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現場職人がDX時代の生存戦略を考えてみた

こちらの記事は
S.A.ham.ponta@SxAxTwがお送りします。

僕は現場職人でITの事はかなり疎い。
未だに客先探しは人伝で、図面も紙ベース。
お客様からの電話が豊かさの証である。

客先にはメールすら使えないお客様がいて
メールが使えても図面下さい!と言えばCADデータを現場にいる僕に送ってくる人もいる。

それがスマホで開けるのだから素晴らしい時代だが
あっという間に通信量制限に陥る。

写真や動画データは保存できないのに
やたらと紙の書類を大事にしているお客様に呼ばれて
写真確認で済む案件で高速道路に乗って現場まで向かう。

僕はそんな業界の住人だ。

そして僕自身も人の事を言える状態ではなく
随分とコンピュータには疎い。

そんな僕だが時代の波には逆らえない。
今はインターネットやらクラウドやらブロックチェーンとやらが
世界を変える時代だ。
僕が金物をハンマーで引っ叩いている間に
何処かの誰かが何万人が利用して億を稼ぎ出すシステムを
コンピュータで作っている。

何も考えなければ
僕達原始人は漏れなく淘汰されるか
一部の混血を残して
ネアンデルタール人のように駆逐されるのだろう。

だから僕は考える事にした。
この時代を生き残る作戦を。

僕の劣等な脳みそで考えられる限りで
最善の作戦を。

始めの失敗

僕にとっては良い経験になった事だし、個人的に無駄だとは思わないのだが、僕は戦略自体を誤った。

今年の春の出来事だった。

コロナ不況が到来し建設業界の受注量のムラが激しくなっていて
受注をしても緊急事態宣言の影響を受けた。

そこで僕はプログラミングを学ぶ事にした。
僕の認識ではプログラミングが出来る人はテクノロジーに明るい。
だからプログラミングを学ぶ事にした。

僕が元々出来たのは
昔工場で働いていた時に身につけた溶接ロボットのティーチングと妻が突然買って来た3Dプリンターで設計したプロダクトを出力する事だけだった。

しかし、これが如何に単純な事かと言う事をわかっていなかった。
僕は同じようなモノだろうと考えた。
僕が手始めに学んだのはHTMLとCSSというコードだった。

溶接ロボットや3Dプリンターで使ったのはg-codeというもので座標と出力で描かれる。
それをドライバーの設定にかければ一丁あがり。
ドライバーの設定も重要であるが、その設定さえ、キッチリ出来れば問題はない。
しかも、スライサーやティーチングソフトが殆ど正解に等しいコードを書いてくれるので、こちらは意味を理解し、微調整をかけてやればよかった。

それに比べてwebプログラミングは学校でやった漢文のレ点フリを更に多様にしたようなものだった。
もっと数学的なモノだろうと踏んでいた僕は初めの構えから盛大に滑り散らかした。

しかし、その後、僕は更に盛大に滑る。

訳のわからないコードを調べては並べ、クラスをつけたり、CSSの適応範囲を定義したり奮戦している間にノーコードwebなるものを知る。
これはプログラミング言語をカリカリしなくてもサイトが作れるサービスだ。

ノーコードを「濃厚度」だと勘違いして、高級なカスタードクリームのようなモノを想像でもするくらい、意味は分かっていなかったが、どうやら、そんな便利なものがあるらしかった。

そして、その後にプログラミングスキルは完全にコモディティである事を知った。
僕は現場職人として、同じ技術職であるプログラマーを尊敬していたし、それなりに(少なくとも自分と同じくらいの時間単価で)給料を貰っていると踏んでいたのだが、それは完全に幻想だった。

大手コンピュータメーカーに勤める友人からは
海外ですごく安くやってくれるところはいくらでもあるから、単純なコーディングスキルで高い給料出す処は普通ない、と言われた。

僕達職人も飽和状態が起こればコモディティ化してしまう市場ではあるが、事がインターネットをバリバリに使いこなす職種では世界規模でコモディティ化する。

衝撃を受けると共に大きな学びとなった。
世界の変化スピードも、ベクトルに向かって変化するエネルギー量も、これからの時代は想像できない程大きくなる。
グローバル化の波も緩やかではなく、津波のようにやってくる。

成功した事

プログラミングの失敗と同時に一つ成功した事があった。
それはブロックチェーンと言う技術に着目した事だった。

ブロックチェーンは特定のアドレスにあるサービスを皆で使う従来のインターネットサービスと違い、皆で所有するデータの集合の中でサービスを提供する仕組みだ。

P2Pというらしいが、エンドユーザー同士が直接やりとりをして、その記録をブロックというデータの集合体に確認作業の後に収めて情報確定をする。そのブロックに記述されている全ての経緯とブロック毎の繋がりが記録の信頼性を担保し、そのデータを全体で共有する仕組みらしい。

これなら契約の内容を一々書類で証明する事もなくデータで完結出来るし、世界中の人間を証人にしているのと同じだ。
更にアイディアやビジュアルデータに記録をつけて売買する事が出来て、上記の仕組みで管理できるので、企画や設計の譲渡、それに至らないアイディアの売買だって出来る。
改竄もされないし、記録も残るし、皆が証人。

これを使えば、個々人が最終的に入力してコントロールしなければならない重要度の高い決定も確実に精査してブロック生成時に確認される。
この仕組みを使った契約方式はスマートコントラクトというらしいが、この仕組みであれば公的機関や安全性確認が重要なシステムの遠隔操作承認なんかも安全に出来る。

この仕組みは暗号資産、当時は仮想通貨と呼ばれたモノに使われているばかりでNFT(非代替性トークン)という仮想通貨の派生系のようなモノが出始めの時期だった。

僕は、このブロックチェーンというものを身近に感じる為にも暗号資産を買ってみる事にした。
と言っても情弱な僕はたった一つしか知らなかった。
Bitcoinという奴で、その時の値段は1₿あたり約120万円。

馬鹿みたいに高いコインだな、と思ったし、そもそもコインという名前は利便上の認識でしかないから、コインじゃなくてデータなんだよな、とか思いつつ購入。

その後、上がったり下がったりしながら、その度になんで上がったのか、下がったのかを調べながら、価値の根幹であるブロックチェーンの可能性を探りながら、教材とさせて貰った。
気がついた時には1₿700万円を超えていた。

多くの人が、その値動きに振り落とされる中、僕は持ち続けた。
僕が信じていたのはBitcoinではなく、その根幹たるブロックチェーンの価値だった。
だから、Bitcoinで大損こいても、ブロックチェーンについて学べれば良かったし、ブロックチェーンを学ぶ程、Bitcoinの価値も見えてきた。

本筋からは逸れるが、今のBitcoinの値動きは異常だ。
それは本質的な価値に投資する人々に混ざって、値動きに投機している人々が大勢いるからだ。
彼らは下がれば売るので下げ幅が大きくなり、上がれば買うので上げ幅も大きくなる。

本質的な価値は所有者の頭数がP2Pの仕組みによって、そのまま仕組みの安全性に繋がる点だ。
だから僕はボラティリティを気にしなかった。

そして、その増加した資産を次のステップの予算とする事に決めた。

次の戦略へ

僕が、これらの学習を進めていた期間中、予想外の事が起こった。
コロナ禍で低迷していた建設業の中で突如仕事が忙しくなったのだ。

聞けば、多くの他業種の事業者の中でも仕事の有る無しに大きな差が出来ているらしい。
つまりは信用の問題で、少ない仕事を誰に任せるのか、元請けが判断した結果、選ばれる業者に濃淡が出ているようだった。

僕は仕事を仲間とシェアしながら、プロジェクトを進めてはおさめ、進めてはおさめを繰り返した。
気付けば夏が終わり、秋も過ぎ去って、もうすぐ冬の輪郭が見え始める11月になりかけていた。

さすがに、もう僕達の仕事も尽きるかもしれない。
冒頭で述べたが、僕にはコンピュータの能力がない。
かと言って残念ながら職人としても圧倒的なスキルを持ち合わせているわけでもなく、この道17年で悟った事は、僕にはあまり才能が無いという事だった。

周りの人々が優秀なのと、お客様の優しさのお陰で、ここまで何とかなってきた。
そして、今の流れが落ち着けば、また仕事が枯渇する可能性は大いにある。

お客様の信用にはベストを尽くして答えた。
達成感もある。
しかし、今後も途切れずに仕事を貰えると確信する程、自惚れてもいない。
お客様を支えている業者は僕達だけではない。
その業者達も、お客様にとっては大切な仲間であると思う。

だから、この後の事は僕には分からない。
それでいい。

僕は今、もう一度、春に考えていた事を考える事にした。
一つの失敗と一つの成功とだけを武器に、スタッフの生活は守るだけの建設業の回転は維持する事だけを決めて、新しい事を考える事にした。

新しいビジョンへの投資

僕はブロックチェーンへの直接的投資はBitcoinだけだったが、他にも触れておきたい技術には投資を仕掛けていた。
プラットフォームビジネス、AI、宇宙開発、自動運転、コンテンツサービス、半導体、素材など、僕が学ぶべきだと思う事柄には色々と勉強代として少額ながら投資していた。

投資を通して、学びを加速するのは僕の常套手段となった。
なんせ、金が人質になっているのだから、学びも加速する。
学んで価値が低いと考えれば、投資をやめればいいし、凄い事だと思えば、追加投資すればいい。

金額は微々たるもので数千円単位の投資であったが、塵も積もればなんとやらである。
新規事業、特に現場職人がやってみる程度のビジネスを実行するのには十分な予算となった。

本を読んで考える

僕は本当にハイテクに疎い。
DXやらブロックチェーンやらを考えているのに、ビジネスプランを練るのに、紙の本を読み漁ってしまう。

本を読む事は良い事とされる風潮があるが、何も紙の本でなくても良い。
結果、僕の本棚は勿論の事、ベットのヘッドボードも書斎机も本が溢れかえってしまっている。
Kindleで対応すれば、全てiPadに収まるし、資料費も削減できる。

なのに、僕は紙の本を買い、終いには600ページもあるケインズやトマピケティの著書まで紙で読んでしまう。
これだってデータで揃えれば場所も取らないし、解説してくれるYouTubeコンテンツだって山程あるのに我ながら呆れてしまう。

それでも、どうせ理解しきれない事を考えるのだから、慣れ親しんだ方法を選ぶ。
慣れない事をすれば悪い頭がもっと悪くなる。
世界には既に出遅れている。
これ以上遅れを取るのはまっぴらだ。

まずは企画

何事にもまずは企画を打ち立てる事から始めたいと思う。
僕は15歳の頃、職人であった父に現場に連れて行かれて職人デビューを果たしたが、ずっと専業で現場職人だった訳でも無い半端者だ。

そして職人やコンピュータと同じく、才能の無い音楽の道に進む。プレイヤーとして食べていく事が出来ず、僕はイベント運営の仕事を始めた。
そこで僕は企画屋と呼ばれる仕事をする事になった。
始めはアーティストから金を取る人間に嫌気がさしたからだった。共に稼ぐ訳でもなく、アーティストをイベントに出してノルマを課す事で収益化していたイベント運営者を見て、アーティストと共に稼ぐ場所を作り出そうと思って始めた。

イベント自体が面白ければ人はくる。
だからアーティストの組み合わせが大事だった。それに一組一組の魅力も大事だから、初見でグッとくるアーティストを探して組み合わせた。
目的があり、手段があった。

これが僕の企画としての初体験だった。
今でも、その経験は大事にしている。
目的と手段を決めて、懸命にやる。

僕が出来る事は昔も今も、それだけである。
なので、企画に関する紙の本を読んで、ちゃんとした企画を描こうと思った。
何冊か読んで「ちゃんとした企画」なんてものは実在しない事がわかったが、それなりに骨組みとして描くべき事は見えた。

今回の企画は
「共有する事」の形の多様性を実行する事
が目的であり
その手段は「ブロックチェーン+e commerce+実体験」である。

目的が妙に抽象的なのはわざとである。
僕はまだブロックチェーンで価値共有をした事が無い。
だから、それを実行するだけで共有の形の多様性は一つ達成した事になる。
それはNFTの発行を通してやってみようと思う。
写真、イラストとアイディア(テキスト)のNFT化を計画している。

しかしNFTはNFTだ。実物だって共有したい。
物作りは職人の本懐だから、モノを作って届ける事は
e commerceの出番だ。
しかし、設計図は3DデータをNFT化する。
沢山作って、空間を埋め尽くす。
その空間は実際の場所でも仮想空間でもいい。
フィジカルなスペースは僕のアトリエを解体して確保した。

モノを写真に、写真をNFTに、NFTをキャッシュに、キャッシュを空間に、空間を写真に、写真を動画に、動画をテキスト書き起こし、デザインを加えて、またNFTに。

共有フェーズの多様化は無限に試せる。
場所もある。そしてNFTの乗るブロックチェーンやe commerceプラットフォームは開かれた場所だ。

終わりに

僕は現場職人。
普段はヘルメットを被り、命綱をつけて、工事現場で金属を切ったり、貼ったり溶接したりする事を生業としている。

埃に塗れて、火花を浴びながら、モノを作っている。

僕には現在、もう一つの顔がある。
それは個人投資家。
元々は自分で「超小規模投資家」と名乗っていた。
工事現場の仕事量の濃淡から家族と自分自身を守ろうとした企てだった。

元々無能だった僕は、有能な人達にお金を預ける事なら出来た。
どんな企業の何処が有能なのか、学ばなければ分からないし、情報収集の効率も悪いし、海外企業については英語も読めなかったが、どうせ日本語でも難しいものは読めなかったし、僕が1からやるのは無理だったから調べられるだけ調べた。

暗号資産に関しても同じだった。
僕が稼ぐよりずっと良い成績だった。
当然と言えば当然で、僕自身に投資して事業をやれば自身の無能さを映し出し、有能な企業や仕組みに投資すれば、その優秀さを映し出すから。

もう一息でFIREの尻尾を掴める処まできたが、僕はFIREするつもりは無い。
モノや仕組みや考えや企画や知識体系を作るのが好きだから、無能なりにそれを続けていくつもりだ。

今回の取り組みも、その一環になる。
今回の予算はブロックチェーンがくれた。
だから、僕なりに関わらせてもらう。

無能でもいいから
僕なりにやってみる。

有能な仕組みや、企業や、人々が
この世界には共有リソースとして
実在しているから。

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