素敵な朝ごはん
旅先や日々の暮らしのなかで特に楽しみで好きなのが「朝ごはん」だ。朝から美味しいご飯をお腹に入れると、それだけでその日ずっと幸せな気持ちでいられそうな気がする。ましてや、それが自分の大好物であったり、大切な人と一緒に食べればなおさらだ。
僕にとって忘れられない朝ごはんがある。それはサンフランシスコの海沿いの公園「コールデン・ゲートナショナル・パークス」のなかにあるカフェで食べたグラノーラと温かいカフェラテだと思う。
当時、滞在していたゲストハウスのマダムに晩ご飯のとき、美味しい朝ごはんを食べられる場所はないか、と聞いてみた。すると
「ここから、歩いて5分の公園のなかのカフェがオススメよ。何を食べても美味しいから」と教えてもらったのだ。
朝早く目が覚める。身じたくを済ませて外に出ると、昨晩の雨で街中が濡れていた。でも、空は青く澄み、海からの風が心地よいと思わせてくれた。横断歩道を渡り、海を眼前に眺めながら、道を進む。見たこともないくらいの大きな公園なのに、散歩をしている人、ランニングをしている人がちらほらいるだけだった。
目的のカフェに着く。そこは彩り鮮やかな野菜やハムが収められたショーケースのあるレジ兼キッチンスペースと奥にカウンター席が備え付けられた小さなカフェだった。大きな窓越しに見える景色は、どこまでも続く深い青の太平洋だった。時おり、大きな波しぶきをあげて、崖に当たっている。朝から、いい景色を一人占めにして、なんだか幸せな気分になってきた。
レジのメガネをかけた大柄で陽気なおばちゃんにヨーグルトをかけたグラノーラと温かいカフェラテを注文する。それは、想像以上にすぐ出てきた。フルーツの甘みとヨーグルトの酸味がたまらないグラノーラに、ほろ苦さが舌に残るカフェラテ。海を眺めながら食べるそれは、僕にとって最高の朝食だった。しばらくボーッとしていると、暇そうにしていたレジのおばちゃんが話しかけてきた。僕のたどたどしい英語を駆使しながら、なんとか会話をする。楽しいひとときだった。
「素敵な朝ごはん」がいつも僕に力と想い出をくれているような気がする。だから、旅先では美味しい朝ごはんを探しにいき、暮らしのなかでは、素敵な気持ちになれる朝ごはんを作る。
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