第1 商標の類否の判断基準
1 裁判実務
商標の類否について、最判昭和43年2月27日(民集22巻2号399頁【氷山印事件】)は、次のとおり判示した。
また、商標権侵害訴訟においても、最判平成9年3月11日(民集51巻3号1055号【小僧寿し事件】)は、氷山印事件を引用しながら、次のとおり判示した。
2 判断要素
(1)総論
商標の類否の判断においては、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるかどうかによって判断し、その判断にあたっては、商標の外観、観念、称呼等を取引の実情を考慮して総合的に考察することになる。
(2)判断主体
取引者又は需要者
(3)外観
商標の外観的形象
(4)観念
商標から生ずる意味内容(例:「天使のスィーツ」、「エンゼルスィーツ/Angel Sweets」のいずれからも、「天使の甘い菓子」、「天使のような甘い菓子」という観念が生じるとした裁判例(知財高判平成21年7月2日判時2055号130頁)。)
(5)称呼
商標の呼び方・発音
(6)取引の実情
商標登録の場面、すなわち、商標法4条1項11号に該当するか否かの場面において、取引の実情について、どのような事情を考慮することができるか。
最判昭和49年4月25日(昭和47年(行ツ)第33号【保土谷化学工業事件】)において、次のとおり判示した。
しかし、保土谷化学工業事件を引用する裁判例もあるものの、その後の裁判例においては、出願商標、引用商標の使用態様、周知著名性を考慮するものも存在する。
知財高判平成22年8月19日(平成22年(行ケ)10101号【サクラサク事件】)では、次のとおり判示し、それぞれの使用態様を考慮した。
3 要部観察
商標の類否の判断においては、原則として、商標の外観、観念、称呼等を総合して全体的に観察する。
もっとも、商標の構成要素のうち、取引者・需要者の注意を引く部分とそうでない部分があるときは、注意を引く部分を要部として抽出して観察する方法も行われる(要部観察)。
指定商品の普通名称に過ぎない部分(例:指定商品をゼリーとした場合に、商標の構成要素に「ゼリー」を含む場合)、商品の原材料や性質を表示にするに過ぎない部分については、当該部分以外が要部とされることが多い。
第2 本件の概要
本件は、商標登録出願の拒絶査定についての不服審判請求を不成立とした審決(以下「本件審決」とする。)の取消訴訟である。
①本願商標
商標:「朔北カレー」
指定商品:第29類「レトルトパウチされた調理済みカレー、カレーのもと、即席カレー、カレーを使用してなる肉製品、カレーを使用してなる加工水産物、カレーを使用してなる加工野菜及び加工果実、カレーを使用してなるなめ物」
②引用商標
商標:「サクホク」(標準文字)
指定商品:第29類「乳製品、肉製品、加工水産物、加工野菜及び加工果実、油揚げ、凍り豆腐、こんにゃく、豆乳、豆腐、納豆、加工卵、カレー・シチュー又はスープのもと、レトルトパウチされたカレー・シチュー・みそ汁・スープ、豆」及び第30類
特許庁は、次のとおり本件審決をした。
1 要部観察・称呼・観念
2 引用商標の称呼・観念
3 本願要部と引用商標の類否
4 指定商品の類否
5 結論
第3 原告の主張
1 「朔北」の語義について
2 分離観察について
3 本願商標の観念
4 引用商標について
5 本願商標と引用商標の類否
第4 裁判所の判断
1 商標の類否について
2 本願商標について
3 本願商標と引用商標の類否