母親のこと3
昨日、母の入院先の病院から電話があった。
「集音器の充電器が壊れているみたいなので、代わりを持ってきてください。できるだけ早く」
依頼を伝える看護師さんの声は、老健施設の看護師さんからかかってくる電話と同じ種類のものだった。
顔は見えないけれど、
「こんなに世話がかかるとは思いませんでした」
「病院に押し付けるだけじゃなくて、家族も一緒に苦労しろよ」
と言われているような感じがする。
入院の時からしてそうだった。
「私物の持ち込みは禁止ですから、すべてお持ち帰りください」
と、すました顔で看護師さんに告げられた。
入院中の注意事項説明の間に、母親は閉鎖病棟の向こう側に送られていった。
自分たちは慣れているから、別になんということはありませんよ
という風に、母親を車いすで連れて行った。
内心、「大丈夫かねえ?」
と思っていたら、思っていた通りのことが起こった。
今までも、行く先々で同じことを繰り返してきた。
入院前の説明の間に、車いすを押していった看護師さんが困惑顔で戻ってきた。
「ノートとか、メモ帳みたいなものはお持ちですか?」
私物持ち込み禁止といったのはそちらではなかったか?
こちらからは見えないが、閉鎖病棟の向こう側で騒がれて、手に負えなくなったらしい。
「自分の思った通りにならないと、手が付けられない」ということで、
老健施設では手に負えなくなって認知症専門の病院に来たのだ。
日々の出来事をメモしているノート類を紙袋に入れて看護師さんに渡した。
何度も繰り返した行為だ。
現場スタッフを揶揄するつもりではない。
こんなに大変な仕事をしている方々を、心から尊敬している。
要介護度が少しずつ上がって現在は要介護3。
日常生活のほぼ全般に介助を必要とする状態だ。
家族での介護は不可能だと思います、との診断を受け
老健施設にお願いしている。
自宅で介護されている方たちの苦労は、きっと私の想像をはるかに超える。