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銅版画の技法を知った『長谷川潔展』
先日、稲沢市にある稲沢市荻洲記念美術館に『長谷川潔展』を見に行ってきました。
これもすごくナイスタイミングなんですよね。
実はこの画家は最近知ったばかりで・・・。
それもたまたま観ていた「なんでも鑑定団」でw。
「ん?この画家さん誰なんだろう?」
「へえ〜、他の絵も見てみたいなあ、」と思って名前を記憶していたところ、たまたま今回地元で「長谷川潔展」が開催されることを知り、なんてラッキー!と赴きました。
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まず、今回この展覧会で始めて銅版画の技法を詳しく知ることができました。
いろんな展覧会に行くと、
「エッチング」「ドライポイント」「アクアチント」と作品名と一緒に描かれていますが、正直違いが分かっていなかったのですが、今回の会場でとってもわかりやすく説明してあり、恥ずかしながら初めて違いを理解しました。
銅版画には、まず2つの技法があり、
・直接銅板を掘る直刻法(直接法)
・酸による腐蝕作用を用いて版を作る腐蝕法(間接法)
最古の技法はビュランという彫刻刀で版を掘るビュラン(エングレーヴィング)で、直線的なシャープな線が特徴。
私がよく見るポアント・セッシュ(ドライポイント)は銅版をニードルで直接引っ掻き、その時できた”まくれ”を生かした滲んだような線ができるのが特徴。
長谷川潔が再興させたマニエール・ノワール(メゾチント)は櫛目状の刃のついたベルソーなどの道具で細かい線や点を掘ることによって、”まくれ”を作り、そこにインクを染み込ませることで深い黒を作ります。そこにスクレーパーで”まくれ”を削ることによって白い部分を表現します。
この3つが直刻法で、次の2つが腐蝕法です。
オーフォルト(エッチング)は、銅版に防蝕剤を塗り、その上からニードルで描画し、腐蝕液に浸すと描いたところだけ凹型に腐蝕されます。力が直刻法よりもいらないので、自由な線が生まれます。
アクアタント(アクアチント)は松ヤニの粉をふりかけ、腐蝕させると、ついてない部分が腐蝕されて砂目状の面が出来上がります。面の濃淡をつける表現ができます。
ざっと今回の図録にあった説明を見ながら、自分の理解のためにもまとめてみました。
この技法がなんとなくわかると、銅版画の見方もこれから随分変わってくるのでは、と今後の美術館巡りがワクワクします。
で、今回の長谷川潔展ですが、渡仏前から戦前、戦中、戦後と網羅されており、作品の遍歴がわかり面白かったです。
私的にはまだ初期の頃の木版画から目が釘付けに。
写真NGだったので、残念ながらありませんが、マティスの切り絵のような大胆さと躍動感、また色をつけた「魚見小屋」という作品も色のバランスやトーンが好きでした。
ところどころ作品に長谷川潔自身の言葉が添えてあり、それも理解しやすく共感しました。
彼の言葉によく「神秘的」という言葉が出てきていたのですが、それがどこか静かに謎めいているように感じる所以なのかなと思いました。
植物画も、止まっているのに動いている、生きている、しおれていく、のを感じる気がしました。
ルドンの絵にもなんとなく同じ匂いが・・・。
あと、もう一つ今回感じたのが、長谷川潔は油彩も描いているのですが、今回同じ題材で描いた油彩と銅版画が並べて展示してあり、見比べることができたのですが、比べて見ると断然銅版画の方が私には魅力的に見えるんですよね。。。色彩があるものよりも、モノトーンの方がぐっと魅力的に見えます。
これってなんなんでしょうね?
私のただの好みなのかもしれませんが、これも直接見たから感じれたことなのかもしれないですね。
と、こんな感じで十分満喫できる展覧会でした。
ただ、写真NGなのはしょうがないのですが、この画家さんって若い子にも好まれそうな感じなので、宣伝の仕方とか、パネルのデザインとか、見せ方次第ではもっと若い子にも見てもらえそうなのにな…とひそかに老婆心を抱いてみたり。
荻須記念美術館自体も初めてでしたが、静かでとてもいい美術館でしたよ。
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荻須高徳の作品の展示はもちろん、アトリエも再現されていました。
写真NGだけど。
アトリエに行く通路はこんな感じ。
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稲沢荻洲記念美術館
〒492-8217
愛知県稲沢市稲沢町前田365番地8
0587-23-3300