湖北の風景27 井之口の大杉
※湖北地方には「野神」を祀る場所がたくさんあります。
住民によって「ノガミさん」「野大神」などと呼ばれる、巨木・老木・または木の跡(塚・石碑)などです。
木はスギとケヤキが多いですが、特定の樹種のみを神格化するものではないようです。本質は巨木である必要もなく、木である必要もないようです(枯れるよね木は)。自然自体が信仰の中心なので、ご神木とは少しニュアンスが異なっています。
わたくし、野神信仰についてあまりよく分かっていません。
というより巨木があって、しめ縄がかかってても、それがあまりに日常の風景すぎて、それがどういうものか深く考えたこともなかったのです。都会の方が高層ビルについていちいち考えないようにね。
ただ、拝殿も伽藍もない。自然に祈るという、なにやら原始的な信仰や祭祀が、この湖北地方に残っているというのは興味深いところであります。(※)
※「野神」は奈良、大阪、徳島などにも見られるそうです。古代(弥生以降)に栄えた場所、物部氏・秦氏・渡来系の影響?などと気になります。
・・・みなさまの地域ではいかがでしょうか。
有名な野神(巨木)は湖北北部(妙な言い方)に集中しています。
一村に一野神といった具合に。野神ブームが来てたのでしょうか。
湖北東部の伊吹山の直下にはあまり見られないのは、山自体が神体だからという噂も。
ネットに載るような有名な野神はたくさんあるのですが、ひねくれた私のこと。
本日は、野神として祀られているのかすら謎である、姉川やや上流・米原市井之口の大杉を見に行ってきました。
・姉川やや上流ってこんな所
井之口の大杉
大きさが伝わりますでしょうか
巨木パワーを感じますか・・・?
以下筆者の勝手な考察。ご興味があれば。
・井之口の大杉
ここは屋久島?いいえ湖北です。
樹齢何年くらいでしょうか。300~500年位?
井之口集落の外れ。姉川の河川敷近くに唐突に大小3本のスギがのびやかな枝を広げています。
ただ、看板もなく、しめ縄が貼られているわけでもなく、現在、地域住民によって祭りが行われているわけでもないようです。
幼少期、地域の歴史ガイド的な人に姉川の堰(出雲井)に関連するみたいなことを言われた気がするので、水争いの激しかった湖北地域。水利に関係する施設があったのかもしれません。・・・ちなみに出雲井(いずもゆ)と言う単語をこの時初めて知った。
この場所について父に聞いてみたところ、「シンメさんのスギ」と謎ワードが返ってきました。
神馬さん?謎は深まるばかり。
・野神の神格
稲作の神(穀霊・水神・虫追い)
牛馬の神(河川敷などの草刈場)
塞の神(境界の神、道祖神)
山の神(縄文の神、狩猟神)
ファルス信仰(豊穣)
祖霊信仰(墳墓)
etc.
つまり、なんでもあり。
教義や文献などがないので、さまざまな信仰や要素が絡み合って今に伝わっています。
「野」とは何なのか。神仏に対して野生の神。野原の神。
諏訪の御柱のような大自然の神というよりは開拓された農地の神というニュアンスがあります。
野原にぽつんと大木があるから際立つ感じですね。
現在の湖北の野神祭りに関しては、ヘビやムカデに見立てた松明を作り燃やすなど、虫追いや収穫の予祝的な祭りが行われる地域が多いです。
井之口集落、実は野神と言われる場所は現在、別にあるのです。(祭礼はない)このスギが元・野神だったのか、今は知るよしもありません。
いにしえに想いを馳せる湖北の風景。
しめ縄があろうとなかろうと、巨木があろうとなかろうと、野神はいまも民の心の中にあるのです。
(・・・ちょっとイイ感じに言った?)
・参考 野神さん(古墳)