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国会の会期が短すぎる件 国民置き去りの駆け引きを招く
終盤は政治資金規正法の話題ばかりだった今年の通常国会が会期末を迎えました。
通常国会は毎年1月に召集され、延長がなければ、会期は150日間と決められています。
しかし、この会期が諸外国と比べると、とても短いことはご存じでしょうか。
今回はそんな国会の会期のお話です。
国会の種類と会期
国会には、開かれるタイミングや目的によって4種類の分類があります。
通常国会・・・毎年1月に召集され、会期は150日間で1回だけ延長可能。3月までは来年度予算、4月以降は法律案や条約等が審議され、6月まで開かれることが多い。
臨時国会・・・会期はその都度決定し、2回まで延長可能。通常国会中以外にも法律や補正予算を審議する必要があるときに招集され、9月ごろになることが多い。開かれなかった年もある。開かれた場合、長くて60日ほどの会期になることが多い。
特別国会・・・衆議院選挙後に召集され、新しい総理大臣を決めるのがメイン。
参議院の緊急集会・・・衆議院解散中に緊急の必要があったときは衆議院議員がいないので参議院で会議する。
3は衆議院総選挙後で、4はこれまでに2回しか開催されていないのでかなり例外的な扱いになります。
臨時国会は開催されない年もありますが、開催されれば長いと60日ほどです。ちなみに短いときは3日間だったり、召集当日に衆議院が解散され、1日だったこともあります。
つまり、日本の国会は年によって前後はありますが、長く見積もると1年間に150日+60日で210日間ほど開催されているということになります。
先進各国の議会と比較
民主主義を採用しているアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと会期を比較してみます。
アメリカ・・・毎年1月~12月
イギリス・・・毎年5月ごろ~翌年5月ごろ
ドイツ・・下院には会期制度なし。いつ議会を招集するかは下院で決定する。
フランス・・・常会は毎年10月~翌年6月。ほかに臨時会等あり。
日本を除くとフランス議会が最も会期が短いことになりますが、それでも約270日間あります。
日本の国会の会期は210日ほどですから、2番目に短いフランスと比べても約2ヶ月も短いです。
しかも、長く見積もって210日なので、臨時会が開催されないと年と比較すると120日もの差が出てしまいます。
会期が短いことで政党同士の駆け引きになりやすい
では、会期が短いことによる問題点はないのでしょうか。
国会では、国民のためになる政策議論よりも与野党の駆け引きを優先しているかのような報道がされることがあります。
私はこの会期が短いということが政局(与野党の駆け引き)につながる原因ではないかと考えています。
国会には、会期中に成立しなかった法案に対して、次の国会に持ち越すことができない「会期不継続の原則」というものが存在します。
つまり、与党や内閣が提出し、議決までもっていけば成立することがほぼ確実な法案であっても、会期ギリギリで時間切れによる廃案にできるということです。
数で劣る野党がどうしても成立させたくない法案があるなら、良い悪いは別として、手段を選ばないのであれば、これを利用しない手はありませんよね。
そして、国会において、どの法案をいつ議論し、いつ議決するかという日程は与野党の国会対策委員長が話し合って決めています。
この日程を与野党の政治家同士が決めるというのはかなり特殊なことで、ここでも駆け引きが展開される余地があり、政局になりやすいです。
昭和の国会ではわざと議員が遅く行動する「牛歩戦術」をとって時間切れを狙ったりもしました。
国民や日本のためになっているか
こうして、会期が短い→国民置き去りの与野党間駆け引きにつながってしまうのです。
しかし、国民が国会に期待するのは醜い争いではないはずです。
海外ではウクライナやガザ地区を巡る紛争、そして台湾の緊迫した状況で安全保障環境が悪化しています。
国内では、物価高に国民が苦しめられ、賃上げができるかどうかで今後の経済が好転するかどうかの瀬戸際です。
こんな状況では短い会期を改め、通年で国会を開催することも視野に入れてほしいと思います。
通年国会への課題
通年で国会を開くのであれば、解決しなければならない課題があります。
現状、会期中は総理大臣をはじめ、各大臣が国会に出なければならない慣習になっており、このままでは外交などに影響が出る可能性が非常に高いです。
そこで、既に存在している副大臣や政務官がもっと積極的に国会で活躍できるように変えるべきです。
更にあげるなら、官僚の負担増大も問題です。
野党議員が質問内容を通告し、回答を官僚が作成しますが、この通告が遅すぎてブラック職場になっている現状があります。
これに関しては、質問通告の期限をしっかり守るように徹底するか、事前に調べないと分からないような細かい内容ではなく、全体としての方針のようなものを質問するようにするなど、対策が挙げられます。
他にも会期を延ばすことに対して問題はかもしれません。
しかし、問題があるからといって改革しないのでは、現状はよくなりません。
大事なのはどう解決していくかだと思うので、今後も考えていきたいですね。