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12.23 百円の日常と八円の自由

深夜2時に仕事場を出ました。

自転車で夜中のあの独特な静けさを走りました。

家について、ポストを空けると受け取れなかった宅配の伝票が入っていました。

僕は宅配を受け取るのがなんだか苦手で、月に何回もこの伝票を見ている気がします。近頃はあらゆる配達会社が電話をかけてくれるまでになっています。

今回は午前指定で12時28分に配達記録。

またあのお兄さんが、「12時過ぎちゃってごめなさい。」て来るんだろうな。僕も許してもらってるからお兄さんのことも許してあげます。

多分明日の昼まで、ご飯をちゃんと食べる時間がないからご飯を食べてシャワーを浴びました。

シャワーの温度がそんなに高いわけでもないのにつま先だけが火傷してしまいそうなほど熱く感じて、冷えていたことに気づかされます。僕はいつから冷え性になったのだろうか。

お風呂場から出て、髪を乾かしながらあと3時間後には仕事場に戻っていることを考えたけれど、なんだか現実味がなくて自信がないなと思いました。

シンクの下に追いやったトースター機能がないから薬箱にしている備え付けの電子レンジの中を漁りました。

こんな時に限っていつも月に一度のアレが来るから、鎮痛剤と鉄剤と、ついでにビタミンと間違えて買ったけど悪くなさそうだから飲んでるこれと。こんな時間にご飯を食べて、フワフワした頭でいろいろ飲んでしまったから、胃薬も飲もうかと思ったけれど、ただ異物が増えるだけだと思って辞めてリュックの中にオレオと一緒に放り投げました。

やっとベッドに着いたら、もう1時間しか寝る時間がなくて、寝るか迷いながら眠りについたら、もう一瞬で朝になっていました。

大好きな音楽で目覚めたいけれどいつか嫌になりそうで、そのギリギリ前が目覚ましのBGMの替え時だなと僕はいつも思います。

お腹が空くわけもないけれど、次にいつご飯を食べれるか分からないから砂糖の入ってそうな液体を流し込んで、また自転車に乗りました。

なんだかんだちゃんと身支度はしたけれど、
起きてるのは見た目だけだなと思いながら仕事場に向かいました。

良い天気の朝なのに、僕の脳味噌にはうまく酸素が行き渡らなくて、呼吸も筋肉も気持ちも全てが重く感じました。

仕事場について、数時間前に会った上司と苦笑いを交わしてから仕事を淡々とすすめました。

やっぱり何だかいろいろ重くて、淡々とも言えないなと思っていたら、いつものあの人がやってきて注意されました。

正午少し後、仕事が落ちついてみんな休憩に向かいました。僕と僕が苦笑いを交わした上司はもう退勤の予定だったのに、上長から「休憩行ってきや。」と言われて、今度はお互いに目配せを交わしました。これは帰れない。

そう思っていたら、マネージャーからランチに誘われて、ああそういうことかと思って上司と上長と4人でお店に向かいました。

真前に座ったマネージャーに
「顔、初めてちゃんと見た。」
と言われて、
「恥ずかしいですね。」
と言いながら、今外したばかりのマスクを付け直したくなりました、

ああ、僕は今微笑んでいるつもりだけれど多分ちゃんとできてないだろうなと思いながら変に汗ばむ空気の中でパスタを食べました。

仕事場に戻って、仕事を始める身支度をしながらも退勤の許可を得ようという、動作と思考が全く一致してないままで、僕はとりあえずマネージャーと上長の会話をきいているふりをしました。

しばらくしてから思い出したように
「あ、あがってな!」と上長に言われ、
「え、いいんですか?」と拍子の抜けた声で聞き返してみました。

仕事場の階段を降りて自転車置き場で腕時計を見ると、もう午後4時を回っていました。

今日は水曜日だし早く上がれると思って、寝不足になることを考慮した上で映画を観てパフェを食べる予定を立てていたけれど、もうどちらも間に合いませんでした。

喉が乾いて入った喫茶店に、甘ったるい飲み物しかなかったみたいな微妙な欲求不満を抱えながら、とりあえず自転車に乗りました。

無意識にはめたイヤフォンから、あのバンドが思い通りにならないことばかりだと唄いました。鎮痛剤が切れたせいか、昨日の帰り道よりも意識がはっきりして、それと同時に視界が滲んできました。

家に帰って服を脱いでベッドに潜り込むと、
今度はもう一瞬で夜になっていました。

耳が濡れていて冷たくてあんまりすっきりしないなと思いました。
それからまたしばらく、僕はベットでぼーっとして、憂鬱なことばかりが浮かぶので外に出ました。

次の休みはクリスマスだけれど、こんなところに知り合いなんてほとんどいないから家にいようと決めていました。

けれどお菓子がつくりたいなと思ってスーパーで苺を買って、ついでにコンビニでアイスを買って帰りました。


僕は何もうまくできないけれど、
僕を一番幸せにする方法を知っています。


宅配便はうまく受け取れない。
仕事も遅い。
愛想笑いも苦手。


だけれど、僕には好きなものや好きな人がいっぱいあって、それを自覚していることだけは僕の美点で救いだと思うのです。




そろそろお風呂のお湯がぬるくなってきたので、はやく髪を乾かしてからあのバンドのライブを観ようと思います。
またすぐに朝が来てしまうけれど、苺のケーキのレシピを考えていたらどうにかなりそうな気がしてくるのです。



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