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モンセラット:岩山の修道院のレクイエム(スペイン)

かなり昔ですが、私には「いつか行きたい場所」がありました。
スペインのバルセロナ郊外にあるモンセラットです。切り立った岩山の上に修道院があり、その聖歌隊エスコラニアを聴いてみたかったのです。

モンセラットを知ったきっかけは、街中で偶然聴いたホアン・セレロールス(Joan Cererols 1618-1680)のレクイエムに一目惚れ、いえ一耳惚れして、彼がモンセラットの聖歌隊長だったから。モンセラットの聖歌隊はヨーロッパ最古の少年合唱団といわれています。
この曲を聴くと心が洗われ、深いところで癒される気がしました。


調べてみると、人里離れたものすごく辺鄙へんぴなところにあると思い込んでいたモンセラットは、ロープウェイでアクセスできる、サンティアゴ・デ・コンポステーラのようによく知られた聖地でした。その年の夏休みは車を借りてスペインを回る旅になりました。

バルセロナからカタルーニャ鉄道とロープウェイを乗りついて1時間ほど。
のこぎり山を意味するモンセラットは、ガウディが建築の着想を得たといわれ、そういえばサクラダファミリアに似ている?と思うような奇岩が連なっています。

標高は1236mで、その中腹に修道院は建っています。


ロープウェイで上へ



880年に、羊飼いの少年が光を放つ岩山の洞窟でマリア像を発見し、サンタ・マリア・モンセラット修道院(ベネディクト派)が建てられてカトリックの聖地となりました。フランコ政権下でも密かにカタルーニャ語でミサが続けられ、カタルーニャの象徴でもあります。大勢の人が、聖堂に祀られた黒いマリア像に会いにやってきます。  


モンセラットがインスピレーションを与えたのはガウディだけでなく、ワーグナーは何回も訪れてオペラ「パルシファル」を作曲し、ゲーテも「魔の山」と称しました。芸術家の想像力を刺激しそうな、圧倒的な景観です。


実は自分でも意外なほど写真を撮っていませんでした。黒いマリア像も聖堂も、聖歌隊も、少し登ったところにある最初にマリア像が発見されたほこらも画像は残っていません。記憶は鮮やかなのに・・・ そんなときもあるんだな。


この旅が実現したのは、ある人から「行きたいなら、待っていないでさっさと行けば良いじゃない」と背中を押されたからです。 振り返ると私は「いつか行きたい」という夢を持っていること自体に満足?して、夢を叶えるためには何もしていませんでした。まるで行きの機内で読んだアルケミストの商人みたいに。 モンセラットの旅を境に、何かを願って動けば、それに向かってすべてが動き出すと分かりました。一つが実現すると、その次がやってくることも。で、今に至る(笑)

旅でみかけた羊飼いの少年


お天気が良ければ、モンセラットの山頂からバルセロナ市街を一望でき、ピレネー山脈も望めます。トレッキングコースもあり、次の機会には、歩いてゆっくり山全体のエネルギーを感じてみたいです。


<聖歌隊エスコラニア 公式サイト>


<NHK 名曲アルバム:モンセラットの赤い本から> 
モンセラットの映像が紹介されています。