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与党過半数割れがどうやばいのか解説する

2024年10月の総選挙で自民・公明の連立与党が過半数をとることができず、30年ぶりに少数与党となりました。

実は、日本が採用する議院内閣制はスピード感があり改革を進めやすい民主主義であるのですが、与党過半数割れによってそういったメリットが失われるかもしれません。

実際にはスピード感があるとは思えない方もいると思うので大統領制を比較しつつ、解説していきます。




議院内閣制と大統領制

世界には民主主義を採用する国がたくさんありますが、根底には三権分立という考え方があります。

国の権限を「行政」「立法」「司法」に分け、別々の機関がこれを行使するというものです。

中世のヨーロッパでは強い王様がすべての権限を持っており、独裁体制を敷いていたため、そこから民主主義に転換していくうえで考えられました。

日本に当てはめると「立法」は法律をつくる国会のこと、「司法」はその法律に違反していないかどうかを判断する裁判所のこと、「行政」は法律に基づいて実際の運営をする内閣や官庁、地方自治体などを指します。

日本はこの行政権を行使するトップに内閣総理大臣(首相)がいます。アメリカだと大統領がいます。

世界の民主主義国をみると、総理大臣がトップを務める「議院内閣制」
とアメリカのように大統領がトップを務める「大統領制」に大別されます。

2つの大きな違いは、そのトップの選び方です。


大統領制を掘り下げる

日本の総理は国民が直接選挙で選びませんが、アメリカの大統領は国民による選挙で選びます。

大統領制


では、この違いはどのように作用するのでしょうか。

最も大きな違いは大統領制の場合、議会の多数派と大統領が同じ勢力であるとは限らないという点です。

たとえば、議会はA党が過半数の議席をとり、大統領はB党の人が就任する、といった状況です。

アメリカ大統領は4年ごと、議会は2年ごとに選挙するため、議会の選挙しか行わないタイミングで大統領の政党が選挙に敗れるといったことが頻繁に起きます。

大きな期待を背負って新しい大統領が誕生しても、2年が経過してその期待が冷めてしまうんですね。

前述のとおり、法律は議会で審議して作りますが、大統領と議会の多数派が異なる場合、大統領の方針通りに議会を通らないことのほうが増えます。仲間ではないのですから、当然ですね。

議会では、法律だけではなく、国の予算案を通すことも重要な役割です。

この予算も通らないとなると国の運営ができませんから、大変なことになるわけです。

議会と大統領の対立によって、国の方針が定まらず、決断がしにくくなることも簡単に予想できます。

しかし、大統領制ではそれでいいのです。

日本では、決められない政治と言われたりしますが、大統領制では、選挙で選ばれた人たちが議論し、合意形成につなげることが求めらているからです。


議院内閣制を掘り下げる

対して、議院内閣制は何度も述べているように国民が直接総理大臣を選ぶことはありません。

議院内閣制

国会議員が総理大臣を選ぶ仕組みなので、A党議員はA党代表に、B党議員はB党代表に、C党議員はC党代表に投票します。

A党が議会の多数派であれば、A党の代表が総理大臣に就任するので、国会の多数派と総理大臣が同じ勢力ということになります。

内閣が国会に法案や予算案を提出しますが、内閣も議会も仲間同士なので原則として否決されることはありません。

この結果、大統領制とは違い、スピード感をもって政治を進めることができます。

逆に言うと、制度上は否決されることが無いから、A党が選挙で約束したことは100%達成することが前提にとして考えられます。

つまり、議院内閣制は国会で議論するよりも選挙公約の実行が求められます。


自民公明過半数割れによって大統領制化

総選挙に負けたとはいえ、最も議席を確保しているのが自民党である点は変わりません。

(衆院選で10以上の議席を獲得した党:自民191、公明24、立憲148、維新38、国民28)

しかし、過半数を確保していないことによって、法律を通すにも予算を通すにも必ず、いずれかの野党の協力が必要になります。

この時に与党と野党の間で政策を協議し、合意形成を図る必要があるわけですね。

実際には、自民党は国民民主党の103万の壁を引き上げる政策の実現で譲歩するかわりに予算案への賛成を取り付けたい思惑を感じます。

この合意を形成するというのが大統領制の要素と重なります。スムーズに協議を進められるかどうかが石破首相の腕の見せ所といったところでしょうか。

今後の議論によって与党の公約だけではなく、野党の公約のより良い部分を取り入れ、実現できるかどうかが今後の注目点です。

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