公民科教員の本棚(経済編)
公民科教員の悩みの種は、とにかくカバーすべき分野が多いことではないかと思います。同じ教員が倫理も政治経済も教えないといけないのは、正直かなり大変……
ということで、私が読んだ or 今後読もうと思っている「授業準備に役立てられる本」を分野別にご紹介します。今回は経済編です。一人でも多くの教員の方や教員志望の方のご参考になれば幸いです。
※随時追記します。
【最初の一冊】『新版 アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書』
「アメリカの高校生が読んでいる」シリーズは多数出版されていますが、この「経済の教科書」が最も幅広いトピックを扱っています。「希少性」「機会費用」「インセンティブ」「複利」など、中高の経済の学習では意外と見落とされがちな基本概念を丁寧に説明しており、おすすめの一冊です。
【大学へのステップアップ】『現代経済学の直観的方法』
経済学を学ぼうと思って「経済学入門」というタイトルの本を手に取るも挫折、という経験をされた方は多いのではないでしょうか。この本は、高校の政治経済の教科書をもう一歩深掘りして理解したい人にうってつけです。著者独自の整理で、金利や貿易からブロックチェーンまで幅広いテーマを解説しています。経済史的な視点からの分析もあり、経済の見方が広がること間違いなしです。
【大学レベルの一冊】『ミクロ経済学の力』
大学でのミクロ経済学の定番になりつつある教科書です。数式をガッツリ使っているので、経済学部以外の人が自学で使うには大変かもしれませんが(私もきちんと理解できている自信はないです…)、コメ関税の部分均衡分析やゲーム理論の解説など部分的に読むだけでも「なるほど」と感じることができます。本格的な理解を目指したい人向け。
【穴になりがちな分野】『金融のエッセンス』
経済分野の理論編で非常に扱いづらいのがマクロ経済学の分野、特に金融と財政です。私もなかなか良い本に巡り合えていないのですが、金融に関してはこの本を挙げておきます。若干くどいくらい丁寧に説明がなされていて、高校の政経の授業にもすぐに活かせます。金融という仕組みのメリットを具体例を交えながら解説してくれているのも良い点です。
【大学レベルの一冊】『入門経済思想史 - 世俗の思想家たち』
経済思想史も重要な学習事項の一つですが、この本は各思想家の思想のポイントを伝記のように紹介してくれています。ページ数が多く読破するのが少々大変ですが、経済思想の面白さを実感できること間違いなしです。なお、同僚の先生からは2019年に出た『経済学史』もおすすめされました。
【最近の新書から】『資本主義に出口はあるか』
少し変わった角度から、資本主義の歴史を紐解いた本です。「ロック/ルソー」の対立軸から読み解く経済史の全体像は、(所々強引に感じる部分もありますが)非常にダイナミックです。新自由主義の先にどのような社会を構想するかは、このコロナ禍において重要なテーマといえるでしょう。
【見方を学ぶ】『効率と公平を問う』
「効率と公正」という対立軸は、現代社会を捉える概念的な枠組みの基礎として公民の教科書でも取り上げられますが、効率性と公平性のバランスについて考えさせるのは意外と難しいものです。この本は、効率性と公平性のバランスについて考えるための視点を提供してくれています。第4章で教育の事例が紹介されているのも面白い点です。
【最近の新書から】『行動経済学の使い方』
岩波新書から経済学の『入門の入門』シリーズが何冊か出版されていますが、この本もそれに類するものです。現実の人間は様々な場面で非合理的な行動をしてしまいますが、そうした人間の非合理性をどのように理解し、制度設計に活かせば良いのでしょうか。豊富な具体例を交えながら、人間の非合理性について考えさせてくれる一冊です。ここから『自滅する選択』に進むと、さらに理解が深まるでしょう。
【見方を学ぶ】『データ分析の力 - 因果関係に迫る思考法』
「エビデンスに基づいた政策を」という主張を耳にすることは多いですが、そもそも「効果があるか否か」はどうすれば検証できるのでしょうか? この本は、「そもそも因果関係とは何か」から出発し、因果関係を推定するための統計的手法について具体例を交えながら説明してくれています。『原因と結果の経済学』も、本書と同じく因果関係について平易に解説している一冊です。
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