<男性育休のススメ>出産は家族にとって人生の一大イベント、公私ともに安心して過ごすためにも育休取得を。
厚生労働省が発表した最新のデータ(※1)によると、女性の育児休業取得率は80.2%。それに対し、男性の育児休業取得率は17.13%。「2025年までに50%」と政府が掲げる目標には、まだおよぶ数字でありません。
一方、男性の育児休業取得率のヒューマングループ平均は、2023年3月末実績で、20.59%。ここ数年で取得率は伸長傾向にありますが、まだまだ男性社員の育児休業取得率は決して高くありません。男性も育休を取ることがあたりまえの社風とするために、私たち一人ひとりに何ができるのでしょう。今回は育休を取得した男性社員と上長にお話を伺いました。
——山田さんの経歴を教えてください。
山田:2020年、中途入社です。前職はシステム開発のベンダーでした。前の会社でヒューマンホールディングスのシステム開発に携わっていて、いい会社だなと思い転職を決めました。2014年に結婚しており、2019年に第一子が誕生しています。転職後の2023年4月に第二子が誕生、1ヶ月の育休を取得しました。
——なぜ育休を申請しようと思ったのですか?
山田:前の会社にいたときは、育児を妻に任せっぱなしでした。妻は一日中赤ちゃんの世話をして、話し相手もいない。育児と家事の負担に加え、精神的にもつらい思いをさせてしまいました。だから第二子が生まれたときは、かならず育休を取ろうと思っていたんです。
これまで私の周りでは育休を取った男性社員の話を聞いたことがなかったのですが、そこは気にせず申請することにしました。
——上長の橋田さんは、山田さんの育休申請をどのように受けとめましたか?
橋田:男性の育休申請だからといって特別扱いをすることもなく、「おめでとうございます、わかりました。」というのが当時の気持ちです。チームをまとめる立場として、山田さんのいない1カ月の作業分担をどうしようかなとすぐに考えを切り替えました。
——1カ月も休まれると困る、とは考えなかったのですか?
橋田:山田さんはうちのエースですから、困らないと言えば嘘になります。けれど、子どもの誕生は人生でそう何回も起こることではないし、山田さんが休暇を取れないと、私を含め他の人たちも取れなくなってしまいます。こういうことはお互いさまですから、みんなで協力すればいいんじゃないかと思っていました。
——申請は、いつ行ったのですか?
山田:出産予定日が5月上旬だったので、橋田さんには2カ月前の3月上旬に伝えました。ちょうどその頃、システムの総入れ替えがあり、2月までは部署全体が多忙を極めていたんです。ピークが去り、良いタイミングだと思い報告しました。
橋田:一般論として報告は早いにこしたことはないですが、2カ月前であれば引き継ぎは充分対応可能だと思います。そもそも安定期に入らないと報告もできないでしょうし、仮に半年以上前に言われたとしても、実際に対応の準備を始めるのは1~2か月だと思います。
——休暇中の引き継ぎはどのように行いましたか?
山田:引き継ぎ資料を作成し、引き継いでいただく方への説明を行ったのですが、いま振り返るとつめの甘い部分もありました。2、3カ月に一度くらいの割合で発生する珍しい事象について、その対処法に触れずにいたら、それが休暇中に発生してしまったんです。想定が甘かったんですね。
——休暇中、仕事のことは気になりましたか?
山田:それが、予定日より1週間早く生まれた子どもが妻とは別の病院で入院することになり、仕事の心配をする余裕はありませんでした。入院中の妻から母乳をあずかり、赤ちゃんの病院へ届け、長男を幼稚園に送り迎えするなどの育児と家事をこなし、長男を病院へ連れていけないときは実家に預かってもらい……。そんな多忙な日々の中、1カ月のほとんどを家族ばらばらの状態で過ごさざるを得なかったため、育休を取っていて本当に良かったです。もしも取っていなかったら…と思うとぞっとしますね。
橋田:出産は、生まれてみないとどうなるかわかりませんからね。もしも山田さんが育休を取らず、ご家族のピンチに対して有給消化で対応していたとしたら、そのほうが職場は大変だったと思います。きちんと引き継ぎをして、計画して休みを取っていたからこそお互いにうまく対応できたのではないでしょうか。
山田:もしも何ごとも起こらない想定で、1週間程度の休みしか取っていなかったとしたら、結局ずるずると予定外に1カ月も休まなければいけなかったですからね。
——緊急対応できたこと以外で、育休を取ってよかったと思えることはありますか?
山田:妻とのコミュニケーションの機会が増えたことは、とてもよかったと感じています。また長男も含めて家族と接する時間が増えたおかげで、より仲良くなったというとおかしいんですけど、家族の絆が深まりました。
赤ちゃんが退院できたのは育休期間が終わる3日前だったんです。生まれた子と自宅でゆっくり過ごせたのは3日だけ。正直に言えば休暇を延ばし、あと1カ月は子どもたちと過ごしたかったです。
——これから育休を取ろうと考えている男性にアドバイスをください。
山田:出産は人生の一大イベントです。想定通りに進むこともあれば、そうならないケースもあり得ます。悩んでいるなら1カ月でいいから取得したほうがいい。そのほうが、公私ともに安心して過ごせると思います。また仕事の引き継ぎを行うことで、自分自身の仕事の棚卸しをするいい機会にもなるのではないでしょうか。
橋田:育休を取ることで会社に迷惑をかけてしまうと考える人がいるかもしれませんが、むしろ育休を取ってもらった方が、私は周りにとってもいいと思います。マネジメントする立場としては、その人が、ある期間いない前提でスケジュールを立てられるので 、あらかじめ仕事の交通整理ができます。私たちの場合、山田さんの育休をきっかけに、部署の仕事を見直したことによって、効率化につながった業務もあります。
育休に限らず、長期休暇が必要なときは誰にでもあります。今回は山田さんが休みましたが、次は自分かもしれない。みんなが休みやすい環境をつくるためには、職場の風通しをよくして、普段からコミュニケーションを重ねることが大切だと思います。会社は一種のコミュニティーで、縁あって一緒に仕事をしている仲間の集まりです。仲間が困っていたら、いつでも手を差し伸べるようにしたいですね。
——ところで、今回の育休について奥さまは何と仰っていましたか?
山田:妻からは「育休が短かったね」と。「インタビュー取材では、できるだけ長く育休を取りましょうと話したほうがいいよ」って(笑)。
※2023年6月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
肩書き・役職等は取材時のものとなります。
※1 出典:厚生労働省「令和4年度(2022年度)雇用均等基本調査」
<ヒューマンホールディングス株式会社・会社概要>
ヒューマングループは、教育事業を中核に、人材、介護、保育、美容、スポーツ、ITと多岐にわたる事業を展開しています。1985年の創業以来「為世為人(いせいいじん)」を経営理念に掲げ、教育を中心とする各事業を通じて、労働力不足、高齢化社会、待機児童問題など、時代とともに変化するさまざまな社会課題の解決に取り組み、独自のビジネスモデルを展開してきました。
人と社会に向き合い続けてきたヒューマングループは、いま世界全体で達成すべき目標として掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)にも積極的に取り組んでいきます。SDGsへの貢献を通じて、「為世為人」の実現を加速させ、より良い社会づくりに貢献していきます。