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ティッシュ捨てるか捨てないか

先月下旬から、花粉症の薬を飲んでいる。
症状が出る前に飲むのが良いとされているが、毎年、切羽詰まってから慌てて飲む始末。
今年はようやく守れた。

花粉症歴は15年くらい。
生涯無縁だと思っていたのに、中年になってから、何の前触れもなく突然発症した。

私の場合、鼻水ダラダラということはそんなにない。
母と兄にインフルや風邪をうつさないよう、コロナ前から外出時にはマスクをすることが習慣になっていた効果もあったかもしれない。

しかし、これはこれで問題がある。
一度に大量に出て、思い切りかんでスッキリとはならず、ほんの少しティッシュが濡れるだけ。
そして、ものの5分も経たないうちに、またむずむずしてくる。
どうせ大した量は出ないのだからとほおっておくと、自覚なしにツーと垂れてきて慌てる。
この季節はティッシュの消費量が多くなる。

子供時代は、ボックスティッシュなどはなく、「鼻紙」だった。
たぶんよその家ではトイレに使っていたと思う。
肌理の粗い、薄茶色のざらざらの紙だ。
うちのトイレでは、さらに粗悪な「便所紙」というもので、それが買えないときは、古新聞を切ったものを揉んで使った。

しかし、その頃、硬さや肌荒れなどを気にした記憶はない。
乾燥した冬に肌が荒れるのは、あまりに当たり前で、いちいち騒ぐほどのことはなかったのかもしれない。

フランス暮らしと、テレビなどで見知った欧米の生活などから、いまの日本と比較して印象的なのは2点。
一つは、台所で洗った食器の洗剤を流水で流さないことで、これは前に書いている。

もうひとつは、ティッシュ問題。
あくまでも私の印象だが、ヨーロッパの人、そして欧米暮らしを経て日本に帰国した人は、ティッシュを1回使用したぐらいでは捨てない率が高いような気がする。
端っこだけ使ったティッシュを、室内ではテーブルの隅に置き、屋外ではポケットに入れる。
まあ、よほどびちゃびちゃだったら捨てるだろうけど、ちょっと水が沁みたくらいで、濡れていない部分が結構あると、次にそこを使ってから捨てようと思うのではないか。

何年か前、欧米暮らしが長い友人を、帰国時に食事に招待した。
キッチンに立ったままで、相手と話だけをする。

26年連れ添った夫とも、一緒に食べたことは、鍋物とかを除いてはほとんどない。
夫の食事の前後のどこかで簡単な「賄い食」を取っていた。
本当は一緒に食べたほうがいいことはわかっているけれど、調理と給仕の合間に自分も食事をして立ったり座ったりを繰り返すのはあわただしくて、相手も自分もゆっくり食べられないし、話も中途になる気がして。
話をしながら、調理と給仕に専念したほうがむしろラクなのだ。

食後のアルコール、または珈琲の段になって、ようやく落ち着いて一緒に座れる。
だから食事が終わって、簡単なつまみでだらだらとしゃべって飲む時間が一番好き。

食事中は、相手の器が空きそうな頃に、次の料理を出すようにしていたが、その友人は、たまたま風邪気味で、すこしだけ鼻水が出ていた。
それをティッシュで拭って、テーブルに置いてあった。
うーん。

小さなごみ箱を、食卓寄りに寄せて、ここに捨ててと促すが、相手は捨てずにポケットに入れてしまった。
気づくと、次の鼻水をそれでかんで、また食卓に置いてある。

うーん。
私の中で葛藤が絶えない。
自分の家ならまだわかる。
昔、祖母もそうだった。
鼻をかんだ紙を着物の懐か袂か、もしくは割烹着のポケットに入れていた。
母はそれを見て、汚いと蔑んでいた。
まあ、姑との仲は良くなかったからもあって。

鼻水で濡れたティッシュを食卓に置くのはどうかと思う。
でも、ちょっと脂でべたついた口元をぬぐっただけなら?
布ナプキンなら、はしっこで拭って、まさか捨てたりはしない。

では、人に見られないようにそおっと使用済みのティッシュをポケットに入れる?
こっそり膝の上に置けばいいかしら。
置いたのを忘れてうっかり立ち上がって、落ちたのに気付かず、家人が踏んづけたりしたら「ぎょっ」となるよねぇ。
それとも、自分ひとりのときは捨てないけど、他人様のいるところでは毎回捨てる?
自分だけしかいないときも捨てる?

鼻水ではなく、ちょっとお水が垂れちゃったのを拭いただけなら、テーブルに置いてあってもいい?
でも、ほかの人には、それがお水か鼻水かわからないよね。

欧米のコロナ感染が大爆発したとき、彼らが鼻をかんだティッシュを捨てないでポケットに入れる習慣のせいではないか、というのがあって、おお!そうかも、と膝を打った。(真偽は不明)

BBCのドラマ「名探偵ポアロ」では、自分のハンカチが鼻水でびちゃびちゃになってしまったヘイスティングスが、ポアロに「ハンカチ貸してくれませんか」とお願いする場面がある。
このとき、ヘイスティングスは、もちろんそのハンカチを捨てたりせず、ポケットにしまう。
えっ、ポケットの中に鼻水が染み出したりしないの?
小説やドラマの時代設定では、まだポケットティッシュなど出現していないのだろうが。

今年になって、はたと思い出した。
昔、母が広告チラシを折ってゴミ箱を作っていたこと。
検索して、私も真似した。
新聞購読はしていないので、終わったカレンダーの紙を使用。
裏白の紙を、とりあえず取っておくのは習慣というか性分。
前は、ブックカバーを折ったりしていた。

一見、ごみ箱に見えないそれを脇に置いて、テーブルに垂れたほんの一滴のしずくを拭き取ったティッシュを、とりあえずそこに入れる。
蓋付きの保温マグカップを使っているので、熱々のときはたびたび蓋から水蒸気のしずくが落ちる。
台拭きを常にテーブルに置くのは、なんとなく苦手で、ついティッシュで拭き取ってしまう。

そのほか、ラグの上に発見した1本の抜け毛や、どこから出現したかわからない糸くず。
いちいち、立ち上がってゴミ箱のところまでいくのは面倒だなぁと思えるほどのもの。
かといって、ちゃんとしたゴミ箱の数を増やすとゴミ出しのときの回収の手間が増える。

捨てたような、置いたような、仮のゴミから本格的なゴミになる手前のものをおくのにちょうどいい。
鼻をかんだティッシュは、ゴミであることは間違いがないのだけれど、ほんのちょっと端っこが濡れただけのものは、これで対応しようと思っている。
見苦しく感じてきたらそれごと捨てる。
ケチ臭いのではなく、エコと思うことにする。


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風待ち
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