見出し画像

ナルシストはノイズを知覚しやすい

割引あり

ナルシシズム(自己愛)の誇大な側面(自分に自信があって特別だと感じる傾向)を測定するよく知られた尺度に,Narcissistic Personality Inventory(NPI)があります。この海外の尺度の中には,「私は人を本のように読むことができる」という質問項目が含まれています。自分は他の人が考えていることくらい,ちゃんと理解しているよ,という意味かとは思うのですが……。


解読能力

質問項目にそのような項目があるからといって,実際に他の人の考えや感情を読み取る力が高いのかどうかはわかりません。しかし,NPIにそのような項目が含まれているということは,他のナルシシズムを測定する質問項目と関連が見られるということでもあります。

ナルシスティックな人は,表情に表れた感情を正しく解読する傾向があるのでしょうか。

感情認識

他の人の感情を読み取ることができる程度は,人によって異なります。そして,これまでにもナルシシズムと感情認識能力との関連が検討されていますが,結果は一貫していないようです。

この不一致にはいくつかの理由がありそうです。たとえばある研究では,ナルシスティックな人は,恐怖,憎悪,悲しみ,驚きといった感情を認識にしにくいと報告されています。一方で,他の研究では,ナルシスティックな人は怒りの感情を認識しやすいと報告されています。

信号とノイズ

感情認識で「正しい」という判断は,ある表情を見たときに,多くの人が認識する感情と同じ感情だと認識したときのことを指します。自分見た表情kら解読した感情が,大多数の人々がその表情から認識する感情と一致するというのは,社会の中でのコミュニケーションに齟齬が少ないことを意味します。

現実の中では,ある表情を見たときに,ある感情ひとつだけが認識されるのではなく,複数の感情が混在された形で知覚されることも多いとされます。表情に含まれない付加的で二次的な感情であるノイズのようなものも推論してしまうのが人間です。これは,本人のパーソナリティ,価値観,個人的経験,社会的な知識などから生じる感情認識のバイアス(歪み)です。

自己愛と感情認識

今回紹介する研究では,ドイツとポーランドで行われた調査が分析の対象となっています。個人のナルシシズムと,集団におけるナルシシズムのレベルが,感常任死とどのように関連するかを検討しています。さらに,感情の正しい評価と,意図していない付加的な感情の認識の両方に注目します。

では,どのような結果が得られたのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Narcissism predicts noise perception but not signal decoding in emotion)。

ここから先は

1,058字

PayPay
PayPayで支払うと抽選でお得

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?