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二極化のなかで

選挙が終わって、何人かの友達とメールやメッセージで話した。
私も彼らも、特定の政党のサポーターではない。
ただ「これこれこういう世の中にはなってほしくない」という「キライ」の部分が一致している。
特別なことではなくて「戦争をする国になってほしくない」とか「これ以上税金や保険料や物価に上がってほしくない」とかの単純なことである。

そのうちのひとりは、父親から受け継いだ小さな工場を経営している。
経営権と一緒に受け継いだ腕のいいベテランがどんどん高齢となり引退していく。
空いたポジションは、容易には埋まらない。
いる人だけで回していく。
一人当たりの負荷が大きくなる。
時短どころではない。
しかし、ずっと受注し続けているお得意さんを切れば、もう次の注文はないかもしれないと思うと、社員に無理をさせるのは承知で請けずにいられない。
残業代を払ってでも、「仕事がないよりはマシ」と下請の経営者は考える。

こういう中小企業は圧倒的な人手不足という。
優秀な人は、大きくて待遇のいいところに就職するし、とりあえずと思ってパートやアルバイト募集を試みても人が来ない。
時給は、最低賃金に近い。

政府は前政権のときから、「賃上げ、賃上げ」と叫んでいる。
一部の大企業でそれが実現できたことを、あたかも自分の手柄のようにアピールしている。
国会においても、先日の選挙演説でも、これについては野党の主張も一致している。
賃上げと時短。

「でもさ、うちみたいなところ、最低賃金が1500円とか決められたら、もうやっていけないよ」と彼は言う。
人生90年とか100年とか言われて、平均寿命は長くなっても、50代、60代のうちに、工場を畳まなければならなくなった同業者も多いという。

二極化が進む世の中の、いったいどちら側を政治家は見ているのだろう。

国会議員の年収は平均で2500万円くらい。
前の前の総理大臣は4500万円と聞いた。
この人は、首相時代からそう覇気があったわけではないが、このところすっかり老いぼれている。
会期中は寝ているし、寝ていない時でも目がうつろ。
歩いているときによろけたりしている。
病気なのではないかと、たびごとにネットでつぶやかれている。

しかし、一昨日の衆院選にも立候補して当選した。
地元の有権者はこの人を当選させて、何をさせたいのだろうか。
(本当だとすれば)年に4500万円もらって、それに見合うどんな働きができるのだろうか。

子供の学費にも家のローンにも親の介護にも自分たちの老後にも、経済的には何の不安もない人たちの心に、選挙区で聞き取った声はどれほど残ったものか。
「政権交代してもしなくても、世の中のいまの流れは変わらないと思う」と友人はチャットで返信してきた。
うん。

政権交代はないと思う。
そもそも選挙協力もできなかったのだから、首班指名に他の野党の党首の名を書くわけがない。
野党共闘に関していざこざ(行き違い?)もあったのだし、そもそも立憲の中でも野田さんの名を書かない人がいるのではないかとすら私は疑っている。
まあ、それは石破自民党も同じかもしれないけど、いまの自民党で反旗を翻すような気骨のある議員もいないと思われる。

総裁になる前は、党内野党と呼ばれた石破さんは、なった途端の手のひら返しですっかり人気を落とした。
でも、党の言うことを聞いて今回の選挙に臨んだ結果、大幅な議席減になったのだから、「あなたたちの言うとおりにやったらこうなった」を盾にして、もう言うことをきかなくしたらどうなんだろう。
前のように自分色を出したら?

いやいや、そんなことをしたら、党内で孤立してすぐに降ろされてしまう。
そして、また前の総裁選に出たような人たちが出てきて、万が一総理になったら、それはそれで恐ろしい。
戦争や軍事化大好きな人とか、マイナ保険証絶対の人とか、しゃべればしゃべるほど無知が露見してしまう世襲の人とか。

せっかく野党の議席が増えたのに、どっちへ転んでも、いい目が見つからないのよなぁ。

今回の選挙で躍進した「野党のフリをしているけど野党じゃない党」に、自民と立憲の両方が秋波を送っているらしい。
連立に入れば、どちらも裏切り者になってしまい、次の参院選で支持を失うからそれはせずに、部分連合とする方向と伝えられている。

え?
そんなのずっとそうだったじゃん。
いまさら、騒ぎ立てて確認するほどのことじゃない。
悪法成立や改悪、自公の予算案に、ことごとく賛成してきたじゃん。
でも、選挙になってからそういう気配はうまく隠してきたよね。
選挙期間、真の野党と違ってバリバリの改憲派であり原発推進派であることは、アピールしなかったよね。
私はこの人の憲法審査会での発言に恐怖を感じていた。
衆議院の憲法審査会は恐ろしい。

せめて。
これまでみたいに数の暴力でもってろくな審議もせずに法案や予算案をするっと通すことはやめてほしい。
かの党にも、野党に見せかけて票を集めたのだから、これまでのような与党の強行採決は阻んでもらいたい。

そういえば、自民党と社会党(と新党さきがけ)が連立していた時代もあったのよなぁ。
長く生きてきたなぁ。(そうでもないけど)

わずかばかりの定期預金が満期になるので、銀行に相談に行ってきた。
利率のいい外貨預金を勧められたけれど、アメリカの大統領選もあるし、日本の政治もいまいち不安定なので、とりあえず見送ることにした。
もともとお金を転がすことに、あんまり肯定的ではない。
お金は働いて得るものと思っている。
だから、いま働いてない私にお金がないのは当たり前のこと。

友人たちに「私はいま働いてない」と言ったら、ひとしきり驚いたあと、もれなく「羨ましい」と返された。


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風待ち
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