トーベ・ヤンソンの愛した孤島、クルーヴハル
ヘルシンキから東へ50km、ポルヴォーからは車で30分ほどのペッリンゲ諸島に、ムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンが、自ら小屋を建て、四半世紀通い続けた小さな島があります。夏のオープンハウスウィークに、トーベのサマーコテージを訪ねました。
ペッリンゲ諸島
ペッリンゲは200の島からなる群島エリア。黄色い丸印が、クルーヴ島に向かうツアーボートの発着点 Sturjanです。
Sturjanに向かう途中、いかだのようなフェリーで、車ごと対岸へ。
のどかな入り江から、ナントカ上陸作戦みたいなボートに乗って出発。さあ、冒険に出かけるよ~♪
外海はなかなかワイルド・・波が高いとバウンドしてお尻が痛くなります。悪天候の時はキャンセルになるため、クルーヴハル行きはお天気次第。40分弱で、ぽつんと小屋が建つ小さな島が見えてきました。
クルーヴハルに到着。桟橋もなく、入り江のような岩場でボートを降ります。おっと、滑らないように! 海が荒れて上陸できないときは、島の周りを一周して戻るそうです。
トーベは1964年、50歳のときにこの小屋を建て、70代後半まで、1年の半分をクルーヴハルで過ごしました。 森の中の湖畔のコテージではなく、海に囲まれた岩だらけの孤島の暮らしは、生易しいものではないはず。そこに自分らしさと自由を感じていたトーベは、やはり桁違いのパーソナリティーの持ち主です。
トーベと、パートナーのトゥーリッキの名前が刻まれたプレート。
小屋は一間のみ。当時の調度品がそのまま残され、ついさっきまで、二人の芸術家が暮らしていたかのような錯覚を覚えます。本や調味料、食器など、丁寧に揃えられた島の生活に欠かせない品々が目を引きます。
ここには電気も水道もありません。子供の頃からサマーハウスに親しんできたフィンランドの人にとって、決して特別なことではないそうです。
トゥーリッキのワークデスク。トゥーリッキも、著名なグラフィックアーティストでした。
四方にある窓は、360度のパノラマを見せてくれます。
10分もあれば1周してしまう島を、歩いてみました。
水色のかわいいトイレは、嵐がくると吹き飛んで(流されて?)、次のシーズンには無くなっていたとか。
思い思いに過ごす時間・・・
果てしなく広がる外洋
プールのような水たまり。
毎年やってくる、白鳥のペア。
晩年のトーベは本土に向かって、白い布を振って、安否を知らせていたそうです。
地下にはサウナもあります。
ストーブやサウナ用の薪もストック
島に咲く素朴で美しい花々。
大自然の厳しさと優しさ、その豊かな表情・・トーベの愛した世界に魅了された90分でした。手を振るお二人は、オープンハウスウィークの間、島に泊まって、訪れる人を案内して下さいます。トーベは最後の滞在が終わって島を完全に去る時、一度も振り返らなかったそうです。
ただいま~
トーベも通ったよろず屋さん、SÖDERBY-BODEN
1927年から現在まで、地元の人に愛されているお店。トーベも子供時代からよく訪れていて、ここで買い出しをしました。
小さいながら、行き届いた品揃え。
パンや野菜、魚、日用雑貨などを売っている、土曜のみオープンのマーケット。右端のお店には何と、かつてSÖDERBY-BODENを切り盛りしていたイェルダさんの姿が。イェルダさんは、トーベ&トゥーリッキと長年にわたって親交がありました。ペッリンゲで会う人はみんな、ムーミンの登場人物のようで、たちまち好きになってしまいます。
日本から訪れるには
私は、PELLINGE HEMBYGDSFÖRENINGにコンタクトして、オープンハウスウィークに予約しました。あっという間に予約は埋まってしまうので、早めに予定をたてた方が良いと思います。
アクセスや現地での案内を考慮すると、ツアーを利用するのがお薦め。トーベの研究者・翻訳者でもある森下圭子さんがアテンドして下さるツアーなら、ワクワク間違いなし! 私は偶然、サタデーマーケットで森下さんにお目にかかり、貴重で楽しいお話に目が真ん丸になりました。
クルーヴハルはレンタルウィークに宿泊も可能で、ライターさんが書かれた素敵な滞在記がたくさんあります。ご興味のある方は検索してみてくださいね。
*当時の貴重な映像 <https://www.youtube.com/watch?v=2z-oAcfVkWQ>
*ペッリンゲの訪問記はこちらをどうぞ(2023年10月)