ダークな性格とレジリエンス
ストレスフルな状況や悲惨な状況を経験して,落ちこんだり抑うつ的になったりしても,そこから立ち直る現象やプロセス,また立ち直りに影響する心理的な特性をまとめて「レジリエンス」と呼びます。時には,立ち直りに影響する心理的な特性は「レジリエンシー」と呼ばれることもあります。
レジリエンス
レジリエンスは,単にストレスにうまく対処することを指すわけではありません。落ちこんだ後に回復するという現象や能力も含まれます。
とはいえ研究の中では,「レジリエンスを測定する(とされる)心理尺度」が用いられるのも確かです。すると,レジリエンスの個人差を測定することができます。レジリエンスの個人差は,その人のパーソナリティ,情動への対処,認知的能力,対人関係の質など全体的な特徴に関連します。
レジリエンスとされるものの高さは,ストレスフルな出来事に対する認知処理能力の高さ,ポジティブな感情の抱きやすさ,神経症傾向の低さ,勤勉性や外向性の高さ,などが関連します。
共感
共感は,感情を認識する認知的な側面と,自分の感情状態を他者の感情状態と調和させる感情的な側面の両方を含む概念です。共感は,互恵的な向社会的な行動の基本となり,円滑な社会的関係を営む上で書かすことのできない要素だと考えられています。
レジリエンスとの関係を考えると,単に共感が高めればレジリエンスも高いと考えることはやや短絡的です。他の人に共感的にふるまうことがレジリエンスにつながるという研究もあれば,他の人に対して敵対的にふるまうことで回復につながるということもありえるからです。
ダーク
共感が欠如することに関連するパーソナリティ特性といえば,ダーク・トライアドです。マキャベリアニズム(他者を自分の利益のために利用する),サイコパシー(冷淡で倫理観が欠如),ナルシシズム(誇大で特別意識を持つ)という3つの特性はいずれも,共感の低さに特徴づけられます。
ネットワーク分析という手法を用いて,これらの関連を検討した研究があります。どのような結果が得られているのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Structure of resilience: A Machiavellian contribution or ‘paddle your own canoe’)。
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