
19年共にした名前とさよならした時のこと
#名前の由来
という題に当てはまるか置いといて…「名前」に対して思うところがある。
昔、名前って死ぬまで変えることなんてできないんだと思っていました。
そりゃ結婚でもすれば名字は変わることあるけど、大体の人が記憶もない頃から呼ばれ続けた名前とともに最期まで過ごしますよね。
でも僕は生まれた時と、19歳の時と2度親に名前をつけてもらいました。
その時の話を少しします。
どうして名前とさよならしたの?
言うのは本当に簡単ですが、生まれた時の名前のままだと生きてくのに不都合だったから変えさせて欲しいと親に話をしました。
けしてキラキラネームとかDQNネームだったわけではないです。(確かに漢字はその読みの名前にしては珍しい字面でしたが結構気に入ってました。)
もちろん突然前触れもなくその話をしたわけでもないです。
改名というのは第三者が納得できる理由があってできることです。
好き勝手変えられるわけではありません。
例えば、漢字が珍しすぎて誰にも正しく読み書きしてもらえないとか、一般的ではないことでからかわれたり虐められたりしてしまうとか、殺人犯に同姓同名の人がいる、とか…。
それによって本人が生活を送る上で支障がでる場合、家庭裁判所に申し立てをしてすることができます。
僕の場合は自身が性同一性障害であったことが理由でした。
僕が男性として残りの人生を生きてゆきたいと思った時に、生まれの女性としての名前のままでは生きづらかったのです。
自分で名前を決められる、ということ
高校を卒業するまでに周りから理解を得られるようにし(この辺りの話はまた別の機会)、改名のための使用実績を集めるために卒業後から新しい名前での生活をするつもりで動いていました。
男としての人生を送るとなった時はどんな名前で今後一生暮らそうか、といろんな名前を一人で考えたものです。
名付けサイトでいろいろ響きや漢字を調べたり、画数をみて「これは良い」「これは悪い」なんてみたり、ネットで使用するハンドルネームなんかさももう自分の名前であるかのように名乗ってみたり…
「どんな人になっていきたいのか」
自分で自分の名前を決めることができるなんて経験まずできませんからね。
これがあなただったら、もし自分の名前をつけ直すことができたら
どう決めて、なんという名前にしますか?
…自分で名前を考える。最初はサイコーじゃんと思っていた。けど、すごくわくわくしていた反面、考えれば考えるほど「本当にこれで良いのかな」とも思いはじめている自分もいました。
元の名前をつけてもらった時の親の想いを考えると、それによって結果的に女の子に見られるということで嫌だなと思うことは確かにたくさんあったけども、だからと言って新しい名を自分一人で決めるのは違う気がしたんです。
(僕の場合はこの生き方に対する親の理解を得ることができていたのでこの結論に至りました。いろんなケースがあるかと思います。)
あと、仮に自分自身で名前を決めて新しい名前が許可されたとして、
今後僕が改名をしたことを知らない人に対し、名前について話す場面になったら、本当は違うのに「親につけてもらいました」という小さな嘘を変に重ねることになるんだな…という考えがよぎりました。
細かいところだけど、これまで散々自分の本心を隠して生きてきたから、もうそういうことはしたくないなと思い、親に対しても、「一人で決めるのはちょっと…」とそのことを話してみました。
どうやら親からしたらあんたの名前だし別に自分で決めてもいいよって話していたのですが、相談の結果、響きは一緒に納得いくものを決め、漢字は親が決めるということに落ち着きました。
個人的な考えではあるけど、こうした自分以外、想像の範囲外からの決定みたいなものって人生に広がりを持たせるためにも必要なんじゃないかな?と思います。
名前って第三者からの想いがダイレクトに詰まってるから、「ぶっちゃけ壮大すぎる名前で荷が重いッス。」みたいな話とか周りで聞くようなことあるんだけども、それとどう付き合ってくのかを長い時間の中で考えるって素敵だよね。(僕は変えちゃったけども)
けして名前だけの話ではなくて、試験とか、愛の告白とか…笑。第三者が決定権を持ってることって自分には最終判断ってどうにも出来ないじゃないですか。
そういった物事を受け止めて自分の力にする力をつける、といいますか。
大事だなって思ったんで漢字は親に託しました。はい。
人生2回目の「名づけ」、親の気持ち
女性時代の名前が「句美(くみ)」(仮名)
話し合った結果、新しい名前は元々の響きを残した「たくみ」という名前にすることになりました。
この段階で僕は双方が納得して決まった自分の新しい名前に内心とてもウキウキしていました。笑。
父がその後漢字を考えるとのことで、その間僕はドキドキしながらどんな字になるのか自分でも色々考えたりしていました。
拓巳とかカッケーよな、とか考えたり。
流石にないとは思うがまさか丸々残して太句美とか?いやそれはちょっと…みたいなこと考えてみたり。
あまりに嫌いな字だったら異議申立てようか、とか思っちゃったりして笑。
どれぐらい待ったかは忘れてしまいましたが、たぶん数日後とかに漢字を教えてもらった気がします。
黄色い四角いポストイットを渡され見てみると、そこにはシンプルに大きく
「 巧 」と書いてありました。
なんだかすごく不思議な気持ちになったのを覚えています。
他の候補なんて吹っ飛んだ。自分では絶対選ばなかったなーという字でした。
同時にこれが自分の名前なんだと思うとすんなり受け止められました。
その後自分で改めて意味を調べたら、その字の中に「美しいものを作る」とかって意味もあったりして、あー…元の名前にあった漢字とかを意味で引き継ぐような…そこまで考えていたりしてくれたのかなぁと。
「巧」と「句」ってちょっと似てる形してるなぁ、とか。
2度目の名づけ。
あー、親ってすげぇ。
ってなった出来事でした。
昔の名前の行方
その後名前が決まった僕は高校を卒業、翌年度からその名前で予備校生活(浪人した)を送り、使用実績を集めて無事約1年後に正式に名前を変更することができました。
今の名前に変わってから四捨五入するともう10年。
前の名前と過ごした時間の方がまだ長い。
けどまるで最初からその名前だったかのように思うくらい馴染んでいる実感があります。
前の名前を街中だったり映画だったりとかで見聞きするとちょっとハッとなる。
けど昔呼ばれ続けてたあの名前は、例えるなら「忘れはしないけどもう長いこと会っていないな…という親戚」くらいの存在感で自分の中にいる。
#名前の由来