
ナルシストが思いやりに欠けるのはどんな時?
北海道の釧路に「あの人はナルシスト」という名前のベーカリーがオープンしたそうです。
このネーミング,気になります。ナルシストも研究対象にしている立場からすると一度行ってみたいなと思うのですが,ふらっと訪れるにはあまりに遠いですね……
自宅から自動車で20時間くらいかかるとGoogle Mapに教えてもらいました(どうして自動車……)。羽田空港から釧路まで飛行機で1時間40分です。
自己愛と共感性
さて,ナルシシズム(自己愛)というパーソナリティ特性ですが,いくつかの内容からなる複合的な特徴をもつものになっています。たとえばこの論文で作成されている病理的自己愛目録(PNI)という尺度では,次のような特徴が含まれています。多様な内容が含まれていますよね。
◎誇大空想:成功や賞賛や承認を得るという補償的な空想にとらわれること
◎自己犠牲的自己高揚:過度に肯定的な自己イメージを保持するために利他的な行為を意図的に行うこと
◎搾取性:操作的な対人志向性
◎権威的憤怒:特権意識に基づく期待が満たされなかったときに生じる怒り感情
◎随伴的自尊感情:自尊感情の著しい変動の感覚と,賞賛や承認という外的供給源がない時に制御不全となるという自覚があること
◎脱価値化:必要とされた賞賛をしてこない相手に無関心になり,期待外れの相手からの承認を必要としていたことを恥じること
◎自己隠蔽:他者に対して自分の失敗や欲求を見せないようにすること
そして,自己愛的な傾向の大きな特徴のひとつが,共感性の欠如です。共感性は,他の人の感情の状態を認識して,他の人が抱いている感情と同じように感じる能力のことを指します。自己愛的な人物は,この共感性が欠如する傾向にあるということが昔からいわれています。
ところが,実証的な研究の中では,この点が曖昧です。
実際の関連は?
そこで,メタ分析の手法を用いて自己愛的な傾向と共感性との関連を検討した研究があります。この論文を見てみましょう(When is narcissism associated with low empathy? A meta-analytic review)。
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日々是好日・心理学ノート
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