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主婦の定年制導入について
さっきまで窓ガラスを叩いていた雨は止んだが、暴風は収まらない。
電車遅延のお知らせがたびたびスマホに届く。
会社が休みで助かった。
彼岸だが、墓参はない。
去年の4月に墓じまいをした。
象徴としての共同の永年供養墓には、秋以来出向いていない。
掌に収まるほどの小さな骨壺に4柱分を分骨して、仏壇の前に置いているから、そこに毎晩手を合わせている。
そこが墓といえば墓。
ぶっちゃけ、ラクである。
このところ、土日だけ請けている副業が立て込んでいて平日まで割り込み、食事を用意するのも食べるのも片付けるのも面倒だった。
冷凍ものをチンしたり、久しぶりにカップラーメンにも手をつけた。
ロッテリアの絶品チーズバーガーは私のお気に入りで、全バーガーの中でベストだと思っているが、私にすればハンバーガーに500円以上も出すのは、納得しがたい。
しかし、たまにどうしても食べたくなって、葛藤を制して購入する。
1500円以上だと配達料が無料になるとあったので、2人前頼んで、昼も夜も食べた。
26年間、1年のうち少なくとも300日は調理していたが、一人になって、しなくてもかまわない日はとことんしなくなった。
しない日が続くと、どんどんしたくなくなってしまう。
いったんどこかでするペースに戻ると、さほど苦でもなくなるのは、不思議なものだ。
母は、父の死をきっかけにぱったり料理をしなくなった。
「もう一生分のおさんどんはしたから」というのが理由。
私も離婚を機に、そういう気持ちになっている。
もう一生分の食事の用意はした。
一生分の介護もしたと思う。
なんといっても6人分だもの。
友人の中には、自分の介護経験を活かして、両親の死後に他人様をケアする仕事に就いた人もいるが、すごいなぁと感心する。
家族であれ、仕事であれ、もう、誰も看たくない。
なんちゃって選挙公約のひとつは「一代没収制」で、もうひとつは「主婦定年制」の導入だ。
少女と呼ばれる頃から、ずっと婦人科にかかってきた。
入院も手術もした。
生理の前も途中も動けないほどひどかった。
人より早く更年期障害が来て、人より長く重い症状と闘った。
そんなときでも、ご飯の支度はしなくてはならない。
会社だけでなく、実家の家事や介護を終えて戻った自宅では、また家事がある。
仕事が終わったわけではなく、次の職場になるだけだよなとずっと感じていた。
だから思った。
主婦にも定年があればいいのに。
いや、妻にも。(ということは、同時に、夫にも、ということになる。)
55歳か60歳くらいで、夫婦職の定年退職があるというのはどうだろう。
ともに家庭という職場で、配偶者として担ってきた職が、一旦解かれる。
ふたりで築いてきた資産が試算され、可能な形で清算される。
そして、それ以降も、同じ配偶者とそのままの家庭生活を続行したいという思いや事情が一致した人たちは、同じ相手と再婚するのだ。
この相手ではこりごりと思う人や、主婦業、妻業自体から離れたいと思う女性もいると思う。
定年が迫り、それでもなお同じ家庭という職場に残留したいという思いがあれば、互いに相手への気持ちも対応も違ってくるだろう。
これまでのやりかたを見直す機会にもなろう。
あたりまえだと思っていたことが、生涯あたりまえではないのだという自覚を促すきっかけになるはずだ。
そして、自分からはその一歩が踏み出せない多くの主婦業、妻業従事者の何割かを救う手立てになると思う。
ここでいったん資産の清算をすれば、とりあえずのお金がないからという理由で忍耐を続け、心身を病む人が減る。
しかし、この制度は妄想の中にだけ存在しているので、私は離婚した。
母が「もう一生分やった」と言ったのは80歳を超えてから。
私はずいぶんと早い。
でも、終わりの見えない家事や介護は、実働以上に精神的な負荷がかかる。
私、いつまでやればいいの?って。
熟年離婚という言葉が使われだしてだいぶ経つけれど、婚姻関係を解消するのではなく家事労働の定年という考えがもうすこし普及すればいいのにと思っている。
そういえば「卒婚」という言葉は一時的だったね。
私はあんまり好きじゃなかった。
芸能人が引退したりグループを解散や脱退するときに「卒業します」と言っているのを聞くと、なんだか「ぞぞっ」とする違和感がある。
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