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【日本オラクル株式会社様】チームの心理的安全性が生んだ「ユニークな女性リーダーシッププログラム」 | With Potage Vol.3

Potageは、代表であるコミュニティ・アクセラレーター河原あずさが中心となり、ファシリテーター、デザイナー、プランナーなどが集まったチームです。私たち自身が「個」が活きるコミュニティづくりを体現し、さらなる発展を目指しています。
「With Potage」ではクライアントや仲間たちがPotageと仕事をする中で感じていること、今後どんな関わりをしていきたいかを語っていただきます。Potageと仕事をしたいというパートナーさんやクライアントさんの参考になると幸いです。
第3回は、女性リーダー育成プログラム「OWL Japan Leadership Program」でコラボレーションした日本オラクル株式会社人事本部の明石真理恵さんと、人事本部長の一藤隆弘さんと一緒に、プログラムについて振り返りました。

お2人のプロフィール

一藤隆弘(日本オラクル株式会社執行役員 人事本部長)
大学卒業後、富士通で本社人事、部門人事、工場人事、社長室等を担当。2001~2004年にドイツ駐在し富士通とシーメンスの合弁会社で人事•管理部門を経験するなかで組織開発をキャリアの軸にする。その後、レノボ、ゼンショー(すき家)、EYを経て、2021年5月より日本オラクル執行役員人事本部長(HR VP)。誰にとっても優しい組織をつくることを仕事にしています。

明石真理恵(日本オラクル株式会社人事本部)
英国にて人事管理の修士号取得後、HR Generalist/Managerとしてロンドンにてキャリアを積む。2016年に日本に帰国後、外資系総合コンサルティングファームにて人事コンサルタントとしてタレントマネジメントのソリューション相談やチェンジマネジメントのサポートを担当。その後スタートアップの人事部立ち上げを経て2021年2月、日本オラクルに入社し現職。

「あずさんは”一緒につくっていただけるパートナー”だと感じたのが決め手でした」

河原あずさ(以下、河原):Potageは、2022年2月からおよそ10ヶ月間に渡るスケジュールで、日本オラクルさんの女性リーダー向けプログラム「OWL Japan Leadership Program(以下OWL/OWLはOracle Women’s Leadershipの略)」に伴走して、一緒に企画、運営、デリバリーを進めています。まず、このプログラムの概要についてご説明お願いします。

明石真理恵(以下、明石):OWLは、女性リーダー層を対象とした、未来の女性管理職を育成するためのプログラムです。女性リーダーから22名選抜し、10ヶ月間のプログラムに参加いただいています。

 このプログラムには3つの柱があります。「メンタリング」「内省」「ネットワーキング」です。もちろん、研修コンテンツも提供しているのですが、内省やネットワークの「お題」につなげるための材料として「学び」を入れているというのが特徴です。

 メンタリングには、12名のマネージャー(男性11名、女性1名)たちがメンターとして参加していて、22名の女性リーダーとの1on1を実施頂いています。また、1on1のコミュニケーションをよりよくして、女性リーダーたちのよき見本になっていただくために、メンターのみなさんを対象とした研修コンテンツや1on1トレーニングも並行して提供しています。

 プログラムの前半で女性リーダー参加者は、課題とオンラインでのディスカッション、EQ(感情知性)アセスメント受検とフィードバックを通じて、自身のキャリアを深掘りしたり、強み弱みを理解したり、価値観を言語化したりする「内省」を重点的に行います。後半は、3名ずつのチームを組んで、チームビルディングワークショップに臨んで頂いています。メンターの皆様には、随時これらの活動をキャッチアップいただきながら、彼女たちの伴走役になって頂いています。

企画やデリバリーは、私と、上司のタカ(一藤隆弘)さん、そしてPotageのあずさんの3人を事務局メンバーとして、日々ディスカッションしながら進めています。

河原:今回のOWLでは、日本オラクルでも実績のないPotageをパートナーとして選定頂きました。非常に嬉しいサプライズだったのですが、何が決め手となったのでしょうか。

明石:他のベンダーさんなどとも比較検討したのですが、決め手は3つありました。

 1つめは、Potageさんの「多様性のとらえ方」です。特に、EQアセスメントを活用して、個々のパーソナリティの凸凹を可視化してから入れるというオプションを提案頂いたのが魅力でした。

 2つめが「コミュニティ」です。ネットワーキングを促進するにあたって、コミュニティの専門家でもあるPotageさんのコミュニティづくりに関する知見が重要でした。

 これからは、世の中で主流になっている「ぐいぐい引っ張る」リーダーではなく、多様な人達の合意形成をはかっていく「ファシリテーション型」のリーダーが求められると考えています。それは、女性社員の方々も実行しやすいスタイルだと思っていて、その考え方が合致しそうというのが期待としてありました。

 3つめは、あずさんとお話した際に、いちばん「一緒に創っていける」パートナーだと感じたことです。Potageさんは、ノウハウを持ちつつも一緒に議論しながら、何を実行するのがベストなのかを考えて下さいます。そのスタイルを見たときに、フレキシブルにこのプログラムづくりに伴走いただけると感じられたのが決め手でした。

明石真理恵さん(日本オラクル株式会社 人事本部)

河原:実際に、このプログラムは、(明石)真理恵さん、(一藤)タカさん、そして河原(あず)の3人の議論を軸としながら、試行錯誤を繰り返して形にしていきました。どのようなことをその過程で感じていましたか?

明石:そもそも私は今までの経歴上「研修の企画慣れ」をしていないところがあるのですが、「こういう風に受講している方々に刺激を与えるとこうやって返ってくる」という想定をして、細かく調整していくというプログラムの創り方は、今までの私の仕事の中では体験できないものでした。

 あずさんはもちろん、タカさんも人事の経験が長く、外部で数多く研修やワークショップを受けているので、その知見から学ぶところも多かったです。

 特に、1on1コミュニケーションのつくり方やフィードバックの仕方、内省の促し方、コーチングやメンタリングのやり方については、受講生のみなさんに提供をしながら、私自身の学びもかなりありました。

河原:なるほど。ちなみに進めていく中で、プログラム前半は比較的淡々とデリバリーしていたのですが、後半になるにつれて加速していく印象がありました。段々このチームの議論が白熱していく中で起きたわけですが、その変化については、どのようにとらえていますか?

明石:後半は、女性リーダーの皆さんもチームを組んで取り組むようになり、課題も多く出るようになって、だいぶ変化を感じました。ただ、かなり思考する時間をつくったり、発散する方向に向かったりしたので、後半の落とし方については、未だに悩みながらつくっていますよね(笑)。やはり女性リーダーたちの現業に生きるものになるように締めていきたいので、そのバランスについてはギリギリまで粘りながら決められたらと思います。

河原:そうですよね。たぶん、このプログラムのありようって、他社の女性リーダーシップ研修ではあまり見られないはずですし、すごくユニークなものになっているから、説明がないと戸惑う参加者の方もいらっしゃいますよね。それはあえてそうしている部分も当然あるわけですが、そのユニークさはどこから生まれていると改めて感じますか?

一藤隆弘(以下、一藤):このプログラムは実は「D&I(Diversity & Inclusion)」や「女性活躍」については一切うたっていないんですね。もちろん、社内向けにD&Iという概念を持ち出しているし、少なくとも形式的には「女性のマネジメントを増やすためのプログラム」なのですが「それは会社の都合でしかない」と思っているので、デリバリーするにあたっては一切その考え方を参加者に対して押し付けていないのが特徴です。だからこそ、プログラムのコンテンツとD&Iのつなぎこみについては、面白さを感じています。

 そういう考え方をこの3人のチームにも伝えていった結果「結果は問わない、プロセスを追究する」という考え方が定着したし、それが変化を促したのではないでしょうか。その辺は、プログラム運営をするにあたって、ずっと意識していました。

一藤隆弘さん(日本オラクル株式会社執行役員 人事本部長)

「このプログラムを通じて、会社を変えたいと本気で思っていました」

明石:マネージャー志望じゃない女性リーダーも参加対象に加えたのも、他の女性リーダーシッププログラムには見られないポイントでしたね。人のマネジメントをしなくても、リーダーシップの発揮の方法はあると定義して提供したことが、このプログラムのユニークなところです。

 もっとも、特に内省をうながしたプログラム前半は「何のためにやっているんだろう?」と思っていた方もいました。マネジメントに直につながるようなインプットがほしいという声も一部にはありました。けどターゲットを広げたからこそ、多くの人が「受けてみてよかったな」と感じられるものになったと思います。

河原:「受けてよかった」と参加者が思えた大きな理由の1つが「ネットワーキング」つまり、社内の縦横斜めのつながりを形成できたことだと感じています。これについては、どんな意識でデリバリーされていますか?

明石:今回は、12人のマネージャーに、女性リーダーのメンターになって頂き、メンター/メンティーの関係性を軸にしたネットワーキングをデザインしました。実はこれが肝で、プログラムのコンテンツ自体は「大事だけど大事じゃない」と思いながら、進めていました。

 今までは自分のラインの上長としか話していなかった女性リーダーたちが、メンターとのコミュニケーションを通じて「マネージャーもそれぞれモヤモヤを抱えつつ前向きに取り組んでいるんだ」と理解できたのが大きいかなと思うんです。

 特に女性リーダーは、ライフイベントとキャリアのかかわりが強い傾向がどうしてもあって、色々な悩みを抱えがちです。そんな彼女たちのマネージャー幻想が打ち砕かれて「完璧な”できる人”にならなくてもマネージャーはできる。もしマネージャーになってと言われたら、やってみてもいいかな」という気持ちになれたことは大きかったと思います。メンターがメンティーである彼女たちとのコミュニケーションを通じて、自分の弱みや、自分も試行錯誤でやっているのだと伝え続けることで、女性リーダーたちも「そうなんだ!」と実感できたのではないでしょうか。

河原:確かに。女性リーダーのみなさんのマネジメント感が変化していった実感はあって、その目論見はすごくハマったなと感じています。結果として、プログラム参加のモチベーションも上昇していった印象があります。

明石:プログラムが始まる前は「女性向けプログラム」であることに対するモヤモヤがあったと多くの参加者から聞いていました。けど今は、このモヤモヤは女性参加者の中ではほぼ解消していて「最初は抵抗あったけど、来年も女性対象でやってほしい」という声が多くあがっているんですね。

 男性にも参加してほしいという意見もありますが「女性だけだからこそ突っ込んだ話をしてモヤモヤを伝えられた」という声はもっとたくさんあるんです。もちろん男性が8割を占めている職場なので、現場の状況とは違う部分はありますが、最初の心理的な壁を取り払って、フォーミング……つまり構えたコミュニケーションばかりの状況から、自分の本音を言い合える「ストーミング」の状況に少し近づけられた結果だと捉えています。

一藤:そもそもの話をすると、このプログラムを通じて「会社を変えたい」と私や真理恵さんは真面目に思っていました。会社のOSを変えたいと思っていたときに、ちょっとした小手先のテクニックや知識ではなくて、生き方や人との接し方など、もっと本質的なところを伝えていければと思っていました。

 あずさんとの話合いの中で、私たちの中でも徐々にその気持ちが強くなっていったし、実際のプログラムの方向性もより本質的な方に向かっていきました。その変化を、参加者である女性リーダーの方々は、とても柔軟に受け入れた印象がありますし、OS、つまり考え方のベースの部分は変わってきているのかなと思います。

 一方で、メンターとなるマネージャー参加者にどう関与してもらうかは、個人差もあって難しさを感じています。ただ、メンティーである女性リーダーたちからすると、多忙なメンター側もプログラムに巻き込まれて、時間を使って取り組んでいるという事実は、私たちの本気度を伝える上で、メッセージとなって伝わっていたと思うんです。メンター向けのプログラムも並行して、試行錯誤しながらやってきたわけですが、まだまだ改善できそうです。

明石:私も同様の課題を感じていますが、一方でマネージャー参加者からは「日本オラクルのリーダーとしての悩みをメンティーとコミュニケーションとる過程で表現できたことが新鮮だった」というフィードバックもありました。今のマネージャーは、サービスの提供もできる、人のマネジメントもできる、いわばスーパーマンとしての立ち位置を築いているので、通常だと女性リーダーからみても遠い存在なんです。自分の弱みを見せていくことはメンティーの心を開くことにもつながってきますし、そういう場を提供していく意味はあると感じています。

「Potageはノウハウを惜しみなく出してくれるディスカッションパートナー」

河原:プログラムの後半では「心理的安全性」についてかなり踏み込んだ議論をしながら、コンテンツをデリバリーしていきました。その流れが、ますますこのプログラムを独特なものに変化させていった印象があります。どのような動機で進められていたのでしょうか。

明石:特にプログラム後半は、クライアントである私たち、特にタカさんが素案を持ち込んで、あずさんにぶつけつつ、ゼロベースで話合うというかなり特殊なやり方で進めました。この進め方は、私たち自身の心理的安全性がなければ実現できませんでしたよね。

 私はコンサル時代から、たたきをもってディスカッションして進めるスタイルで仕事をしていたのもあって、自分の中で落とし込まれきってなくても、感じたことを「それってどうなんですか?」と率直に口に出すようにしていました。このチームもそれが許される環境で、かなり腹落ちして進められました。

一藤:そもそも私は、リーダーシップは関係性なので、他者との関係性の中で自分がどう立ち振る舞うかが重要だと思っています。そのため、関係性とは何かの本質を、このプログラムの場で参加者みんなで考えることが、結果的にリーダーシップにつながると考えて、ちょうど同時期に講座を受講していた楽天大学学長の仲山進也さんとファシリテーターの長尾彰さんが提供するチームビルディングプログラムの型や視点も使わせてもらいながら、3人で話合いながら叩いていくスタイルに変えていきました。

河原:これは通常の研修ベンダーではできないプロセスだと思います。実際やってみての感触はいかがでしたか。

一藤:前半の個々人のビジョン中心のコンテンツを踏まえてチームビルディングに移行したわけですが、この組み合わせは良かったとおもいます。「関係性をベースにして働く」ということに関して、感性がある方が多かったのが要因かもしれません。

 また、女性リーダー向けのプログラムの進行を、あずさんのフルサポートを得ながら、真理恵さんがやったことが大きかったですね。社内の人が自分ごとでやることの良さが出て、結果、いい方向にむいたと思っています。

明石:本当は、自分が知識を提供する場では、10を理解してから1を出していたいタイプなので、準備不足の感覚が半端なくて、モヤモヤしながらやっていた部分もあったんです。ただ今年、自分が試行錯誤しながらデリバリーしたからこそ、女性リーダーのみんなのモヤモヤが理解できた気がして、そこがよかったなと思います。一緒に悩んで実行したというプロセスが参加者の皆さんの共感を呼んだ印象もありますし、結果、その時々で最善のものをぶつけられたのではないかと感じています。

一藤:真理恵さんは、自分が進行するにあたって、これ以上ないくらいに誠実に考えてデリバリーされていたと思うんですね。「自分が今できていないことをできようとする」のは、簡単なようで難しいことじゃないですか。やっぱり、学ぶとか受けるのと、実際にやってみるのとでは、全然違うというのが、身を持って分かった気がするんですよ。

 だから今回の参加者の中から今後、運営側に参加する人が出てきたら、すごく強いパワーになっていくかなと思っています。多くの社内研修は「外部講師」と「社内の事務局」の構図になりがちです。でもこのプログラムでは、あずさん、真理恵さん、私が一体になって運営をするなかで、熱量が上がっていきました。

 そういうメンバーと一緒に考えて、毎年コンテンツを変えていくのもありかなのかなと思っています。まさに私たちチームがやった議論に、新しくマネージャーになった経験者が飛び込んでいくと、面白い変化が起きるのではないでしょうか。

河原:確かに、興味深いチャレンジになりそうです。本当に数えきれないくらいコミュニケーションをして一緒にプログラムを創ってきました。その過程を振り返ってきましたが、最後に、僕から言うと手前味噌なので(笑)Potageと組んだ意義を、お伝えいただけると嬉しいです。

明石:最初に複数のベンダーを比較したときに、他の会社だとフレームワークが決まっていて「この通りにやる」となるか「まったくのゼロベース」からつくるか、そのどちらかでした。その点、Potageさんはすごくバランスがとれていて、素材やフレームをある程度持ちながらも、すごく柔軟に議論に乗って下さる存在で、その結果、私たちがやりたいことがかたちになっていったと感じています。

一藤:あずさんの場合、視点は一貫して提供してくれるけど「こうやりましょう」と強く推すのではなくて「一緒につくりましょう」という態度をあえて徹底されていていますよね。結果、プログラムの設計やデリバリーのノウハウが日本オラクルに蓄積していくわけで、すごいことだと感じています。Potageさんから様々な素材や資料やノウハウを惜しみなく提供いただいて、ここまで出すのか!?とすごく驚いたくらいです。それくらい、一貫して私たちのために伴走いただいていると思います。

 元々、あずさんと私は、あずさんのファシリテーション講座を受講したところから付き合いがはじまりました。そのため私にとっては「ファシリテーションの先生」だったんですが、今はすっかり「ディスカッションパートナー」ですよね。「いやぁ、2人の意見、全然合いませんねぇ(笑)」みたいなことを言いあいながら進めるのは面白いです。その間、あずさんの立ち振る舞いを観察しているのですが、実に面白いスタイルですよね(笑)。

河原:ほめ言葉だと受け取っておきます(笑)。けど実際、あまり世の中に存在しないスタイルだと自覚していますし、そこが実績につながって、しっかり評価されたのであればとても光栄です。どうもありがとうございました。

※本記事は公開時の内容に基づいています

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