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「お面を描け」と邪魔する文学者くんと、久々に絵を描けて満足な絵描きくん。放送大学スク「能の世界を知る」で
放送大学スクーリング「能の世界を知る」2日目、観世元雅の〈朝長〉を、大槻能楽堂で鑑賞しました。
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この図像の右側が、この演目の主役・後シテである源朝長(平治の乱で敗れ、暗殺された源義朝の次男)であり、その魂の一部である魄(ぱく)だという設定です。
上衣をはだけて、左肩だけに着用しているのは、鎧を着ている戦姿なのだそうです。
いやあ、美しい装束に、そのラスト急に動き出し、謡の声のホビき、笛や太鼓で舞う姿は理屈を超えて、
魅了されました。
その所作の美しさは、煌びやかな衣装と相まって、この世のものとは思えぬ美が確かにありました。
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で、ここからが僕の本領発揮、この「朝長(ともなが)」の残半部分、前場(まえば)はあまり動きがないと聞いていたので、
絵が描ける僕は、クロッキーやスケッチをボールペンでしていました。
教室で「書いていいですか」と尋ね、先生からも許可をもらいましたから。笑
残念なのは、絵が描けるなんて、思いもしなかったので、小さなメモ帳しか持って行ってなかったんですよ。
もう少し大きなヤツを持って行ったのに。
まずは、登場までに書いていた、大槻能楽堂の観客席からの能舞台の様子。
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ごちゃごちゃになって失敗。笑
だって、ちゃんと描くの久しぶり、20年ぶりぐらいですから。
次に、役者の人たち。
まずは比較的うまく描けたもの。
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これは、細い廊下から舞台へ出てくる、ワキ僧。
身体が描きやすい。
顔は画面が小さいし、ペンだと描けない。
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これは同じく廊下のアイ(前シテ女主人の召使・下人)。
両肩に三角形の肩衣をつけてほぼ座っていた。
立ち上がって歩く際に、顔を描こうとして失敗。
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これは舞台に上がった前シテ(青墓の長者)女主人。
ああ、背中は上手く描けた。
顔はよく見えないし、失敗。
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これも前シテ。
お面を描こうとして、動くから失敗。
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たぶん、この廊下を歩く前シテの背中が、今回で一番出来のいいもの。
まさに、クロッキーで一瞬をとらえたもの。
作業時間は1分もないか。
相変わらず、背中を描くのが上手い、と自分でも思う。
人体の美しさを感じて、勝手に筆がそちらへ向いてしまうんですよね。
これは、小さすぎて、面が書けないから、上手く描けた、のでしょうか。
お面を、描きたいという文学者目線の願いが全てを邪魔をしている気がします。
この文学者くんはわがままで、散々邪魔しておいて、この絵が一番だと言っているようです。
「次の第3詩集の表紙に使いたい」なんて言っている気がします。
実は、この「朝長」という曲(演目をこう数えるそうです)は、後半の後場(あとば)の最後に、
衣装を変えた、チラシの烏帽子姿になった生き霊の、後シテ朝長が、にわかに激しいく動くところが一番のクライマックスであり、ダイナミックなところなんですが、
描けてません。笑
後場は聞くことの集中してしまい、自分が絵を描けることを忘れてしまってました。
文学者モードに戻り、絵描きモードは過去に置きわすれてたんですね。
いやあ、絵を描けて、楽しかった(こらこら)。
素人でも、ちゃんと絵が描ける特技を持っていて、よかった、と過去の自分に心から感謝しました。
肝心の能楽の魅力は、大いにわかった気もするし、全く逆に、期待したほど筋や表現がわからなかった気もするし、
なんだか上手く評価ができません。
10月の演芸場の落語ともども、もう1回観たいです。
「絵を描きたい!」
今度は、「お面を描け」の声を無視して、動きを描きたい、です。
ああ、放送大学へ出す課題レポートを書かないといけません。
1枚ぐらい、クロッキーを貼り付けて送ります。(おいおい)