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【 詞 と 詩 】 臨界
臨界
苛烈さを増す窓辺から目を背け
けたたましい駆動音には耳を塞ぐ
かびの台が僕を冷ましていく代わりに
室外機を通した熱が新たに
次亜塩素酸水まみれのソフビをくわえた赤子と比べたら
少しの言葉を知って次なる神へと成り代わる
町へ出なくなって久しい
肌は季節の輪郭を忘れていく
お気楽な幸せを知ってしまったが最後
つれない本物になんて戻れない
喉が渇くのは太陽のせいじゃない
冷たい風の吹くこの部屋のせいだよ
本当に?
蝉時雨が聞こえないのはAirPods Proのせいじゃない
誰にも邪魔されたくないと願った君自身のせいだよ
人生に遅すぎることはない
吐き気のするきれいごと
何もかもが頭打ちの楽園で
これ以上何を望む
いつ無くしたのかも分からない忘れ物を
探しにいくのはバカげている
それでもあと少しだけ
その言葉を信じたいというのなら
迎えに行こう
――――――――――
明日の叙景、ボーカルの布です。
聴く「詞」と読む「詩」という二つの側面を持つ歌詞についてゆるく書いていきます。
前回ネタバレや解説はしないと言いましたが、やはり記事にする上では、どうしても解説的な要素は避けられないなと思い直しました。
というわけで、今回はちょっとだけネタバラシします。
では、2nd Album「アイランド」より「臨界」について。
この歌詞はギターの等力からお題をもらって書きました。
以下、そのやり取り↓
等力「次のアルバムは夏をテーマにする」
布「おけまる」
等力「デモのイメージは『冷房の利いた暗い部屋でゲームやっている』って感じ」
布「なるほど」
等力「最近思うのが、AirPods Proをつけていると蝉時雨が聞こえなくなって、マジで夏を返してくれって思うんだよね」
布(……AirPods Proって何だろう?)←話がほとんど入らなかった人。
ググってノイズキャンセリングイヤホンという存在をはじめて知る。
布「イヤホン外せばいいんじゃない?」
等力「いや、そうなんだけど違うんだよ。快適すぎて外せないんだよ」
布「???」
という感じで今作の歌詞はできました。
固有名詞(AirPods Pro)を使うということは、時代と共に齢を取る歌詞にするということ。
最初は抵抗がありましたが、今ではこの曲で踏み切ってよかったと思っています。自分の歌詞と一緒に齢を取るという楽しみを得たのですから。
では、ここから少しだけ思想面について触れていきます。
「便利になった代わりに、失われたものがあって寂しい。でも、その便利さも捨てられない」という葛藤を自覚することで、自分の弱さや文明を発展させてきた人々の思いを見つめ直すことができるのかもしれません。
冷房をつけて夏を外に追いやっていると「子供の頃に感じた夏の暑さはもう味わえないな」と思ったり「この地球の未来を使い潰そうとしているのではないか?」と思ってもみたりもします。
でも何かをするわけでもなく、便利な日常を受け入れてしまうんですよね。幸せになりたいし、楽して生きていたい。
そんな自分の弱さと文明を嫌悪しつつも、技術と社会システムが発展したおかげで、遠い国の人たちに作品を届けられていることも自覚しているし、衛生的で健康的な生活が送れるありがたさを噛みしめているのもまた事実。
「臨界」ひいては「アイランド」で描いた「葛藤」の物語は「許し」という形でひとまずのエンディングを迎えます。
ここら辺は次回以降に掘り下げるかもしれません。
少し唐突ですが、ここでパソコン音楽クラブの「Panorama」のMVを貼ります。
このMVは自分たちの気持ちを代弁してくれているかのような内容で(そう解釈しました)好きなMV第一位です。
ちなみに第二位は米津玄師の「KICK BACK」のMV。
自然と文明、理性と欲望、どちらも諦めなくていい。
恣意的であることを自覚した上でのエール。
このMVからはそれを感じました。
次にタイトル「臨界」について。
いまだに誰もが納得する社会システムも倫理も法律も生み出されていないにも関わらず、以前の僕は「割と今の世界はクリーンで平和だ」と勘違いしていました。もっとざっくり言えば「今の人類の在り方が正解なんじゃないか?これで完成でいいんじゃないか?」とさえおバカにも思っていたのです。
それこそウクライナの戦争が起こる前から、世界中では争いが無くなっていなかったのにも関わらず「人類は戦争をしなくなった」と勝手に思っていたように。
不満もあるけれど、わざわざ現状を変えるほどでもない。そこそこの世界でいいじゃないか。
そう思えるのは僕が恵まれているからにすぎないんですよね。
この「恵まれている」ということに無自覚だと、自分の中に思考停止させる楽園が築かれてしまうのだと思います。
そして、いろんな間違いに気付いたときにはすでに手遅れになっている。
(あるいは間違いに一生気付かないまま終わりを迎えるだなんて、幸せで最悪なこともあるかもしれない)
「臨界」というタイトルはそんな未来を批判するためにつけました。
ちなみに英題の"Heavenward"はアニメ「TEXHNOLYZE(テクノライズ)」の19話サブタイトルから拝借しています。
lainに根強い人気があるのだからテクノライズも再評価されてほしいな……。
最後に、聴く「詞」ということについて書いて終わりにします。
歌詞というものは歌に乗ることが前提とされています。
ということであれば、言葉の数と語感は何でもいいわけではありません。
楽器の意図を汲み取った音楽的に意味のある流れにする必要があります。
繰り返しのAメロやサビなどがある場合は、韻を踏んだり、言葉の数を揃えることでリフレインが生じます。
逆に、あえて言葉の流れを崩すことでフックを作り出すこともできますね。
だからボーカルラインと歌詞はボーカルだけではなくバンドメンバー全員で考えていくと、より良いものになると思いますし、一人で作るものではないと考えております。
それでは、次回は「キメラ」について書いてみようと思います。
▫ライブ情報
2024.9.29 (日) 東京Veats Shibuya
2024.10.6 (日) 大阪バナナホール
Imperial Circus Dead Decadence×明日の叙景 2MAN SHOW
『神産む嵌合体と詩葬の彼岸』
チケットフロッグ
https://ticket-frog.com/e/icdd_2409-10
イープラス
https://eplus.jp/sf/word/0000116379
ローチケ
https://l-tike.com/search/?lcd=74086
2024.11.3(日)東京Spotify O-EAST / Spotify O-WEST / Spotify O-nest / Spotify O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / 7th floor
BiKN shibuya 2024
チケットぴあ
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2429459
Oversea
https://ticket.pia.jp/piasp/inbound/biknshibuya24eng.jsp
2024.11.27(水)名古屋鶴舞DAYTRIP
Solo Concert “Island in Full” -extra-
LivePocket
https://t.livepocket.jp/e/daytrip_241127
zaiko
https://vinyljunkie.zaiko.io/item/366577
2024.11.28(木)大阪Yogibo META VALLEY
Namba Culture Terminal 2024 -1st Anniversary-
with OGAHM / OLPHEUS / SheeSawHarm / VISION OF FATIMA / 雲雀
イープラス
https://eplus.jp/sf/word/0000159672
2024.11.30(土)川崎 CLUB CITTA'
MIXED HELL 2024
with PassCode / 花冷え。 / JILUKA / VMO / kokeshi / KANDARIVAS / Launcher No.8 (Opening Act)
イープラス
https://eplus.jp/sf/detail/4187970001-P0030001?P6=001&P1=0402&P59=1