【カポエイラxマンガ=トークライブ開催】「異」文化よりも「似」文化という視点
【カポエイラxマンガオンライントークライブ!】
◎日時:12/11(日)日本時間10:00〜
◎出演:メストレ・コブラマンサ(Kilombo Tenondé)x 迫 稔雄(漫画家)x Toshi(Capoeira Angola Tokyo)
◎配信:YouTube/@angolatokyo4427 ↓
ひょんなことから生まれた「ひょうたん」対談?!
長年東京でカポエイラ・アンゴーラのグループCapoeira Angola Tokyoを運営されているToshi&ひろこさん。個人的にも長年交流がある繋がりで今年8月から僭越にもオンラインでカポエイラ音楽のクラスを企画していただいていた。
我が師匠コブラマンサに師事して来た歴史は私よりも長いToshiさん。2015年にはコブラ先生の居住地であるKilombo Tenondéキロンボでも合流。今年2022年も私が日本帰国時2月に再度キロンボを訪れていた。
とある10月のオンラインクラスの日、普段はジャングルの中のキロンボ本部に居住しているコブラ先生が、私が運営を任されているキロンボのサルヴァドール支部にたまたま滞在していた。
気さくでフットワークの軽いコブラ先生はオンラインクラスに特別友情出演?してくれることになり、短時間でも密の濃い情報をシェアしてくれた。
クラス後の雑談中、Toshiさんが日本で話題のカポエイラ漫画「バトゥーキ」11/17発売の単行本14巻に紹介され、コブラ先生とキロンボのことを描いてもらったと言うではないか。
自分がモデルになったキャラクターが登場する漫画に興味津々なコブラ先生。あれよあれよと言う間に、迫先生を招待してオンライントークライブを企画してみようという話にまでなった。
カポエイラらしい?即興企画!
12月に入ってから迫先生も入れスケジュール調整をし終わったのが12/4。デザイン担当の私を挟んで画像や情報のやり取りをまとめたものを突貫工事で完成させ、翌日には告知に漕ぎ着けた。これも皆がカポエイラで養った即興力を発揮できたからかもしれない。
Capoeira Angola TokyoのToshi&ひろ子さん側もちょうど東中野で運営するOndaOn-da-building〜オンダビルディング〜 のリニューアルオープン後、キロンボ側も1月恒例イベントCosmoAngolaの企画の合間の激務を縫って、コブラ先生ともオンライン配信テストと打ち合わせができたのが昨日12/9。
それまでにトーク内容の方向性は何度か擦り合わせて来た。それをコブラ先生にも伝え彼の見解も盛り込んだ対談は、即興性が高い割になかなか濃い内容になりそうである。
「異」文化では無く「似」文化の視線を
漫画xカポエイラ対談。二次元と身体性、日本とブラジル、一見正反対にも見えてしまうモノを合流させる対談から広がる可能性にワクワクして来ないだろうか。
そして打ち合わせでコブラ先生も言及していた、違いよりも似ている点を見てみよう、という視線。
それは国、文化、言語、人種、二次元三次元…そういうある意味「西洋的」(敢えてこう言いたい)とも言える囲いを超えた次元での、人間性の原脈を繋げる意味合いもある。
一方、カポエイラの本場ブラジルで漫画「バトゥーキ」について検索してみても、実はまだそこまで情報はシェアされていない。
カポエイラを知らない国民はいない国でも、よっぽどの漫画ファン以外ではまだまだ認知度が低いようだ。そもそも日本のように誰でも漫画を読む文化も無いので、至極当然とも言える。
これだけ情報過多とも言える現代においても、知識の普及という点においては、まだまだ文化、言語や地理的な壁も厚い。
それを踏まえた上でも今回の対談は、一見正反対のモノの合流から、未知なるモノ生まれる瞬間が垣間見れる貴重な機会になるはずである。
カポエイラの社会性?
検索して見つかった数少ない記事↑や、キロンボとコブラ先生のSNSイベント告知へ寄せられたコメントを見ると、漫画の存在を知っているブラジル人は「バトゥーキ」がこちらで公開され広まるべきだという賞賛が多い。
この反応を見ても「バトゥーキ」作者迫先生のリサーチ力、自らカポエイリスタでもあることからの体験から来る理解力の高さ、それを基盤にしたエンターテイメント性の高い物語、すべてがカポエイラ本場のブラジルでも高く評価されているのが垣間見れる。
かつての奴隷制度を基盤にして形成されて来たアフロブラジル文化の一つであるカポエイラ。その歴史的、社会そして時には政治的背景、そういった側面抜きでカポエイラを語ることはできないとコブラ先生は常に教えて来ている。
実際、私がブラジルに移住してから触れて来たカポエイラのリーダーたちは、コブラ先生をはじめほとんどの方々が、身体の動きだけでは無い、社会運動Movimento socialとしてカポエイラをブラジル社会で生きて行く中での「武器」としている。
アフリカ本土から引き剥がされ強制労働を強いられ死んで行った祖先たち。自由を求めて来た彼らの「抵抗の武器」としてのカポエイラ。そういう意味合いを忘れずに活動を続ける師匠や先生、あるいは生徒たちは多い。
カポエイラ=エシューExú=表現者
そんな環境においても漫画「バトゥーキ」ブラジル公開への期待が高いのは、作品がカポエイラの複雑な歴史・社会的側面を踏まえた本質的な部分を表現していると評価されているから、と言っても過言では無いだろう。
漫画家という表現者としての迫先生は、ある意味アフロブラジル信仰カンドンブレーの神様であり精霊であるエシューExúのようでもある。
優れた表現者は、異なるモノを融合していか様な形にも産み出すエネルギーを持つ。また、カポエイラ自体も全てを巻き込み「何か」を産み出すそのエネルギーが、エシューに例えられる事も多い。
エシューは人生の方向性を司る交差点の主、そして道を開く神様であり、その空洞から世界が生まれたとヨルバ神話でも伝えられるひょうたん(葡語でcabaça)を腰に下げて描かれる場合も多い↑。
なぜひょうたん対談なのか?
今回の対談を企画する段階で「日本でカポエイラを広めること」についてをテーマにしたいと言うToshiさんからの要望もあり、タイトルを決めるに当たって
「Abre a cabaça, espalha a semente」
というカポエイラでも歌われる歌をテーマにしては?と提案した。
「ひょうたんを開いて、種を蒔こう」
種を蒔くことで、次世代に繋げていく、広がって行く、物事の始まりを創る…様々な意味がある。またひょうたんは子宮に例えられる場合も多い。
この歌はまた、もともとはブラジルインディオとアフリカ人混血のカボークロたち由来の歌でもあるらしい。
テーマをコブラ先生に伝えた時、彼もすぐにヨルバ神話の事を思い出し、ひょうたんにはそれこそ様々なエネルギーがある、と歌から広がる対話の可能性に期待を寄せていた。
カポエイラに使われる楽器ビリンバウはひょうたんが共鳴することで音を出しており、それ以外にもアフリカ由来の楽器にはよくひょうたんが使われている。
また、ブラジルインディオたちが自然の精霊を呼ぶ聖なる楽器マラカー(マラカス)もひょうたんから出来ている。
そして日本でも古来より神具として使われただけで無く、世界各地で神秘的な力を秘めた植物とされて来た。
そんな思いが込められたタイトルである。
AI訳では無いおもしろさでどうぞ!
SNSでシェアしたポルトガル語文をAI翻訳してみると、「オンライン異文化チャット」となりこれは違うと思ってしまった。
Interculturalとしたのは相互的に文化を合流させたい意味を込めた。「異」文化では無い。
今回の対談を通訳させてもらうに当たって、大役を仰せつかったと緊張気味である。しかし、カポエイラも漫画も機械的では無い自然的人間的な味が醍醐味であり、本質的でもある。
真剣さの中に間違ったり戸惑ったりしながら、笑ってしまう人間味な部分から本質を突くのが、ある意味漫画とカポエイラの醍醐味とも言える。
漫画「バトゥーキ」にもコブラ先生のカポエイラもそんな要素がある。そんなこんなで、通訳も機械にはできない感じで赦してもらえ無いかと密かに期待しつつ。
コブラx迫先生方の対談から、日本、ブラジル、世界中どこでも「異」よりも「似」文化があるという視点を、笑いも交えながら垣間見る機会になるのでは無いかと期待している。
ライブはアーカイブでも見れるらしいので、リンクへ↓Vamos que vamos!