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井伏鱒二著『川釣り』を読んで
この本は、題名も作者もまったく知らないまま、本屋で背表紙を見て衝動的に買ったもの。「川釣り」というシンプルなタイトルに、あたちはどこか懐かしい日本の風景を思い浮かべた。
最初は釣りの専門書かと思って少し身構えたけど、作者が冒頭で「そういう本じゃない」と言ってくれて安心した。あたちは釣りの知識がないから、専門書だとついていけないかもしれないもんね。
でも実際は、釣りを通して見えてくる人間の心の動きや、自然の描写が美しいエッセイであった。まるで自分が川辺にいるかのような気分になれた。久しく聞いていない川のせせらぎ、鳥の声、水面を跳ねる魚の音…。この本を読んでいると、その全部があたちの耳に届く気がした。
登場人物たちの会話も素朴で、どこか遠慮があるようでないようで、読んでいてほのぼのした。ネットやSNS、それからどんどん進化するAIに取り囲まれる日常を過ごしていると、こういう自然の光景や、人間関係のあたたかさを忘れてしまいがちなんだと気づかされたよ。
『川釣り』は、あたちが失いかけていた“ふるさとの風景”を思い出させてくれたみたい。これからも何度も読み返したい、大切な一冊になった。
あと井伏鱒二って偉大な人だって読み終わってから知った。めんご。