トーベ・ヤンソンのフレスコ画
以前、トーベ・ヤンソン(1914-2001)の画業にフォーカスした企画展について書きました。 トーベの様々な絵に接してから、私は画家としてのトーベに大きな魅力を感じています。
今回訪ねたヘルシンキ市立美術館(HAM)には、2枚のフレスコ画「都会のパーティー」と「田舎のパーティー」が展示されています。
2つの作品は、ヘルシンキ副市長の依頼で、ヘルシンキ市庁舎の食堂の「装飾壁画」として制作されました。 フレスコ画というと壁面に描かれた1枚の絵だと思っていましたが、この作品は80~100kgもあるメタルボックスを6個組み合わせて1枚の絵に仕上げたものだそうです。よく見ると継ぎ目が分かります。そのため別の場所に移動させることが可能でした。
都会のパーティー 1947年作
ダンスを踊っている白いドレスの女性は、公にはしていなかった当時の恋人ヴィヴィカ。その左下で所在無げにタバコを吸う女性はトーベ本人です。
田舎のパーティー 1947年作
くつろいだ表情と郊外の自然が溶け合う、素敵な作品です。
この絵の左下にはムーミンがいるんです❤ ちょっと謎な生き物っぽい感じが好き。
ちなみに、トーべはフジテレビで放映された日本語版ムーミン(1969)が気に入らなかったそうです。来日した折にたまたま再放送があり、トーベがうっかりテレビを見ないように、あわてて宿泊先から観光に連れ出して事なきを得たというエピソードが残っています。
日本語版に対する欧米人のコメントをみると、全く違う・かわいい・ジブリみたい・・・ですから、 私たちがアニメで馴染んでいるのは、日本化されたムーミンなのでしょう。
( 追記:1990年からテレビ東京系で放映された新シリーズは、著者サイドで内容を慎重にチェックしたものです。2022/9/12)
ちょっと脱線しましたが、同じ食堂にあったトゥネッリの3つの照明も見逃せません。古さを感じさせない、繊細かつモダンな美しい照明です。ぜひ上にも目を向けてください。
お隣の部屋に展示されているのは、トーベの弟で写真家のペル・ウーロフ・ヤンソンが撮った写真。
正面の壁をスクリーンにして、短いドキュメント映画が繰り返し上映されていて、プライベートなシーンに見入りました。
続いて、アテネウム美術館で開催されたトーベ・ヤンソン生誕100周年(2014年)の記事。 この自画像も素敵です。
フィンランドでは30万人が訪れ、日本でも累計26万人もの人が訪れたといいますから、本国並みの人気ですね。
こちらはムーミン75周年記念展(2020年 フィンランド国立博物館)
ムーミンとトーベの芸術は、コインの裏表のように切り離しては語れません。見過ごされがちだったアート世界、そしてトーベの感性や生き方などにももっと触れたいと思いました。