有名なキャラクターとコラボしてグッズにするなど、タイアップ事業を計画している事業者の方からの相談が増えています。
そこで、本記事では、キャラクターに関する商品化権使用許諾契約書について、ライセンサー(権利者)側とライセンシー側の留意点を簡単に紹介します。
なお、下記の雛型は、基本的な条項について、留意点を説明しやすいように記載したものであり、契約書は、実際の取引に応じて作成する必要があります。そのため、雛型をそのまま流用することは避けていただくようお願いいたします。
雛型
ライセンサー側の注意点
第2条 利用許諾
ライセンスの内容を定める条項ですので、すべてに注意するべきですが、特に、「利用目的、許諾範囲、許諾地域、許諾期間、ライセンス料」については、注意するべきです。
「利用目的」については、ライセンサーの予想外の目的でキャラクターを使用されないよう、ミーティングなどで協議していた目的と一致しているかを確認し、異なる場合には、できる限り詳細に記載するなど修正する必要があります。
「許諾範囲」については、キャラクターライセンスの根幹をなすものです。本件キャラクターについて、予定している利用目的に照らして、不必要な行為が含まれていないか、確認する必要があります。例えば、公衆送信する行為が含まれている場合には、インターネット上でキャラクターを利用される可能性があります。なお、禁止事項に関する条文を追記し、消極的に許諾範囲を定めることも考えられます。
「許諾地域」については、日本国外の地域が含まれていないか、ミーティングなどで協議していた地域(例えば、福岡限定で許諾製品を発売すると協議していたにもかかわらず、許諾地域には九州と記載されていることが考えられます。)と一致しているかを確認し、異なる場合には修正する必要があります。また、他のライセンシーに同様のキャラクターをライセンスをしている場合には、当該ライセンシーの契約内容と齟齬がないか、確認する必要があるでしょう。
「許諾期間」についても同様に、ミーティングなどで相談していた範囲と一致しているか、確認する必要があります。
「ライセンス料」については、雛形のとおり固定の額で請求する場合と売上に応じたランニングロイヤルティで請求する場合があります。
売上に応じたランニングロイヤリティで請求する場合、許諾製品の製造数量や販売数量などの報告書の提出を要求し、報告書に記載の数量に応じてライセンス料を計算する必要があるでしょう。また、前払金を設定したり、最低保証金額を設定したりすることも検討する必要があります。
第5条 事前承認
ライセンサーとしては、自身のキャラクターがイメージと違う形で利用されることを防ぐ必要があります。そのため、雛型では、ライセンシーに対して、キャラクターの利用を行う場合、利用態様やデザインなどについて事前に承認を得る義務を規定しています。
もっとも、事前承認は、ライセンサーにとっては安心ですが、許諾を得る手続きに手間が掛かると、ライセンシーにとって抵抗感が生まれますので、両者にとって手間だと感じない設計を目指すことが望ましいでしょう。
第6条 著作権者の表示
ライセンサーとしては、著作権者表示を許諾製品などに付すことによって、ライセンサー自身の知名度や認知の向上につながりますので、忘れずに記載しましょう。
どのような表示にするか、どこに表示するか、については、キャラクターを利用する媒体や製品によって表示可能な範囲が異なりますので、注意が必要です。
第7条 知的財産権
キャラクターライセンスにおいては、ライセンサーにキャラクターの知的財産権が帰属すると考えられますが、念のため確認した方が良いでしょう。
第10条 再許諾の禁止
本条項は、ライセンシーに対して、ライセンスの対象となっている権利について、ライセンシーから第三者に対して許諾を与えること(再許諾)を禁止するものです。キャラクターライセンスにおいて、再許諾が予定されていない場合は、禁止しておくことが無難であると考えられます。
その他
ライセンサーとしては、キャラクターライセンスの対象が商品の販売であれば、ランニングロイヤルティ方式を採用している場合、いつまでも商品の販売が行われないとライセンス料が発生しない事態が生じ得ます。そのため、ライセンシーに対して、一定期間内にライセンス商品を販売をする義務を規定することも必要でしょう。
また、ライセンサーとしては、許諾製品について、ライセンシーにキャラクターと関係のない損害が生じた場合や、キャラクターと関係のない第三者の権利侵害などが生じた場合に、責任を負わない旨の免責規定を設けることが望ましいでしょう。
表明保証を規定する場合は、「キャラクターが第三者の知的財産権を侵害していないこと」について、ライセンサーの「知る限り」侵害していないことを保証するなどとして、責任を負う範囲を限定することが望ましいでしょう。
ライセンシー側の注意点
第2条 利用許諾
「利用目的」については、いざ販促などを行うにあたって目的外利用とならないように、キャラクターを利用する目的を網羅的に記載する必要があります。
「許諾範囲」についても、予定の利用目的や態様に照らして、必要な行為が含まれているか、確認する必要があります。例えば、インターネット上で販促を行う場合には、公衆送信する行為を記載する必要があるでしょう。
「許諾地域」については、事後的に地域を拡大する場合には、改めて覚書などを締結する手間が生じますので、利用する可能性のある地域については記載するように交渉することが望ましいと考えられます。
「許諾期間」については、予定期間が正確に記載されているか、延長する可能性がある場合には、延長できる文言が記載されているか、を確認する必要があるでしょう。
「ライセンス料」については、売上に応じたランニングロイヤルティとする場合にはより注意が必要です。ロイヤルティの金額は当然重要ですが、前払金や最低保証金の金額設定が予想されるロイヤルティよりも明らかに高額である場合があり得るため、留意する必要があります。
第5条 事前承認
事前承認は、利用の都度、ライセンサーの許諾を得る手続きが必要となりますので、事業進行に影響が生じる可能性のある条項です。ライセンシーとしては、事前承認の期間を定めることや、期間までに承認がなされない場合のみなし承認の規定を設けるなど、できる限り事業進行に影響が生じない内容とすることが望ましいでしょう。
また、事前承認に違反した場合の対応について、差止めを受けてしまうと、事業進行に与える影響が大きいため、段階的な措置とするように修正を求めることも考えられます。
第10条 再許諾の禁止
ライセンシーとしては、再許諾を予定しており、再許諾先も既に決定しているのであれば、改めて覚書などを締結することは手間になりますので、再許諾、再許諾先についての合意を予め取得しておくことが望ましいでしょう。
その他
ライセンシーとしては、対象キャラクターが第三者の知的財産権などを侵害していないことを保証してもらうために、ライセンサーが【本契約を締結する権限を有していること】、【対象キャラクターが第三者の著作権などの知的財産権を侵害していないこと】などについて、保証する条項を追記してもらうことが望ましいでしょう。
まとめ
以上の留意点は、キャラクターライセンス契約の留意点を簡単に説明したものであり、キャラクターライセンス契約には、その他にも注意すべき点が多数存在します。キャラクターライセンス契約を締結する場合は、「取引内容と契約内容が合致しているか」「この契約内容でビジネスの目的が達成できるか」「必要な条項は記載されているか」など検討する事項は多岐にわたります。
そのため、専門家の助言を受けながら契約を締結することが望ましいでしょう。