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ひきこもりの先に見えた、自分らしい生き方| Niente 

第3回:光を求めて

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ひきこもりから抜け出すきっかけ

ひきこもりになる前から、私は毎日のように「このままではいけない」と感じていました。それは、うつによる休職や退職を繰り返していたため、経済的な基盤が崩れるのではないかという強い不安があったからです。

実際、私はこれまでほとんど無職の状態になることがなく、常に何かしらの仕事に就いていました。無職になることへの恐怖と、経済的な自立を維持しなければならないというプレッシャーが大きくのしかかっていたのです。

高校を卒業した後、実家の居心地の悪さから上京し、フリーターとして働いていました。無職になることは、実家に戻ることを意味していたため、私は常に働き続けなければならないと感じていました。

さらに、当時は結婚していたため、「夫が無職である」という状況を避けたいという責任感があり、それが一層のプレッシャーとなっていました。結果として、自己嫌悪が強まり、ひきこもりへの一歩を進めることになっていったのです。

支援を受け入れるまでの葛藤

ひきこもり状態になる前、私は再就職を目指し、ハローワークや行政の生活困窮相談、心療内科に通いながら支援を求めていました。しかし、強いうつ状態だったため、再就職しても職場でのパフォーマンスが低く、解雇されることが多くありました。記憶を保持する機能が低下していたため、新しい仕事を覚えられず、「やる気がない」と誤解されることが度々ありました。

何度も再就職に失敗するうちに、「自分はもう普通の仕事には就けないのかもしれない」という不安が募っていきました。この時期に、自分は精神的な障害があるのではないかと考え始めました。後に発達障害が判明しましたが、当時はそのことを知りませんでした。インターネットで「生きづらさで困っている方」という福祉事業の広告を見つけ、体験を申し込むことにしました。

しかし、この体験が逆に支援を拒絶するきっかけとなりました。私はコミュニケーションに難がある人や、強いうつ状態でも働ける場所やその訓練を期待していましたが、現場でのアドバイスは「生活リズムを改善すること」が優先されるというもので、生活リズムが既に整っている私には、違和感を覚える内容でした。

さらに、コミュニケーションスキルを学びたいという希望を伝えると、「素敵だと思った女性がいてもついて行ってはいけない」といった不要なアドバイスをされ、強く落胆しました。さらには、作業時間に「延長コードを拭く」といった単調な作業が繰り返され、就労のための技能習得の感覚が持てなくなり、次第に支援機関から足が遠のいていきました。

小さな成功体験と再接続

支援を受け入れられないことに加え、両親の介護や経済的な問題が悪化する中で、私は次第に自堕落な生活を送り、「もう自分の人生は改善しない」と考えるようになりました。そんな中、YouTubeで見つけた「Dead by Daylight」というホラーゲームが、私にとって大きな転機となりました。

※Dead by Daylight公式リンク

べるくらさんというゲーム実況者が、そのゲームを通じて前向きなメッセージを発信しており、私は彼の言葉に強く影響を受けました。彼の実況は他のプレイヤーを批判せず、常に前向きで、彼のスタイルに憧れるようになりました。また彼自身が、ホームレス体験など様々な困難を体験しており共感できる部分が多くありました。そして、「べるくらさんのようにゲームで上位に入りたい」という目標を立て、真剣に取り組み始めたのです。

最初は上手くいきませんでしたが、ゲームのコミュニティでアドバイスを受けながら少しずつ上達し、ついに上位ランクに到達しました。この成功体験は、私にとってこれまで感じたことのない達成感をもたらし、自信へとつながりました。ネットを通じて応援してくれる人たちに囲まれ、「何かに真剣に取り組めば、応援してくれる人がいる」という感覚を取り戻すことができたのです。

この成功体験をきっかけに、私は他のことにも挑戦するようになりました。動画編集やYouTube配信、さらには園芸、絵画、裁縫、料理など、これまで手を出さなかった分野にも挑戦しました。
そして気づけば、外に出て材料を買いに行くことができるようになっていたのです。このような小さな一歩を積み重ねていく中で、私は再び自信を取り戻し始めました。
※べるくらさんリンク

自助活動への転換点

ある日、ポストに投函されていた市報に「今日も明日も負け犬。」という映画の上映会の案内がありました。現役の女子高生たちが起立性調節障害をテーマに、自らの手で作り上げた映画です。彼女たちは自分たちの生きづらさを映像を通して発信し、人々に勇気を与えていました。
※「今日も明日も負け犬。」リンク

ドキュメント

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上映会の後、彼女たちはスタンディングオベーションで迎えられ、高校生映画コンクールで最優秀賞を受賞し、「全米学生映画祭に参加する」と発表しました。生きづらさを抱える彼女たちが、大きな目標を達成している姿に深く感動し、「自分にも何かできることがあるのではないか」と強く感じました。

映画の上映会場は福岡市のNPO・ボランティアセンター「あすみん」でした。私はその場で団体を設立しようと決意し、あすみんに相談しました。ひきこもりから回復して学んだのは、「やってみたいことがあったら、まず行動すること」の大切さでした。
あすみんでは、NPOやボランティア活動の立ち上げに関する説明会や個別相談が定期的に行われており、時間がある私はすべてに参加しました。そして、2023年4月、あすみんのサポートを受けながら「Niente(ニエンテ)」というひきこもり自助団体を設立しました。

※あすみんリンク

ひとりで設立した背景には、これまでの会社勤めで感じた息苦しさや、組織内での対立を避けたいという思いがありました。団体活動を継続させるには、ひとりで運営することが最適だと考えたのです。

次回予告

次回はいよいよ最終回です。2023年4月に設立した「Niente(ニエンテ)」の活動内容や、ひきこもり自助団体としての役割、そして私が感じる自助活動の意義についてお話します。
第4回「自助活動の意義とこれから 」では、Nienteの理念や活動を通じて、自助活動がどのように私自身や周囲に影響を与えてきたか、そしてこれからの展望についても語ります。同じような経験をしている方々に向けたメッセージもお届けします。ぜひご期待ください!

最終回:自助活動の意義