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トーベ・ヤンソンの少女時代の思い出が詰まった群島、ペッリンゲ(フィンランド)
2021年、トーベ・ヤンソンが夏を過ごした孤島クルーブハルを訪ねました。 2年後の今年、クルーブハルへの足掛かりとなるペッリンゲを案内して頂く機会に恵まれました。その思い出をnoteに綴ります。
ヤンソン一家は、ヘルシンキ近郊の群島で夏を過ごしました。滞在したのはペッリンゲのグスタフソン家。 夏の間、都市部の人に家(母屋や離れ)を貸すのは、現金収入を得る方法として珍しくなかったそうです。
トーベが初めてペッリンゲに行ったのは1922年、8歳の頃。自然と家族ぐるみで付き合うようになり、トーベはひとつ年上のアルベルト(通称アッべ)とも仲良しになりました。
道を進むと楽しい標識を発見♪
何だかペッリンゲの人たちって面白そう・・・ちょっとワクワク。
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グスタフソンさんの家
弟とけんかをして、グスタフソン家の離れのトイレに落書きしたのが、ムーミンの原型と言われています。トイレの怪談に出てきても良さそうな、ちょっと不気味な鼻が長い生き物です。
ムーミンが黒かったときもあるそうです。そんな変遷があったとは!
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フィルムアート社 p196より
グスタフソンさんの家。
レンガ色の壁に白い窓枠の、フィンランドでは典型的な家です。
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森や草むら、海辺、すべてがトーベの遊び場でした。
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Galleria ArtMarina
トーベと一緒に遊んだアルベルトの息子がカイ(Cay)。 カイの奥さんテルッティ(Tertti)はアーティストで、同じ敷地にギャラリーを開いています。
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Ednäs Varv
アルベルトの息子カイが継いだボートヤード。 木造船の製造や船の修理、冬の間の保管などを行っています。
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アルベルトが作った船、アルベルティーナ。
マホガニー製で、ため息がでるほど美しい!!! (実物は写真よりもずっと美しいです)
この船を見られただけで、来て良かったと心底思いました。
丁寧にメンテナンスをすれば、半永久的に使えるそうです。
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訪ねた時、カイは父親のアッベと同じ風景の中で仕事中でした。
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モランの石
何の変哲もない道端と思ったら・・
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振り返ると、モランだ~~~!
ある日突然出来たらしく、面白いことにgoogle mapでは誰が名付けたのか、Bogy Stone(おばけ石)と表記されています。
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移動の途中、クルーブハルに向かうボートが遠くに見えました。 たくさんの予約客を乗せています。私もその一人だったんですよね。懐かしい!
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スニフの洞窟
トーベのお気に入りだった小さな洞窟。
スニフの洞窟のモデルと言われています。
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子供や小柄な女性でないと入れない洞穴は、思わず中を覗きたくなります。
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膝をついて中にはいると、天井の岩の隙間から、風にそよぐ樹々と空が見えました。 なんて素敵な隠れ家!
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洞窟の前は海に向かって草原が広がっています。
かつてはここまで海でした。
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Museum Horbergs Garden
ペッリンゲの昔の暮らしにまつわるものを集めた博物館です。
クルーブハルのオープンウィークの間、開館しています。
夏至祭の名残のポールが建物の右に残っていました。
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夏至祭の様子。
フィンランドあるあるで、イベントの日には「どこから来たの?」と思うほど、たくさんの人が集まります。
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クルーヴハルから見えた珍しいオーロラの写真が飾ってありました。
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トーベの「島に持っていくもののリスト」には、小屋を建てたりメンテナンスするための道具&計器類などが細々と書かれています。私には何に使うのか分からない物もたくさんあって、こういうものを当たり前のように扱えるなんて凄い!
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付近の景色。
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Pellinge Marina
私たちが泊ったのは2023年にプレオープンしたばかりのB&B、Pellinge Marina。 ペッリンゲはいわゆる観光地ではないため、泊るところが限られ、ポルヴォーから日帰りする人も多いと思います。
オープンが滞在に間に合ってラッキーでした。
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私たちの部屋は何とクルーヴハル❤
トーベの島の名前がついた部屋に泊まれるなんて光栄でした。
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中はおしゃれなワンルーム。
景色の良いテラスも気持ち良かったです。
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ゲストルームは2階部分にあり、下のフロアは常設のカフェが出来る予定。後ろの石造りの建物の横にはサウナが出来ます。
行政への様々な申請&許可がひと苦労のようで、トーベが島に小屋を建てたときも、手伝ってくれた漁師の勧めで、前倒しでどんどん準備を進めたことを思い出しました。
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丁寧にセットされたケータリングの朝食。パンもほんのり温かくて美味しかったです。
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<追記:2024年4月30日に正式にオープンしました。2024.5/2>
ペッリンゲは途中、ケーブル・フェリー(車を乗せたまま移動する動く筏のような装置)があって、通過するのに15分くらいかかってしまいます。橋をかけること対して地元の方々は、賛否が半々だそうです。不便は解消したいけれど、あまり観光地化されたくない。数少ないケーブルフェリーを残しておきたいetc 色々な思いがありそうです。
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トーベは年齢的な限界を感じ、70代半ばでクルーブハルを去りました。
様々な要因で行けなくなる前に、自ら決断したのはトーベらしいです。
「最後の夏、許しがたいことがおきた。海が怖くなったのだ」
そんな自分に気づいたときの気持ちを思うと、切なくなります。
私もいつまでも冒険心を持ち続けたいけれど、年齢が決定的に何かを変えてしまう時がやってくるのかも。 そんなときには、トーベの「現実を受け入れ、前に進む勇気」を思い出し、出来ることを最大限に楽しんでいきたいです。何歳になっても心は自由なままで。
トーベの少女時代の思い出と群島の魅力がたくさん詰まったペッリンゲ。
ムーミンの世界が育まれた素敵な場所でした。