夕陽と月と風
仕事でヘトヘトになって、
同僚に言われたことに傷つきもして、
家に帰る。
帰ったらゆっくりできるわけでも、
今日あった話を「そりゃー大変だったね」と
誰かが聞いてくれるわけでもない。
大急ぎで子どもにご飯をつくって食べさせ、
習い事の送迎、残った家事が待っている。
不登校で8割方機嫌の悪い娘が、
やっと帰ってきた母親に
「疲れて帰って来ないで。こっちがしんどくなる。」と
容赦のない言葉を掛けてくる。
気持ちを強く持っていなければ、
「そんなこと言わないでよー。
くたくたなんだよー。」
と笑顔で返し、
娘をくすぐりながら冗談に変えて、
「今日は元気だった?」とは聞けない。
晩ご飯の後にティラミスが食べたいと言い、
コンビニを5軒回ってもなくて、
スーパーでチョコケーキを買って
これで許してと言っても、
「だったらいらない」と言われて、
ちょっとさすがに泣いてもいいよね。
夜9時前なんだぜ。
仕事は1日の内の1回戦。
帰った家は2回戦。
そんな気持ち。
大体負ける。
でも、一日終わったらそれでいい。
家へと車を走らせながら、
今日はどんなご機嫌だろう。
とちょっとへこむ。
楽しいYouTubeや
うまくいったゲームがあればいいな。
生理が順調で機嫌がいい日でありますように。
天気のいい日は、帰りながら夕焼けが見える。
大きな夕焼け。
駐車場に着いて、足を止めて。
夕陽だけが
私の日々頑張ったことを見ていてくれて、
知っていてくれる。
お疲れ様。
今日もよく頑張ったね。
もうちょっとあるね。
もう少しで今日も終わるからね。
頑張ってね。
そう言ってくれる夕陽に、
何度も何度も励まされた。
さあ、2回戦が始まる。
気持ちをもう一度作って家に入る。
夜、すべてが終わって
寝る前に外に出て、月を見上げる。
月はただただそこにいてくれる。
なんにもいわないけど、
そこにいてくれる、輝く月を見ている。
風が吹いて、頭をよしよししてくれる。
頑張ったね。今日も乗り切ったね。
自分自身にそう言って。
今日も見守ってくれて、
頑張らせてくれて、ありがとう。
自然は偉大。