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研究生活セット

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研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
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#研究者

心理学の中でパーソナリティ分野が複数分野の橋渡しをしている

心理学がいつ成立したのかには諸説あるかと思うのですが,ひとつは19世紀後半と言えるのではないでしょうか。そして,ある学問が成立すると,次々とそのなかで枝分かれしていくものなのですが,心理学でも同じように,発達心理学や社会心理学や学習心理学や認知心理学と,細分化されていきました。 すると,同じ心理学の中でも交流が少なくなっていく,という現象が生じます。 プロフィールGoogleの学問向けプラットフォームであるGoogle Scholar(グーグル・スカラー)には,研究者のプ

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面白い研究につながるリサーチクエスチョン

面白い研究をおこなうには,どうしたらよいのでしょうか。今回も『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』から,そのヒントを探っていきましょう。 ギャップ・スポッティングこれまでの記事で,リサーチクエスチョンを立てるときによく使われる,ギャップ・スポッティングについて説明しました。これは,先行研究の穴を埋める研究計画の立て方です。 先行研究ではここが押さえられていない,この研究領域は誰も踏み込んでいない,この方法がこの研究

たくさんの著者がいる論文を書く時のガイドライン

他の研究分野でも同じではないかと思うのですが,心理学の研究でも1本の論文に示される著者の数は,どんどん増加してきた印象があります。私が大学院生の頃はまだ論文の著者が「1名」つまり単著であることが珍しくなかったのですが,いまでは少数派になっているのではないでしょうか。 メリット共著で論文を書くことのメリットはあれこれと考えることができそうです。 ◎執筆のスピードアップ……手が空いた人が作業することができる,共同研究者がいるとプレッシャーになって作業が進む? ◎ストレスの低減

研究者のコピペと捏造

今回は,『研究者のコピペと捏造』という本を紹介したいと思います。 研究者なのにコピペ?捏造?と疑問に思う人がいるかもしれません。しかし,世界中で研究を行う際の問題が指摘されていて,何らかの問題から論文が撤回されるということもよく起きることです。 再現性の問題心理学でも近年話題になるのが,再現性の問題です。心理学の実験結果のうち,他の研究者が同じ手続きで必ず結果が再現されるわけではありません。そして,研究の再現性を検討するプロジェクトも行われていて,そこで結果が再現された研

研究者を評価する数字の話

一時期よりは収束した印象がありますが,最近おきた出来事の中で,研究者を評価する数字が話題になっていました。「この研究者はh-indexがゼロだからたいした研究者じゃない」とか,そういった話です。 今回は研究者を評価する数字について書いてみたいと思います。 大学・学部学科・研究室の選び方大学に進学した経験のある人は,ご自身の進学先を選んだ理由を思い出してもらうと良いかと思います。明確な理由で大学や学部学科を選んで進学した人もいるとは思うのですが,どうしても大学というものは,

引用文献トップ100

数年前のものですが,「世界で最も引用された論文トップ100」という記事があります。どういった論文の引用が多いのでしょうか。 この記事によると,引用回数トップの論文はこれです。ただし,記事が4年ほど前のものですので,いまもこの論文がトップなのかどうかはわかりません。 山の頂の小石この記事にもありますが,よく引用されるトップ100の論文というのは,高い山にたとえれば,頂上のほんの1センチにも満たないところにある論文のようなものだということです。山の頂上に乗っている小石のような

研究者が陥りやすいバイアスとトラブル

心理学の論文も,著者が1名の単著で発表されるものというのは本当に少なくなってきた印象があります。 研究も,多くの場合は共同作業です。アイデアを話し合い,協同でデータをとり,執筆を分担する……ということもあれば,さまざまな役割のなかで1本の論文が完成することもあります。なかなか,「これは必ずこういうものだ」というルールがすべてに当てはまるわけではありません。また,研究分野によっても,ずいぶんしきたりは違うのですよね。 なかなか厄介な話です。 貢献の捉え方複数の研究者で研究

研究者はどんな研究人生を歩むのか

個人で研究活動を行う研究分野と,共同研究が当たり前の研究分野,いろいろな研究の形態があります。世界中の研究者と連携しながら数十人,時には数百人と連携するような研究のスタイルをとる研究分野もあります。 心理学でも研究のスタイルはさまざまです。一人で論文を書くこともありますし,数十人の著者のなかの一人となることもあります。 でも,なんとなく,「偉くなると著者の順番の後ろのほうに名前が連なることが多いんじゃないかな?」という印象を抱くのではないでしょうか。でも,もちろんこれも研

研究者RPG(6):すごい研究者の日々

さて,今回こそ最終回です。これまで5回にわたって,研究者が書いた論文の被引用回数について書いてきました。 研究者RPG(1):研究者の評価 研究者RPG(2):論文の被引用回数について 研究者RPG(3):就職するための被引用回数 研究者RPG(4):一流研究者たちの被引用回数 研究者RPG(5):伝説的研究者の被引用回数 最後は,私が見た範囲に過ぎないのですが,すごい研究者の姿や印象,どうやって研究業績を増やしているのか,どういう戦略が立てられているのか,などについて書

研究者RPG(5):伝説的研究者の被引用回数

研究者たちが論文を書いて,それが多くの論文や発表で引用される。その数字が研究者たちのひとつの評価になっているというお話の続きです。 今回は,もっとすごい研究者たちの数字を見てみようと思います。 そこで被引用回数が10万を超えるすごい研究者たちと,すでに存命ではない伝説的研究者たちの被引用回数を見てみましょう。研究者ロールプレイングゲームとして経験値を積み重ねた勇者の姿を見ることができます。 過去の記事はこちらです。 →研究者RPG(1):研究者の評価 →研究者RPG(

研究者RPG(3):就職するための被引用回数

今回も引き続き,研究者にとって重要な論文にまつわる数字を見ていきたいと思います。そして今回は研究者の歩んでいく道(?)を見ていきたいと思います。若手の研究者から順番に数字を並べていくと,研究者の進む道の様子が想像できます。 この記事は,過去2本の続きです。これまで2本の記事の中で,研究者にとって自分の論文を何回引用されるかが重要な数字なのだということを説明してきました。 →研究者RPG(1):研究者の評価 →研究者RPG(2):論文の被引用回数について 今はGoogleが

研究者RPG(2):論文の被引用回数について

※出てくる数字は投稿時のものです。 インパクトファクター(IF)という数字があります。共同研究者と「どの雑誌に論文を投稿する?」「インパクトファクターの高いところから試してみる?」という会話をすることがあり,そこで出てくる数字です。 インパクトファクターは,ある雑誌に過去3年間に掲載された論文がその最終年に何本引用されたかを平均した値です。 たとえば,雑誌Aに掲載された2016年,2017年,2018年の論文が100本あったとします。2018年にその100本の中でいずれ

研究者RPG(1):研究者の評価

研究者は,出版した論文や書籍,学会で発表した内容などが評価されます。「どんな研究をどれだけやっているか」ということですね。 さて研究者が就職に応募する際には,履歴書とともに研究業績書を提出しますので,その研究者がどのような研究をしているのか,何本の論文をこれまでに書いているのか,どのような書籍を出版しているのかはすぐにわかります。英語ではCV(curriculum vitae)と呼ばれていて,研究業績もひとつの経歴として履歴書の中に含めて作成します。 「研究」という活動は