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無気力・不安を抱える不登校の子どもたちが興味を広げ、次へと進める場所をつくる。

 2024年7月、「なりたい自分を見つける第三の場所」としてヒューマンアカデミーフリースクールが開校しました。その立ち上げに尽力したのが、ヒューマンアカデミー株式会社 戦略室 商品課 の山内香澄さん。ご自身のこれまでの経験と専門教育のヒューマンアカデミーという強みを掛け合わせ、不登校に悩む生徒や保護者の方の受け皿となり、子どもたちが興味・関心を伸ばしながら未来へと進むきっかけとなる場所を作り上げました。山内さんに、フリースクール開校に向けた想いを伺いました。

ヒューマンアカデミー株式会社  全日制教育事業部 戦略室 商品課  |    山内 香澄さん

–––ヒューマンアカデミーに入社した経緯を教えてください。

 大学は、教育系ではなく、水産系の学部を出ているんです。船に乗って海洋調査をしたり、プランクトンの研究をしたりしていました。
 
–––それは珍しいですね! 驚かれることが多いのではないでしょうか?

 そうなんです(笑)。海や水族館がすごく好きで。当時は水族館に就職すると完全に思っていました。それが、実習で働いてみたところ、「思っていたのと違う」と感じてしまい。興味があったのは、魚の飼育ではなく、水族館を通した子どもの知的好奇心を広げる活動だったんだと気づいたんです。そこから、教育業界に軸を変えました。
 
–––方向転換をし、ヒューマンアカデミーを志望されたんですね。

 当時は、どういう仕事に就きたいかよく分かっていなかったのですが、子どもや若い世代の学びのきっかけづくりに力を入れたいと思いました。ヒューマンアカデミーは、いろいろな分野の学びを提供しています。個人的には、ゲームや声優が好きなので、そういう夢を持つ生徒のサポートができるところに魅かれました。また、児童教育の分野でも、ロボット教室のSTEAM教育を通じて、問題解決力や自主性を身に付ける考え方にも共感しました。
 
–––入社してからはどういうお仕事をされてきましたか?

 入社して7年、総合学園ヒューマンアカデミーの教育連携校であるヒューマンキャンパス高校・のぞみ高校に携わってきました。ヒューマンキャンパス高校・のぞみ高校は専門分野を学びながら自分のペースで学べる通信制高校です。入学を検討されている生徒、保護者様の相談に乗り、入学のサポートまでをやっていました。体験授業の運営や面接練習など、生徒のみなさんが、不安をしっかり解消した上で、納得のいく進路を進んでいただくためのお仕事です。
そして、この4月から、戦略室 商品課に異動となり、主にフリースクールの立ち上げと通信制高校の新専攻の開発を行っています。

–––フリースクールはどのような経緯で企画がスタートしたのですか?

 当初は、若年層向けに教育を提供する、中等部をつくるという企画で進んでいました。4月に異動となり、前任者から引き継ぎを受け、どう立ち上げていくかというところで、私の気持ちが少し前に出てしまって…。

–––気持ちというのは?

 私自身、高校時代に不登校の経験があるんです。そのため、通信制高校を希望する生徒さんが昔の自分と重なって見えるときがあって…。そういう子どもたちに何かを届けたいという気持ちを持っていました。
 また、文科省の調べによると、不登校の理由のほとんどが「無気力、不安」だそうです。そういうお子さまこそ、自分の興味があることだったらチャレンジできるのではないかと思ったんです。だからこそ中等部ではなくフリースクールという名前にし、入試もなくし、受け入れの間口を広げました。総合学園ヒューマンアカデミーには、さまざまな分野の先生がいらっしゃいます。その強みを活かしながら、生徒が好きだ、やりたいと感じていることに挑戦できる学校、フリースクールを作りたいと考えました。

–––異動から7月の開校まで目まぐるしい日々だったのではないでしょうか?

 全部が大変でした(笑)。それまでの業務内容が全く異なるため、自分が主担当として商品開発に携わることが初めてで…。プロジェクトマネージャーから助言をいただいたり、同期に企画や入学案内の中身のブレストをお願いしたりなど、本当にいろいろな方に助けられました。

完成したフリースクールの入学案内

–––ご苦労されて立ち上げたフリースクールですが、どんな特徴があるんですか?
 三つあります。一つめが、通学とオンラインのハイブリッド型であること。二つめが、総合学園で培った専門教育のノウハウやさまざまな講師陣がいること。生徒が興味を持つ専門分野の学びを提供することで、やる気、興味関心を育てます。そして三つめが、学び直しと出席認定のサポートが可能だということです。
 
–––特徴に関して、一つずつお聞かせください。まず、フリースクールでハイブリッド型は珍しいのでしょうか?

 通学かオンラインのどちらかで運営しているところがほとんどです。出席確認の仕方など運営が難しいからだと思います。今後はうちも生徒が増えていくに従い課題が出てくると感じています。
 それでも、オンライン授業があることで、通学が不安な方でもまずは、オンラインで先生と顔馴染みになり、少し不安を解消してから通学にチャレンジできると考えました。また、私も、週に3コマ「ITスキル」という授業を担当しているのですが、佐賀や愛知、沖縄の子たちがオンライン上に一同に集い、学びを届けられるということが嬉しく感じます。

イラストを描く交流授業や海外について学ぶオンライン授業風景(参加している生徒さんはイラストにしています)

–––オンラインでの授業の様子はいかがですか?

 先日、Wordの均等割付けの説明していたんです。ABCの3文字を2文字の枠に入れましょうって。そしたらある生徒が「魑魅魍魎」を1文字の割付けにして、「ぐちゃぐちゃや〜」と言いながらニコニコしていて(笑)。中学生の素直さと面白さを感じて、楽しかったです。
 
–––中学生らしいですね。二つめの特徴は、ヒューマンアカデミーだからこそできることですね。
 
 はい。例えば『正解のない授業』。これは、ボードゲームや工作など、グループワークを通して、コミュニケーションの練習を行います。このカリキュラムは、ビジネスカレッジの先生に作成いただきました。
 また、『職業体感』という授業では、e-Sportsカレッジの先生から、お仕事や進路決定についてお話をしていただいたり、バス運転手からデザインの講師に転向された先生からは、今の職業に就くまでのお話をしていただいたり。この講師陣は、ヒューマアカデミーだからこそだと思います。
 Z世代は、失敗したくない、挑戦しないと言われていますが、こういう授業を通して、好き!と思ったら挑戦してみる大切さや、ゴールまでの道のりは一本ではないということが伝わったらいいなと思っています。

–––素敵ですね。三つめの学び直しと出席認定に関しても教えてください。
 
 フリースクールは、中学校の代わりに過ごす場所になるので、興味がある専門授業だけでなく、5教科の勉強も必要と考えます。そこで、学び直しは、ゲーム感覚で学べるアプリ「すらら」という外部の学習教材を使用しています。
 また、高校への進学には評定(内申点)が必要です。そのための出席認定の条件に関しては、それぞれの中学校の校長先生の裁量に任せられていることが多いです。ですので、保護者様から出席認定サポートのご依頼があった場合、各校舎の先生が中学校に連絡を取り、生徒がフリースクールでどんなことを、どれくらい学んだか報告をしてくれています。各校舎の先生方は、本当に大変だと思いますが、丁寧に対応くださっており、感謝の気持ちでいっぱいです。
 
–––山内さんがこれまで見てきた通信制を希望する生徒さんやフリースクールに通う生徒さんに共通点などはありますか?

 我慢タイプでしょうか。思っていること、やりたいことはあるけれど、それを抑え込みすぎて爆発ししまい学校に行けなくなっている子が多いかなと感じています。だからこそ、その子自身に興味を持ち、一人ひとりの考え方を大切にしたいと感じます。
 
–––山内さんのこれまでの経験や生きづらさを感じる子どもたちとの出会いが、このフリースクールに反映されているんですね。

 そうかもしれないです。商品課に異動する際に懸念があったんです。以前は、秋葉原の校舎にいたので、通ってくる生徒さんの頑張る姿が一番のモチベーションとなっていました。それが本社への異動になったため、生徒との関わりがなくなってしまうなと。でも、それは、オンラインで授業を持つことができていますし、それに加えて新しいことにもチャレンジできているので、異動してきてよかったなと感じています。
 
–––山内さんの今後の目標を教えてください。

 まずはフリースクールを全国13校舎で開校させ、教室や運営面もより充実させることで、多くの方にとってためになる場所にしていきたいです。そして、フリースクールが軌道に乗ったら、その他の商品開発にも挑戦したいです。まだ、ゼロから自分が生んだ企画というものはないですし、商品の作り方も学び始めたばかりです。異動したての頃に上長に言われて心に残っていることがあるのですが、校舎での仕事は「目の前の生徒のために」行動することが多いですが、良い商品開発は「多くの人の困った!を解決できる」と。そんな商品を、自信をもって開発できるプロフェッショナルになっていきたいです。

<山内 香澄さんプロフィール>
ヒューマンアカデミー株式会社
全日制教育事業部 戦略室 商品課
2017年、新卒入社。7年間、通信制高校の営業を担当し、2024年4月から、現事業部に異動。ヒューマンアカデミーフリースクールの開校・運営に携わる。趣味は水族館巡り。


※2024年9月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
 肩書き・役職名等は取材時のものとなります。

<ヒューマンアカデミー株式会社・会社概要>

 ヒューマンアカデミーは、学びの面白さを提供する「Edutainment Company」として、1985 年の創設以来、時代や社会の変化にあわせながら800以上の講座を編成しました。未就学児童から中高生・大学生・社会人・シニア層とあらゆるライフステージにおけるSTEAM教育やリスキリング、学び直しの支援を行っています。
 さらに、独自の「ヒューマンアカデミーGIGAスクール構想」を推進し、学習支援プラットフォーム「assist」を開発。SELFingサポートカウンセラーと講師が、個別に学習目的や目標にあわせた進捗管理や相談などの学習サポートをします。私たちは、常に最先端の教育手法やテクノロジーを取り入れ、学びの喜びを追求し最高水準の教育サービスを提供していきます。