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ひきこもりの先に見えた、自分らしい生き方| Niente 

第2回:動かない日々の中で

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ひきこもりの始まり

ひきこもりが始まった当初、私はその自覚がありませんでした。「今は少し休んでいるだけ」という感覚で、心は休めませんでした。両親の介護問題は解決せず、悪化するばかり。仕事をしていないことへの経済的不安もあり、安心して休むことができない状況でした。

特に罪悪感が大きかったのは、仕事をしていないことでした。うつ病で解雇されたことで、「もう行かなくていいんだ」と安堵感があったものの、復職後は職場で孤立し、腫れ物扱いされていました。うつによる気力の低下もあって、会社からの信頼を完全に失っていました。

無気力と葛藤の日々

最初は「次の仕事を探さなければ」と焦って、毎日転職サイトを見ていました。しかし、介護転職の失敗が心に残り、就職活動に前向きになれませんでした。「また失敗するのではないか」「両親の介護が解決しない限り、働けないのではないか」と葛藤が続いていました。

何度か面接を受けても働ける気がせず、内定を辞退したり、短期間で解雇されたりすることが続きました。次第に働くことそのものに拒否感が芽生え、家族には「就活しているフリ」をしていました。この嘘が家族との信頼関係を傷つけることになったのです。

その後、「就活のフリ」すらしなくなり、私はベッドにこもり、YouTubeやスマートフォンゲームに没頭する日々が続きました。そんな自分を許せず、自己肯定感はさらに低下していきました。

自分を見つめ直す時間

そんな中、偶然YouTubeで「べるくらさん」というゲーム配信者に出会いました。彼は他のプレイヤーを貶さず、前向きにゲームを楽しんでいる存在でした。彼の配信するホラーゲーム「Dead by Daylight」に夢中になり、私もプレイするようになりました。

※べるくらさんYouTubeリンク(注:ホラーゲームです)

最初はただの「時間つぶし」だったゲームが、いつしか「自分で立てた目標」に変わりました。私はべるくらさんに近づきたい一心で、上達を目指して真剣にプレイするようになり、ゲーム内で応援してくれる人も現れました。数年ぶりに「認められる感覚」を取り戻し、最終的には世界ランカーになることができました。

この経験は大きな自信となり、他の分野にも興味を持つきっかけになりました。ゲームの時間は減り、家族との会話が増えていったのです。

次の一歩を踏み出す

もちろん、「このままではいけない」という感情は常にありましたが、それだけでは変わりませんでした。私を動かしたのは、少しの「興味」や「やってみたい」という前向きな気持ちでした。
ゲームで自分の目標を達成し、自信を取り戻していく中で、もう一つの大きな転機が訪れました。

並行して見ていた園芸ユーチューバー「カーメン君」の動画に影響を受け、園芸を始めたのです。
彼の前向きな言葉に触れ、私もポジティブな行動を積み重ねたいと感じるようになりました。お金がない私は、ホームセンターで安くなった植物を10円ほどで購入し、大切に育てました。

※カーメン君YouTubeリンク

園芸活動は、私の生活に大きな変化をもたらしました。植物の水やりは早朝です。毎日植物に水をやることで生活リズムが整い、健康が戻ってきたのです。何よりも、「誰かのために行動する」という役割が私に戻ってきました。植物は私を必要としてくれているという安心感が、生きる力を与えてくれました。

この活動を通じて、家族との関係も改善されました。ゲームに没頭していた頃とは違い、家族は私を応援してくれるようになり、私も家族の苦しさに目を向けられるようになりました。園芸を通じた穏やかな時間が、家族全体にとっても大きな転換点となりました。

次回予告

次回は、ひきこもりから抜け出し、回復に向かって一歩を踏み出すまでの過程をお話しします。回復のきっかけとなった出来事や、社会との再接続、そして支援を受け入れる際の葛藤など、私にとって重要な転機について描いていきます。

第3回のタイトルは 「光を求めて」 です。どうぞお楽しみに。

第3回:光を求めて→