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【黒人女性への暴力】カラーパープル【ネタバレあり映画感想】

ウーピー・ゴールドバーグ主演、同名小説が原作の1985年スティーブン・スピルバーグ監督作品「カラーパープル」を鑑賞しました。
2023年製のリメイク作品もあるようですが、旧作品のほうです。


あらすじ(最初から最後まで)

作品の時代背景

20世紀初頭、アメリカ南部。
女といえば白人女性、黒人といえば黒人男性というように黒人女性は存在しないような扱いをされていました。

家庭内暴力は当たり前、妻は夫の奴隷同然の扱いを受けていた、そんな時代のお話です。

少女時代

主人公セリーは10代で家庭内暴力の末、父親の子を二人出産しているという少女です。
口数も少なく、男性の暴力にはされるがまま耐えることしかできず、冒頭の段階でかなり胸糞な展開がつづきます。

セリーの辛い日々の唯一の救いは妹・ネティ。とても仲良しの姉妹で「ずっと一緒にいよう」という誓いを立てていました。

そんな中、セリーは通称ミスターというすでに3~4人くらい子供がいる男性のもとへ10代で強制的に嫁がされます。(子供の面倒を見る要員)

セリーは離れて暮らすことになったネティが家庭内(性)暴力を受けていないか、とにかく心配で仕方ない日々を送ります。

しばらくすると、やはり父は妹に手を出そうとしていたようで、ネティはセリーの嫁ぎ先に逃げてきました。

また二人で一緒にいられる楽しい日々が始まったのもつかの間、今度はミスターがネティに手を出そうとして、当然ネティは拒否。
この時代、男を拒む女はとんでもない目にあいます。

ネティは家から文字通り追い出され「必ず手紙を書くからね」と言い残し、セリーのもとを去ってしまいました。

さまざまな出会い

その後、郵便物はミスターに管理されたためネティから手紙が来ているのかいないのかわからないまま数年の月日が流れます。

そんな中、義息子の嫁としてソフィアと出会います。
ソフィアはセリーと違い、男性にはっきりと意見し、家庭内暴力にも全力でやり返すような強い女性で、セリーはいい意味でカルチャーショックを受けます。
(この映画ではじめてちょっと溜飲が下がるシーン)

また、ミスターの愛人で酒場の歌手シャグが病気を患った状態で家にやってきます。

最初はシャグから反発されるセリーでしたが、ミスターの代わりに身を入れて看病していると、そのうちにお互いの境遇に共感しあい意気投合。

美しく男性に愛されキラキラしているように見えても、つらい過去を背負っているシャグ。二人は親友になります。

しかし数年後、シャグは都会で歌手としての成功を求めセリーの前から去ってしまいます。
「連れて行ってほしい」と思いながらも、口に出す勇気はありませんでした。

その後、ソフィアが白人に暴力を振るってしまったことをきっかけに逮捕されます。
約8年後、釈放されますが長年の獄中生活で以前の強気なソフィアはいなくなっていました。

そんな中、セリーとミスターの家にシャグが数年ぶりにやってくることになります。
シャグは都会で成功してお金持ちの夫を連れ、幸せになっていました。
シャグはセリーに「こんな家をでて一緒に都会に出よう」といってくれるのでした。

転機

そんな中、シャグはネティの手紙を発見しセリーに読ませます。

そこには、妹ネティは健在で、ある夫妻のもとで世話になっていること、現在アフリカにいること、そしてなんと、セリーが10代のころ産んだ子供たちが夫妻のもとで大切に育てられていることが書かれていました。

セリーは妹が生きていることはもちろん、子供たちと幸せに暮らしていることを知り安心した気持ちになると同時に勇気が湧いてきます。

ミスターやその父親に今までの気持ちをぶつけ、ついにシャグとともに家を出ていくことを決心します。

自立と再会

数年後、都会に出て小奇麗になったセリーは父親の葬儀に参列します。
相も変わらず女性を奴隷として扱い、最後は腹上死したことを父の現嫁に聞きます。(この父らしい最期である)

そしてなんと、この父親が実は血のつながりのない継父で、実家はセリーの母親の名義(?)だったと発覚し、建物の相続権がまさかのセリーにやってきました。
自分の家を持てたことで人生で初めて声を出して喜ぶセリー。
セリーはそこで小さなお店を経営し、シャグやソフィアとの良好な関係も継続しています。

そんな中、アフリカから帰ってきたネティと数十年ぶりの再会、そしてそこには息子・アダム、娘・オリビアの姿があります。
生き別れていた妹、子供たちとの再会で感激の涙を流し物語は終わり。
再会した妹はあざやかなパープルの服を着ていたのでした。

感想など

鑑賞に至ったきっかけ

あらすじだけで1700文字も書いてしまってビックリ。
観てない人、途中で観るのをやめた人にも内容が伝わればいいなと思います。
私も開始数分であきらめかけましたので・・・。
しかし、一度鑑賞の記憶のみで書き起こしたので細かい部分が違ってたらすみません、大筋は合っているはずです。

この映画を観たきっかけは「天使にラブソングを」でウーピー・ゴールドバーグを好きになり、ほかの作品も観てみたいと思ったからです。

それにしても最初から目を覆いたくなるような展開ばかりで、脳が疲弊しました。

いわくつきの作品

もともとはアリス・ウォーカーという作家の同名小説で、社会問題のアカデミー賞(っていう個人的なイメージの)、ピューリツァー賞を受賞した作品のようです。
実際の小説では、学のないセリーが一生懸命書いたような文体だそうで、そのへんが日本語訳版では表現しきれていないようです。
「アルジャーノンに花束を」みたいなイメージでしょうかね。

発表当初は黒人社会(というか男性)から「黒人文化の内部告発だ」との反発もあったそうですので、当時はやはり女性蔑視、男尊女卑、人権侵害が横行していたみたいです。
(「内部告発だ」って、もう女性蔑視認めてもうてるやん…って気がするのは私だけ?)

少女時代は父親、大人になってからは夫から奴隷同然の扱いを受けてきた主人公セリー。
自分の尊厳のために強いものに立ち向かうソフィアや、同じような出自でありながら夢に向かって頑張るシャグの存在は、男性に隷属するしか生き方を知らなかったセリーに勇気や希望を与えました。

極めつけは、死んだor死んでいなくてもおそらく自分のように不幸な暮らしをしているであろうと思っていた妹が、海を渡って広い世界を見ていると知ったとき、ものすごく勇気と希望が湧いたんだと思います。

この映画を観ると、黒人男性がほんとう憎らしく思えてくる笑
「『それでも夜は明ける』現象」。

(「それでも夜は明ける」という映画、知っていますか?
奴隷階級にいない一般黒人男性が奴隷にされてしまうというストーリーです(たしか実話)
この映画を観ると白人が嫌いになることで有名。)

黒人男性が奴隷として扱われた歴史があるのも事実、しかしその裏側にはたくさんの黒人男性→黒人女性への暴力があったことも事実。

人間はとことん、誰かを自分より下に追いやらなければ生きていけないのかもしれません。

ウーピー・ゴールドバーグが好き

ウーピー・ゴールドバーグといえば「天使にラブソングを」や「ゴースト」での元気でサバサバしたカッコいい女性のイメージでしたが、今回は控えめで家庭的な女性を演じました。

Wikipediaによると無名時代のウーピーさんがサンフランシスコで舞台に立っていたところを、カラーパープル作者本人が主人公役に大抜擢したそうです。

個人的にはコメディorミュージカルが似合う女優さんだと思うので、今回のセリーのような役はウーピーさんのイメージとは合わないと思いました。

豪華な製作陣

ちなみにソフィア役はアメリカ版「徹子の部屋」といわれる「オプラ・ウィンフリーズショー」の司会、オプラ・ウィンフリー。アメリカでは知らない人がいない、黒人女性です。

音楽はマイケル・ジャクソンの人気アルバム「スリラー」のプロデューサーとして有名なクインシー・ジョーンズ。
この映画はマイケルをプロデュースしている時期と被っているからか?終盤のシャグの歌はなんかマイケル味がありましたよね。

作者のウォーカー氏は白人であるスピルバーグ監督が映画の指揮をとることに抵抗があったそうですが、音楽担当が黒人であるクインシー・ジョーンズということで映画化に賛成したそうです。

現代社会のありがたさ

この映画を観ると夫の奴隷とならなくていい現代の社会構造、女性として大切にされることのありがたみ、仕事があって自立できる喜びをひしひしと感じました。

たった100年ちょっと前なだけなのに、当時は女性の地位ってとんでもなく低かったんだと思い知らされますね。

観ている側からしても、自分の尊厳のために意思を曲げないソフィアや、セリーの精神的な支えとなるシャグの存在は心強かったです。

胸糞シーン9割だけど見てほしい

胸糞シーンが9割を占める映画ですが、だからこそキラリと光る希望にグッとくる。

父親に関しては最後まで胸糞のかたまりでしたが、セリーが去った後のミスターは罰が当たったかのような暮らしぶり。

しかし最終的に改心したのか、ネティがアフリカから戻ってこられるように手配してくれました。
父親やミスターも、もしかしたら脈々と受け継がれる女性蔑視文化に洗脳されていただけなのかもしれません。

ハードな作品なので、もう一度観たいかといわれると「・・・」ですが個人的には勇気を出して最後まで観てよかったです。

女性にとっては観るのがとくにつらいだろうけど、目を逸らさないでほしい歴史だなとも思う。

ちなみにPrimeでは配信なくU-NEXTで鑑賞しました。ご参考まで。

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