Food Safety Culture(食品安全文化) / Food Safety-Ⅱ を考える ③食品安全は文化となるの?
こんにちは! あたたけ です。
引き続き、『食品と科学』2021年11月号および12月号に寄稿した内容です。
前回は『②文化とは他者から与えられるもの?』と題し、『文化』とはどのようなものか、あたたけの考えをまとめました。
今回分は、『食品安全』と『文化』についてです。
ということで、第3幕、はじまりはじまり~
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3)食品安全は文化となるの?
先述したように「食品安全文化という人の行動に焦点を当てた取り組み」を筆者は歓迎していますが、一方、「食品安全だけの文化を作ることは難しい」とも考えています。
それはなぜか?
筆者の考えは「食品を扱う人にとって、安全は魅力がない」というものです。
品質管理・食品安全担当者には目を背けたくなる意見かもしれませんが、「美味しいものを作る・食べる」のは楽しく意欲に繋がりやすい一方、「安全なものを作る・食べる」ということは特に楽しいことではなく意欲に繋がらないのは事実ではないでしょうか。
さて、食品を「組織が扱う製品」として見たとき、それは一定の品質を満たす必要があります。品質という言葉はJIS Q 9000:2015 では次のように定義されています。
品質(quality)
対象 に本来備わっている 特性 の集まりが、要求事項 を満たす程度
この「特性」というものは大きく3つに分類できると筆者は考えています。
①販売する食品として最低限満たすべき特性
(安全性、法令等の公的基準への適合 等)
②製品として一定の基準を満たすべき特性
(成分規格、見た目、入数・重量、価格 等)
③価値を産み出す特性(上記②の内、他の商品と差別化する特性)
(美味しさ、何らかの機能、価格の安さ 等)
この特性の分類において、組織が力を入れ、評価が高くなるのは、やはり③の「価値」です。一方、①の「最低限満たすべきもの」は大切だとはわかっていてもあまり魅力があるものではないため、ついつい後回しにされたり、品質管理・食品安全担当者に丸投げになったりしがちです。魅力がないものを文化として定着させるのは中々に難しいことです。
では、どうするのか?
手っ取り早い手段は「魅力があるものの背中にのっかる」ことです。
まず、「自分たちで作った製品でお客さまに喜んでもらう、製品の品質全体を向上させる」という文化を作り、そのための1要素として「安全」も文化にしていくというのが、回り道のように見えて、実は最も確実で早い道なのではないかと筆者は考えています。
なお、「製品の品質向上を文化にする」ための前提には、「組織(会社)に愛着を持ち、大切にする」という文化があります。
数年前になりますが、食品防御が大きな話題となっていたころ、ある食品企業の経営者の方から筆者は以下のことを学びました。
“人を大切にし、会社への愛着を持ってもらう。
その結果として、会社を大切にする文化を育み、
当たり前のことを当たり前にする善性の高い会社にしていく。
それが食品防御だけでなく、様々な問題解決に繋がる。“
この考え方は、正に食品安全文化(あるいはそれ以上のもの)ではないでしょうか。
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ではでは。
今回はこの辺りで!