11月3日は文化の日? いえ、私にとっては「恩、義理、人情」の日です
(2018年11月3日の記録 エッセイ 6年前)
ここ数日、無性にある方の仏前に花を手向けたい気持ちになって、昨夜、閉店後の花屋を数軒回り、かろうじてシャッターを閉めていなかったお店で花束を作ってもらい、起業当初、お世話になった印刷会社を訪ね、お渡ししてきました。
「ピンポン」と鳴らすと、先代社長から会社を継いでいる息子さんが玄関先に出てきて、私の持つ花束を見るなり「こんな夜分に、突然、どうしたんですか?」と驚かれました。
「いあや、実は、ここ数日無性に社長と弟さんの仏前に花束を手向けたいという気持ちになって、いてもたってもいられず、お持ちしました」と伝えると
「・・・ああ、そうでしたか・・・そういえば?・・今日、ん?明日?・・・」と後ろに立つお母さんの方を向いて確認してから
「そういえば、明日が、親父の命日でした!」と息子さん自身、驚かれていました。
私も実は、命日を覚えていたわけではないので、明日が先代社長の命日と聞き驚きましたが、この偶然の出来事に息子さんと私は「ああ、きっと社長が『あいさつに来い』と呼んだのでしょうかね」と、2人して、目に涙をためながら笑い合いました。
-----
印刷の「い」の字も判らぬ私が、一枚のポスターを作ったことがキッカケで、あれよあれよとロゴだ、看板だ、チラシだーと仕事を頼まれるようになって、いつの間にやら「アトラスデザインワークス」を名乗るデザイン事務所を始めるようになったのが22年前でした。
「チラシなんて、どうやって印刷したらいいんだろう」という状態の私に、イチから教えてくださったのが、その印刷会社の先代社長でした。
この社長との出会いが無かったら、今の私も会社も無かったと言っても過言ではない恩人でした。
もう10年ほど前にこの社長は亡くななられましたが、末期がんの最期の病床で朦朧としながら、うわごとのように「本を作ってあげたよ」と言っていたのだそうです。それで奥さんが「誰にですか?」と聞くと、社長は「アトラスに・・・」と半分意識のない状態ながら、はっきりと仰ってくれていたのだそうです。
後日、その話を聞き「そこまで私達を心に留めてくれていたのかー」と、涙したものでした。
その社長には2人の優秀な息子さんがいて、跡を継いでいました
弟さんが社長である兄を助け、二人三脚で頑張っておられましたが、数年前に、その弟さんは、急性白血病で若くしてこの世を去ってしまいました。
生前、客先で印刷以外の仕事で、パソコンやネットの話が出ると必ず弊社を紹介してくれて、この弟さんが縁を紡いでくれた取引先が少なくありません。
そんな取引先の一軒を先日訪れた時、帰り際に「ああ、本当にアトラスさんを紹介してもらって良かった」という言葉を頂きました。
そこでは、そんなキッカケを作ってくれたその弟さんのお名前は出ませんでしたが、お客様にそう喜ばれて嬉しいのはもちろんですが、逆に、そんな良いお客さんを私達に紹介してくれた、今は亡き弟さんへの感謝の気持ちで一杯となって
「仏前に、お礼を伝えたいな」という気持ちになったことも、花束を手向けたいと思った理由でしたが、いざ、花束を携え訪ねると、社長の命日の前日だった―と言う偶然の出来事にも、深い縁を感じずにはいられませんでした。
会社を始めて23年目ですが、私たちが「今」あるのは、今現在応援してくれている多くの方々の他にも、上に書いたような、今は亡き多くの私たちを「支え」てくれ、協力してくれた多くの恩人の存在があったことをつくづく思い、私は聖職者ではありませんが、こんな気持ちになる「啓示」を与えてくれた今は亡き方々、そして天に向かって、人生の「恵み」を与えて頂いたことへのお礼が、無性に言いたくなったーという、そんな文化の日の今日でした。
恩・義理・人情 2018/11/3
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?