(1)溺れ苦しむ友だち---大儒・司馬光が子供だった頃の英雄譚「砸缸救命」
それは中国の昔々。
「北宋」と呼ばれている時代。
司馬光という、それはそれは立派な人物がいました。
彼が子供の頃。
現代まで伝わる、ちょっと危ない出来事があったのです。
ある日、司馬家の庭園。
そこに(司馬)光を含め、遊び仲間の男の子たち五人。
皆そろって捉迷藏(目隠し鬼ごっこ)をしていました。
ある子はしゃがみ込み、鬼の手を避けながら、声を掛けて呼び寄せたり。
また別の子は鬼の近くにいながら、背後にそろりそろりと回り込んで、ゾクゾク感を楽しんだり。
司馬光は一番の年長でしたが、手を叩き「こっちこっち」と屈託なく笑っています。
みんなとても愉快に遊んでいました。
仲間の中でも臆病な子。
彼が捕まらないようにこっそりこっそり、築山に登っています。
「さあ、ここならもう安心だ!ここまでおいで!」
築山は、子どもたちの身丈より高く、大きな岩で出来ていました。
たしかにここなら捕まらなそうです。
人工的な園林といえど、あたりには竹林や芭蕉が生い茂り。
かたわらには、水の満ちた大きな水缸が、さながら湖のようでした。
しかし、足元は少しフラつきます。
中国庭園の築山「假山」に使われる岩は平たくありません。
奇岩という、仙郷を思わせるゴツゴツ尖った、変わった岩も多かったのです。
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