あなたはプロット書きますか?
プロットを作るのって難しくないですか?
私はいま現在長編小説を書こうとしているんですが、プロットを作ることを躊躇してしまっています。
そもそも思い返せば、完全にプロット先行で作り切ってから作品を作り切れたことなんてそんなに何度もないかもしれません。
そもそもプロットを作ることって、物語を最後まで見通すことじゃないですか。
それって、めちゃくちゃ頭の中のメモリ領域が大きい人なんじゃないかって思ってしまいます。
一作小説読むのに3時間かかるとして、その3時間の内容の、少なくとも輪郭が頭の中に構築されてるんでしょ? それってすごくないですか?
自分は最初にプロットを作り切ってから書くこともありますが、それについて弊害がある気がしてきました。
プロットを最初に作る弊害
①流れるような物語になる(悪い意味で)
頭の中のメモリ領域が小さい私が最初にこの作業を行うと、そもそも物語が小さくなる気がします。
プロット作りはストーリー作りなので、ストーリーの辻褄合わせに結構な労力を取られます。
そこが気になると、面白い場面を用意するよりも先に、悪い意味で流れるようなストーリーになってしまう感じがします。
そうすると、生き生きとしたそこに世界を感じられる物語にはなりづらいのではないでしょうか。
②手数が減る
ストーリーができたら今度はそれに沿って書くのみです。
もちろん脱線することもありますが、最初に作った大きな流れからあまりに外れたものは書きづらくなります。だって、また辻褄合わせするの嫌ですもん。
そして、この最初に大きな流れを作っている、ってとこが大きな問題です。
なぜなら、この最初の時間が短いからです。
長編小説を書くのに3ヶ月かかるとしましょう。
最初にプロットを作り切る場合、せいぜいそこに時間をかけられるのは2週間といったところでしょうか。
つまりこの2週間以内にすべてのアイディアを思い付かねばなりません。
でも、本当は3ヶ月時間があるのであれば、3ヶ月(に近い時間)アイディアを思いつき続け、それを物語に足し続けた方がずっと素敵な場面が生まれそうな気がします。
③初手挫折
流れるようなストーリーになって、対して面白い場面ができなかったとしても完成したらそれは素晴らしいでしょう。長編を書くのって大変ですからね。
でも、そもそも頭の中でプロットをこねくり回したって、頭の中のメモリ容量が小さい自分はそもそも作れないことも多いんですよ。
面白いアイディア見つけた! でも物語膨らまないな。ストーリーにならないか……。
みたいな。
それって私だけですか? みなさんどうでしょうか。
どんな戦略にすべきか
私は今回のnoteで、10年前にライトノベルの公募を受賞した方法で、再度受賞できるか試そうと思っています。
それで考えたところ、そもそも当時受賞した作品はプロットガチガチに作ってから書いているはずがありませんでした。
短編的な話をいくつか書き、後から長編になんとかまとめたのです。
思いついたところから書いた方が、面白いところに直接さわれるし、それを繋げたら面白い話になりそうな気がします。
まず最初にすべきことは、点々バラバラに面白いシーンを書くことかもしれません。
ところで、『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』なる本によれば、売れる話というのは主人公の心情が上下するものだそうです。
だったら、面白いところを主人公の感情が上下するように並べればいいですよね(多分
ということで、最初にプロットを作るのはマストではなく、後からプロット考えればいいじゃんという自戒の話でした。
冒頭書いてみた
以前のノートで、GA文庫大賞挑戦用のアイディアを決めました。
【仮題】
7人の嘘つきな正ヒロイン
【あらすじ】
主人公は日本最大の財閥の跡取り。ある日彼は、父親から同じ学園に通う7人の少女のリストを渡され、この中から結婚相手を選ぶよう命令される。気乗りしない主人公だったが、秘書(同じ学園に通うクラスメイトの少女)の説得もあり一応選ぼうと試みる。
しかし、最初に目をかけた一人目の候補者が、実は主人公の財閥の機密情報を盗もうとしているスパイだったことが発覚した。果たしてリストの少女たちに主人公に対する愛情はあるのか。至高の騙し合いが、ここに開幕!
ということで、上記の話を点々バラバラに書いていくことにしました。主要な登場人物だけなんとなく決めて、書いていきます。
プロットがないので、最終的にどこまで使えるかは不明ですが、今回は無駄になるのを怖がらず、ガンガン行こうと思います。
実際に書いてみた冒頭
ドレス姿に着飾った少女たちが目の前に並んでいた。
それはそれは煌びやかで、もしここが宵闇だったとしても月明かりの代わりになるだろう。
一様に着飾り、ただしそれぞれが思い思いの表情を浮かべている。とっておきの華やかな笑顔、穏やかな表情、興味なさそうにそっぽをむく顔、少し悲しそうな目元。
きっとそれぞれの思いを抱えてそこにいる。誰もが自分の思いに正直に生きた結果としてそこに立てるわけではない。
当然、僕もそうだ。僕だって少女たちを目の前に並べて、こんな風に見せ物小屋の客みたいなことはしたくはない。
だからこれは天災なのだ。あまりにも美しく、退廃しており、蠱惑的な天災。
少女のうちの一人が僕の目の前に歩み出た。
「王沢怜(おうさわれい)くんですね。初めまして。会えて嬉しいです。私は市条一華(いちじょういっか)です。一華(いっか)って、下の名前で読んでくれると嬉しいな」
「一華……さん」
「ふふふ、さんなんていらないよ」
「じゃあ、一華」
「ありがと、怜」
ふふっ、と上品に笑う一華の瞳に、思わず僕は吸い込まれそうになる。
真っ赤なドレスに身を包んだ彼女はさながら炎の華で、胸元までざっくりと見せた白い肌が網膜に焼きつかんとする。僕の視線は柔らかそうなそれに引きつけられそうになるが、なんとかそれを拒否して焦点を顔(かんばせ)に合わせた。
お人形のようとはこのことだ。
まんまるでクリっとした目に、小ぶりな口と鼻。北欧の血でも混じっているのか、髪は色素が薄く金色に輝いて見える。
「私にはできることなんてあんまりないけど、でもね。怜くんとこれから仲良くなりたいって思ってるんだ。だから、これはその印」
一華は僕にもう一歩近づき、僕の腕にしがみつくようにした。彼女の胸の柔らかさが服越しに伝わり、僕がそれをなんのことか理解するよりも早く、頬に温かくも柔らかい感触があった。それは微かに震えていた。
何分にも感じる一瞬を終え、彼女は再び僕の目の前に戻る。そして、太陽のような笑顔で言った。
「これからよろしくね。怜くん」
「あ、ああ」
「……ふふふ、びっくりしちゃったかな?」
「いや、何というか……」
頭をぽりぽりと掻いて、一息つく。僕は緊張して彼女の目を見ることはままならなかったので、鼻のあたりを見ながら言った。
「ずいぶん、頭が高いな、と思って……」
「……え? ズガタカ……何?」
何を言われたかわからなかったような表情で、彼女は首を傾げた。
僕は仕方ないので改めて説明する。
「僕は王沢怜だよ? 王沢財閥の総帥、王沢豪一郎の息子なんだ。わかってる? 政財界の魔王、王沢豪一郎のご子息様。生まれながらにしてサラブレッドなんだ。だからこそ、君たちはこうやって群がっているわけなので、本来なら触れるのも恐れ多い存在のはずの僕に、あろうことかくくく口付けをするだなんて、それって対等だと思ってるってことだよね? それはあまりにさ、あまりに不遜だと思わない?」
「……そんな、わ、わたし……」
「だいたい、まずなんというかさ、距離の詰め方っていうの、もっと勉強した方がいいよ。僕にだって心の準備ってものがーー」
「坊ちゃん、それくらいになさってください」
僕の言葉はお付きの少女によって止められた。
「え、いや、ああ、なんで?」
男装のようなタキシードを着た彼女は名前を片側月菜(かたがわつきな)という同い年で同じクラスに通う、僕の幼馴染であり付き人だ。
月菜に止められ、一華はおずおずと列の中に戻って行った。
なんだか、変な空気になってしまった。
月菜は切り替えるように言った。
「次の方、前に出てください」
言われ、次の少女が前に出る華奢で小さな少女が、視線を落としながら言った。
「ええと、二宮双葉(にのみやふたば)です……。ええと、ええと」
一華とはあまりにも違う青くシンプルなドレスの彼女はしかし、そこから先の言葉が出てこなかった。
もしかすると、僕と一華のやりとりに緊張してしまったのかもしれない。彼女はあわあわと上手く喋れないまま、じっと足元ばかりを見ていた。その姿はいじらしくはあったが、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
彼女の後も、魅力的な少女が次々に僕に自己紹介をしてきたが、僕はなんだか気がそぞろになってしまった。それもまた、申し訳なさでいっぱいだ。
彼女たちとはおそらく今後もたくさん顔を合わせることになるだろう。なぜなら彼女たちは僕と同じ学園に通っているのだから。
高校二年の三月で、花粉症で目が痒くなる季節のこと。
僕は四月から新しい学園に転入することになっていた。転校は急に決まった、というより、それは天から降ってきた。
「豪一郎様より、転校せよとの指示を承りました。坊ちゃんには来月より、私立大都学園に編入していただきます」
「大都学園? 何でまた」
「そのお心は窺い知ることはできませんが、転校するにあたってもう一つ指示がございます。このリストのお嬢様の中から結婚相手を選び、互いが十八を超えたタイミングで結婚せよとのことです」
言葉の意味はわかっても、内容が頭を上滑りした。
月菜が渡してきたタブレットを受け取ると、そこには確かに少女たちの顔写真とプロフィールのようなものが映し出されていた。
大都学園は日本屈指の進学校として知られ、また非常に学費が高い。つまり、奨学金を受け取る苦学生を除けばほとんどが大金持ちで、つまりこれはお嬢様のリストである。
「なんの冗談だろうね。そんな人たちが僕と婚約なんてしたくないだろうに」
それなのに、選び、結婚せよなどという指示は、とても現実のものとは思えない。
父は王沢豪一郎。彼は確かに、大沢財閥の巨万の富を手中に納め、日本の政財界を操るフィクサーではある。しかし母は妾、というか浮気相手だし、なんなら僕は豪一郎に会ったこともない。
それなのに、僕が十歳のとき同じクラスに転校してきた片側月菜という少女は、「豪一郎様の命により、今日より派遣されました。お坊っちゃまのお目付役になります」と、十歳とは思えない礼儀正しさで僕の元にやってきた。それから、度々彼女の口を介して父の命令が僕に下されるのだ。
最初の命令はこうだった。
『王沢の誇りを持って生きなさい』
なんだそれは、と思った。
今まで顔も見せなかったくせに、何を言っているんだと。僕がどれほど寂しくて、父親がいないことで惨めな思いをしたか知っているのか、と。僕の母の苗字は佐々木である。でも、僕は王沢だ。どんな取り決めでそうなっているかは知らないが、そのことでどれほど母が寂しい思いをしているのか、知っているのだろうか、と。
しかし、同時にそれは父から初めて貰った言葉でもあった。
そして、自分は王沢だった。浮気相手の子にも関わらず、僕に王沢という苗字を与え、尚且つ、それを誇りにしろだなんて。
寂しそうな母には申し訳ないが、それ以来僕は、自分が王沢であることに誇りを持って生きているのだ。
片側月菜という付き人がいる。
毎月、クラスメイトが手にできないほどの生活費が送られてくる。
それは他の同世代とは確かに違うだろう。
でも、僕は同時にそれだけの人間だった。
「お嬢様方だって、それぞれ恋愛を謳歌したいだろうに。僕が選んだら『はい』と言って僕と結婚するだなんてことありえないよ」
「まったくです」
「いやめんどくさくてごめんだけど、本当は少しだけフォローして欲しかったんだど」
「しかし、無理を通せば道理が引っ込むのが王沢豪一郎様ですから」
僕の戯言には付き合ってくれないようだ。付き人なのに。
それはともかくとして。
「仮に無理を通せるとしてさ、僕が結婚することで豪一郎さんが得をするとも思えないし」
「それはどうでしょうか。今、豪一郎様の嫡子である凛太郎様は非常に評判の悪い方です。恐れながら、彼は王沢の器ではないとのもっぱら。であればこそ、お坊っちゃまのような非嫡子から王沢のすべてを引き継ぐものを選ばざるをえないのであれば、早いに越したことはありません」
早く後継者争いが始まったということだろうか。
「だとしても、何で結婚の斡旋を受けないといけないの?」
あくまで想像ですが、と前置きして月菜は言う。
「王沢の後継ともなれば十九の年から英才教育を受けねばなりません。もし恋愛に興じるのであればそれまでに済ませておけ、という豪一郎様の優しさとも取れます」
「リストから選ぶ恋愛……ね」
僕は王沢という家名に誇りを持っている。
しかしまた、それだけの人間だ。特別な教育を受けたわけでも特異な才能があるわけでもない。
「もちろん、不可解ではあります。でもこれはチャンスではありませんか」
「チャンス?」
「はい。お坊っちゃまは明確に王沢の後継争いに巻き込まれたということです。一つひとつ課題をクリアすれば、いずれ豪一郎様へのお目通しも叶うでしょう」
確かに僕は豪一郎に会ってみたかった。
そして、僕は彼に言ってやりたかった。僕は母の苗字を、佐々木を名乗るのだ、と。決して、王沢の誇りを捨てるわけではない。
僕はその誇りを胸に、自分は母の息子なのだと宣言してやるのだ。
七人の挨拶は全体的にギクシャクしたままに終わり、一旦彼女たちを退室させると司会進行を務める月菜はわざとらしくため息をついた。
「まさかお坊っちゃまがここまでコミュ障だとは思いませんでした」
「コミュ……え? 聞き間違いじゃなければ今、コミュ障って言った?」
「一人目の女性に対していきなり王沢豪一郎の息子自慢。その上勇気を振り絞ってキスしてきたお嬢様に『頭が高い』だなんて。通りでお坊っちゃまには友達が一人もいらっしゃらないわけです」
「いやいやいや、いるでしょ友達。ほら、ええと、ほら! 月菜とか」
「私とお坊っちゃまはお金を介した関係です」
「はぁ? それって普通じゃん。お金を介した関係の何がおかしいんだよ」
僕が返すと、なぜか月菜は泣き出した。
「お金以外のコミュニケーションを知らないんですね。哀れすぎて涙を禁じえません」
何だこいつ!
「ま、まぁ確かに僕は人付き合いが良い方ではないからね。王沢だから? 選ぶんだよね、友達を。そうすると自然と孤高になっていくっていうか」
「良いんです。お坊っちゃまはそれで。もちろんです」
彼女はわけ知り顔で頷いている。
この付き人は、どうにも僕に対して無礼なところがある。まぁ僕が優しいから許しているところではあるが、通常の主従関係で言えば許されざることだろう。
「お坊っちゃまに友達がいないのは良いのですが、しかしこれから選ばれるお嬢様には申し訳がたちません。王沢家の人間が稀代の凡愚ではあまりにも不便でしょう」
「……そ、そこまで?」
「良いですか、お坊っちゃま。お坊っちゃまはお嫁様選びを通じて、人と仲良くなることを覚えるのです。もしかするとそれこそが、豪一郎様がおぼっちゃまに真に求めていることかもしれません」
「適当だなぁ」
それにしても、そこまで言うか。
「僕は結構月菜とは仲良くやれてると思ってたんだけど」
すると、月菜はプイっとそっぽを向いた。
「……私とお坊っちゃまでは、立場が違いますから」
それは本当に小さな声で、僕にはよく聞こえなかった。もし僕に友達がいるとすれば、それは正直月菜しかいない。
でも、彼女からすればお金を介した関係に友情はないとのことだし、それに呼び名は「お坊っちゃま」だ。なんだか考えれば考えるほど気分が滅入ってしまう。
「お坊っちゃまそんな暗い顔をしないでください。これだけ素晴らしい御息女様をめとる機会は早々おとずれません。ここで男を見せずしていつ見せるのでしょう。どうですか、気になったお嬢様はいらっしゃいましたか?」
タブレットを受け取ると、少女たちの華々しい経歴が列挙されている。
でも、結婚ってそういうことだっけ? なんだか外の空気が恋しくなった。
「ちょっと出てくるね」
「お供いたします」
「いや、一人で行きたいんだ」
僕は月菜を置いてマンションを出た。
ここまで書いておいてなんだけど。。
このnoteはプロットを最初に作ることを否定するものではありません。
自分はそれは結構難しい気がしたので、できる人は本当に羨ましいなぁ、というお話でした。