ラジオへの想い
「今時ラジオって珍しいね」
私が趣味はラジオを聞くことだという度に言われる言葉だ。
それもそのはず、生まれた時からインターネットが身近にあるZ世代の私たちにとってYouTubeやInstagram、Twitterがエンタメの代名詞である。
Twitterで世の中のトレンドを把握し、YouTubeであらゆるジャンルの動画を楽しみ、Instagramで友人の近況を知る。
一方でラジオと言えば、お年寄りが聞いている、昭和の古臭いものという印象が強かった。
そもそもどうやってラジオを聞けばいいのかわからない、という友人も多い。かくいう私も昨年からラジオを聞き始めた新参者で、ラジオを聞こうと思うまではスマホでラジオを聞けることすら知らなかった。
そんな私がラジオを聞き始めたきっかけは些細なものである。
2020年4月。コロナ禍で大学もアルバイトもなくなり、家で単調な日常を繰り返すことに少々参っていた時に、偶然、SNSで一人の俳優が自身のラジオ番組の告知をしているものが目に留まった。
暇だしせっかくなら、と気軽な気持ちでラジオを聞き始めたのだが、聞けば聞くほどラジオ特有の魅力に引き込まれ、1か月間も経たないうちにすっかりラジオ好きに変身した。
ラジオの魅力とは何だろうか。よく聞く言葉としては「親近感」や「双方向性」などが挙げられるが、私はそれら全部をひっくるめてラジオの魅力とは「好きを生み出すこと」であると考えている。
不思議なことにラジオを聞くようになってから世界の見え方が変わった。
テレビで今まで興味のなかったお笑い番組やドラマを見るようになった。世の中のあらゆるニュースを聞いては、あのパーソナリティならどう話すだろうか、と考えるようになった。ラジオを通して好きになったアーティストのファンクラブに入った。ラジオの世界を介して様々なものに興味を持ち、そうして知ったものにはなぜか親しみを感じていた。
それらは全てラジオが生み出した「好き」という想いの現れであった。
それは時に熱狂というエネルギーに変わり、新たな世界に踏み出そうという背中を押してくれる手にもなる。「好きだ」という想いそのものが辛いことから心を守ってくれる盾になり、生きる希望となる程のパワーを持つ。
そしてそれらは全てどこか温かな心地よさをまとっていた。
インターネットの普及により他人や世の中の動きを簡単に知ることができる世の中になった。だからこそ誰もが「今みんなが好きなもの」を素早くキャッチし、それに呼応しようとする。しかし次第に情報の波に飲み込まれ、自分の「好き」という感情すらよくわからなくなってしまう。
そんな「今」だからこそ、温かな「好き」を生み出してくれるラジオは心のためのメディアとして、なくてはならないものであると私は信じている。