは,不安と回避と呼ばれる不安定な愛着パターンの2次元に関連して特徴付けられます。

◎不安:ほかの人からの拒絶を予想する傾向
◎回避:ほかの人との親密さに対する不快感をもつ傾向


思いやりの恐怖

不安定な愛着をもつ人は,思いやり(コンパッション,慈悲の心)を経験するときに恐怖や不快感,嫌悪感を抱くことが多いと言われています。これを「思いやりの恐怖」と呼んだ研究者がいます。自分を大切にできない,他の人を大切に思えない,といった感覚でしょうか。

思いやりの程度も愛着と同じように,幼少期の人生経験によって発達するという理論があるようです。また,不安定な愛着を示す人は対人関係の中で恐怖反応を示しやすく,親しい関係を保つことを妨げる傾向があるとも指摘されています。また,幼少期に一貫性のない養育を受けることは,人間関係に関連する神経系の発達にも影響を受けると考えられています。

回避と不安

回避が強い人は,愛情の欲求や否定的な感情状態を抑圧したり無視したり,人間関係から独立したいという欲求が強い傾向があります。このことは,自分の欲求に気づきにくく,困っているほかの人の認識も弱くなることから,ほかの人に対する思いやりへの恐れ,他者からの思いやりへの恐れに関連すると考えられます。

不安が強い人は,ほかの人に過剰に依存しており,自己批判的で,脅威に対して過剰に反応する傾向があります。また不安が強い人は,自分が愛情や支援を受けるに値しないというネガティブな自己価値をもつ傾向があります。不安の強さも,思いやりへの恐れを抱くのではないかと考えられます。

実際に,愛着回避と不安は,思いやり(コンパッション)への恐れを抱くことに関連するのでしょうか。メタ分析で関連を検討している,こちらの論文を見てみましょう(A multi-level meta-analytic review of attachment and fears of compassion)。

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