エンジニア採用市場がぶっ壊れている今、離職率を下げるためにやったこと
はじめまして。株式会社メタップスホールディングスの釣りバカVPoE、阿夛(@ataboy86)です。
現在は、「re:shine」というフリーランスのマッチングプラットフォームの事業責任者をやりつつ、VPoEとして開発部門の統括をしています。
今回は、私が2018年に開発部長に就任してから現在に至るまでの、エンジニア離職率を下げるために行ったことを赤裸々に綴ろうと思います。
大前提として、私の考える「良い組織」とは、共通目的を持ち、意思疎通がとれ、成長に貪欲である集団であることだと考えています。
誰とやるかと何をやるか、というよくある言葉で、この人たちとこれを成し遂げたいと考えられる環境を、どう用意するかは非常に重要な要素です。
どんなに事業内容が素晴らしくても、組織が成り立っていないと人は離れますし、どんなに組織が素晴らしくても事業が成立していなければどこかで資金繰りはショートします。
持続性のある組織を作り、再現性のある組織を作るために、様々な取り組みをしてきました。
離職率が高かった当時の採用方針とその状況
私が開発部長に就任する前年の2017年頃までは、プロダクト開発を加速させる意図で採用活動を行っていました。
採用ラインは厳しめに設定されており、特定のプロジェクトや短期的なニーズに応えるためのエンジニアが多く採用されました。
結果として多くのエンジニアが担当プロジェクトが終了すると同時に離れてしまい、結果として数カ月から1年前後の在籍で離職が多数発生しました。
当時のエンジニア採用市場としてはGREEの大規模な離職などもあり、一定条件を満たせば採用はそう難しくないという時代でもあったことから、短期的な事業進行としては正しい選択でもあったとは考えています。
一方で、会社に定着しない危機感と採用コスト(金銭的、インプットの時間など)は非常に高かったと感じています。
ESCの立ち上げ
離職率の高かった当時のメタップスでは、組織図以外のエンジニアとの関わりがほとんど無く、他部門のアラートが一切上がってこず、こちらから選択肢を提示する前に退職が決まっていることが多かったのが実態です。
そこで、エンジニアの離職率を下げるというミッションで、2018年に私が開発部長に就任し、「Engineer Steering Committee (以下、ESC)」を当時の役員と立ち上げました。マネージャーレイヤ以上の複数名で構成され、エンジニアの満足度向上と制度支援を目指しました。
ESCの主な目的は、所属エンジニア間の相互理解と事業理解の促進でした。
また、ESCの役割は、グループ会社含む社内のエンジニアに対し、第三者機関としてコミュニケーションの場を提供し、離職リスクのあるエンジニアを想定し、抑止することでした。
エンジニアの離職率を下げるためにやったこと
ESCとして主にやってきたことは以下のとおりです。
グループ・事業間を横断したエンジニアの交流
エンジニアの評価制度の見直し
新卒採用・ジュニア層採用の開始
募集要項の再整理と採用へのコミット
グループ・事業間を横断したエンジニアの交流
弊社は複数のグループ会社と複数の事業から成り立っており、従来、事業体ごとに独立した採用を行っていたため、エンジニア間の関係が希薄でした。
組織として成長する上で、他事業のエンジニアとのコミュニケーションが必要不可欠であると考え、まずはグループ・事業間のエンジニア交流に着手しました。
具体的には毎月エンジニア勉強会を開催することと、弊社が入居しているWeworkを活用して毎週ビール会を開催しています。
エンジニアの評価制度の見直し
次に、離職率を下げるというよりも「定着率を上げる」ことを目指し、一般職の評価制度に準じて評価を行っており、「何ができたらいいか、何ができていないのか」を明確にし、エンジニアの成長に対する評価を実現すべく、会社の規定から大きくはずれないレベルで評価制度の見直しと再設定に着手しました。
新卒採用・ジュニア層採用の開始
3つ目に、新卒採用とジュニア層の採用です。それまでの弊社は「個の集合体」という印象も強く、個で課題を解決できるスキルや役割を重視した採用でしたが、その分、属人化した業務も多かったため、属人化しすぎず、チームで課題を解決すべく「個」ではなく「組織」として強くする方針へしていこうと思いました。
即戦力だけでなく「育てる」ことを意識した採用方針に転換し、採用ラインをあえて緩め、組織としての成長を狙っていきました。
募集要項の再整理と採用へのコミット
最後に、人事採用担当と連携してエンジニアの募集要項の再整理と採用ラインの見直しを行いました。
これまでは採用担当に募集要項をパーツとして渡しているだけで、「なぜ」を採用担当に伝えておらず、意識のズレがあったことが問題でした。
事業進行上、即時で人がほしいケースと、組織を育てるための人材の採用も分かれておらず、採用担当と定期的にすり合わせを重ねた結果、部分的な業務委託の活用と、マネージメント層、ジュニア層という形で、採用枠も細分化され、採用担当の枠ごとの理解も深まったことは大きな変化だと感じます。
ESC活動の結果
ESCの取り組みで、グループ間の交流が活発化され、他部門に対しての業務やチームの理解が深まったことで、他部門に対するリファラルなども発生するようになりました。
採用やキャリア面でも、私自身の人事領域における理解、人事部のエンジニア理解も進みましたし、採用に関わっていく中で、若手エンジニアのマネジメント適性も見えるようになったことで、離職率の大幅な低下と、組織規模の拡大(20名程度から50名を超える組織規模まで)ができたのも大きな成果でした。
エンジニアの欠員を埋める新たな糸口
ここまでESCの活動で離職率を下げるための活動をしてきましたが、それでも人は辞める時は辞めます。即戦力エンジニアの欠員を同レベルのエンジニアで補うことは困難に近いことです。
例えばAさんの役割が
・バックエンド4割
・フロントエンド4割
・インフラ2割
などを担っていた場合、まず、このスキルをすべて保有する人を探す、というところから始まり、選択肢がかなり狭くなってしまいますし、正直、これで解決したケースは1度もありません。
その中で代替案として、弊社では「業務委託」の活用を進めました。
業務委託を活用は、社員1名と特殊能力を持つフリーランス1名(0.5人月)という形で行いました。
この経験を踏まえて、特殊能力をもった業務委託を見つけられることに価値を感じ、今私自身がre:shineというサービスを立ち上げるきっかけになってもいます。
まとめ
タイトル通りエンジニアの採用市場がぶっ壊れている昨今、
採用に向き合って採れる人を頑張って探す
採れた人たちをいかに離職させないか
が重要となります。
1.については選択肢を広げない限り採用したい範囲に充足させることは本当に厳しいです。
2.については今回の記事が少しでも役に立てばと思います。
これらを踏まえ、少しでも多くの方が継続して成長できる組織に近づけると幸いです。
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