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京都の話3。赤い糸と無限回廊〜塩田千春『私の魂からあなたの魂へ』

京都精華大学出身の作家が展覧会を行なっていて、京都に行った初日に見て来ました。

*すでに会期は終了しています。

蘇我の方の静かな山間にこちらの大学はあります。

もはや完全に私は大学生ではないのですが、きゃっきゃした大学生達の合間を縫って会場に向かいます。

入り口からしてかっこいい大学でした。

この縦長の電光掲示板みたいのは数秒単位で画面が動いてすごいカッコ良かったです。なんかこれみた時点でかなりテンションが上がってました。

今回の展覧会ではこちらの大学の卒業生塩田千春、金沢寿美、ソー・ソウエンさんたち3人が展覧会を行なっているようです。

ソー・ソウエンさん。

なんかヘソから謎の音が出ていました…。なんでしょう、かなり至近距離でおっさんの体を見せられているような気がして中々辛かったです。

金沢寿美さん。

新聞紙をひたすら鉛筆で黒く塗りつぶし、宇宙に散りばめられた言葉のように一部の文字だけが残されています。

なんかエヴァンゲリオンみたいだな…と思いました。そして鉛筆の消費量半端ないなと。頭の中でSDGsという単語がよぎります。
あとついでに私も削除されないか心配になります。

で、最後は塩田千春さん。

赤い光に導かれて中に入って行くと…

回廊沿いに赤い糸と手紙が縦横無尽に埋め尽くしていました…

ちょっとどうした!?って迫力です。

自分の娘が最近部屋から全然出てこないなーと思ったら、夜な夜な部屋でこんなことしてたらメッチャビビりますね!!!そんなくらいの衝撃でした(笑)

糸の間には手書きやパソコンで打ち込んだと思われる、かなり個人的な内容も書かれた手紙が吊り下がっていました。

なんですかね、思春期特有のJポップの歌詞みたいな「センチメンタリズム」を売りにしたノリでは決して済まされない、マジな感じがありました。というか作者はもう思春期の年齢ではとっくにないはずなんですけど…永遠の16歳?

こういう内省的センチメンタリズム大爆発作品は美大などではよく見かけるのですが、一個や二個こういった手紙みたいなセンチアイテムが出てくるならまだしも、これだけの数あると圧がすごいです。

この物量がそのまま作品としての強度になっていて、その狂気じみた糸の嵐がただの押し付けがましい怨念ではなくきちんと『美しい作品』に昇華されているところが素晴らしかったです。
草間彌生さんにも通ずる、良いとか悪いとかは抜きにしたすごいっていう作品でした。

ただ、ちょっとこんな感じの人が自分のお母さんだったらキレたりされると怖いというか…羊たちの沈黙のレクター博士の吊し上げ殺戮シーンみたいに赤い糸で吊り上げられそうで怖いです…(笑)

最近のインスタレーションの傾向として角を曲がるとドドーンと作品が現れるような演出方法がよくあります。漫画の見開きみたいな感じですね。

ちらっと赤い糸が覗いて見えて、中に入ったらすごいことになってた!みたいな感じです。

アトラクション施設というか、ディズニーランド的というか、そういう側面により若い人が多く観に来ている気がします。そしてこれらは特に写真映えするというところが大きい気がします。

話は変わりますが、現在千葉の川村記念美術館ではミニマルアートの巨匠カール・アンドレが国内初の個展を開いています。

かなり有名ですごい人ですが、これは写真映えするのか?といわれると、ちょっと迫力面では塩田さんみたいなインパクトタイプではないでしょう。でも、ある種の侘び寂び的な感じが出てます。

アーティストにもいろんなタイプがいて、上記のカール・アンドレなどはミニマリズムの冷淡な感じや感情を抑えた静謐さが作品の質に繋がっています。

対して塩田さんとかゴッホなんかは激情的です。

作者の内側にほと走る熱量がそのままダイレクトに作品の物量や絵の具の厚みとして画面に出ています。

そしてゴッホなどは特にそうですが、吹っ切れたアーティストの周りにいる人は中々大変だと思います。

かつて画家のカミーユ・ピサロがゴッホを評してこんなことを言っていました。

この人間は気が狂っているか、我々を置き去りにするかのどちらかだ。

TASCHEN・ニュー・ベーシック・アート・シリーズ『ゴッホ』 より

つまり一緒にはいてくれないっていうことですね。気づいたら勝手に耳切ったりしてるし(笑)

耳を切って一仕事終えたので、ちょっと一服って…。

塩田千春さんもかつてはドイツに留学しており(現在もドイツを拠点にしています)、その当時の学生時代の映像を観たことがあるのですが、その中では毒性の非常に強い絵具を頭から大量にかぶったり、全裸で山の中を転げ落ちたりするような非常にハードなパフォーマンスを当時からしていました。

ただ正直初めて見た時は、彼女は『たけし軍団の一人』ですと言われてもわからなかったかもしれません。

そういう過程を経て今のような非常に完成度の高い作品に行き着いたようです。決して最初から糸を使った作品を作っていたわけではなくて、そういう試行錯誤があって今があるんですね。

そしてさらに話は変わりますが今をときめく世界的大企業Amazonも、今に至るまでの過程においてかつてはこんなとんでもサービスを行ったりしていました。

 アマゾンの撤退事業リスト一覧

開始 (年) 終了 (年) 事業名 

1999〜2000 アマゾン・オークションズ 
1999〜2007 Zショップス  
2004〜2008 検索エンジン 「A9」 
2006〜2013 アスクビル (Q&Aサイト)   
2006〜2015 アンボックス (テレビ番組や映画の購入・レンタル)
2007〜2012 エンドレス・ドットコム (靴とハンドバッグの専門サイト)
2007〜2014 アマゾン・ウェブペイ (P2P送金) 
2009〜2012 ペイフレーズ(合い言葉による決済)
2010〜2016 ウェブストア(オンラインストア立ち上げ支援)
2016〜2011 マイハビット(会員制タイムセール) 
2011〜2015 アマゾン・ローカル 
2011〜2015 テストドライブ(アプリの購入前試用)
2012〜2015 ミュージック・インポーター(音源アップロードプログラム)
2014〜2015 ファイアフォン
2014〜2015 アマゾン・エレメンツ (ブライベートブランドのおむつ)
2014〜2015 アマゾン・ローカルレジスター(モバイル決済)  
2014〜2015 アマゾン・ウォレット 
2015〜2015 アマゾン・デスティネーションズ (宿泊予約)

特に個人的に気なるのが2009年開始の『ペイフレーズ』

合言葉による決済サービスってなんだ!!???


山、川、決済完了!って感じ…?

!!!斬新すぎでしょアマゾン(笑)

そしてさらに2015年に開始で2015年に終了している宿泊予約サービス『アマゾン・デスティネーションズ』とか、

もはや売れない地下アイドルのグループ名みたいだな!と(笑)


もお発想がアートの域に達しているとさえ思えてくるのですが、これもとにかく色々試した末に今があるということの例だと思います。

今やGAFAMの一つであり世界に名だたるAmazonもかつては相当とんがったことを試みていたのです。(ほとんどの人が利用したことない&むしろ知らないサービスだったと思いますが…)

そしてあれから十数年、塩田千春もアマゾンも今や押しも押されぬ世界的大企業と大作家になりました。

そしてこの塩田千春の赤い糸とアマゾンの全世界網羅インターネット網によって、

ついに、

世界とあなたは繋がってしまった!!!!!!

すべてはベゾスの策略だった!!!!


御名答。ニッコリ。

なんてことは全くないんですけど(笑)長くなったので次あたりで京都の話は終ります。

縦の糸はあなた〜横の糸は私〜、なんて呑気に歌ってられなくなるくらいがんじがらめな展覧会でしたが、非常に感化されるものの多い素敵な展覧会でした。

あと余談ですが私の好きな中島みゆきも今度展覧会をするそうです。

そして塩田千春さんも新たに9月に大阪で個展があるようです。


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