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古典にみる四季の過ごし方

はじめに

今回は『素問』という中国の古典に書かれている、四季の過ごし方についてご紹介します。
『素問』は東洋医学の基本的な考えが書かれており、何千年も昔の書物でありながら、現代の私たちにも役に立つ知恵が満載です。

東洋医学には「未病治」という言葉があります。
「いまだ、病まざるを治す」つまり病気になる前に予防して治してしまう、という意味です。
それを可能にするのが日々の養生です。
今回ご紹介する、四季の過ごし方も養生法の一つです。
季節ごとの過ごし方が載っているのでご紹介します。

①春の養生法

春の三ヶ月を発陳と言う。
冬の間かくれていたすべてのものが、芽を出し活動的になり始める時期だ。陽気の多くなる時期である。人体も陽気が多くなる時期だ。
日の入りと共に寝て日の出と共に起きることだ。
心身ともにのびのびと、活動的な気持、あるいは活動するのがいい時期だ。
これが春気に応じる方法である。
この春の気に逆らって、静かに沈んだ状態でいると病気になる。
池田政一著『初めて読む人のための素問ハンドブック』

春のことを「発陳(はつちん)」というそうです。
「陳」は古いものという意味で、「発陳」とは冬の間に溜まっていたものを体の外に出していくという意味です。(参照「ニーハオ!中医学的養生法」http://www.akyrise.jp/cyuigaku/2011/10/post-5.html)

花粉症の方は身にしみてわかると思いますが、春は体内の毒出しの季節です。
鼻水、涙、くしゃみなど、体からいらないものを排泄するために様々な症状が出ます。
皮膚から毒素を排泄しようとした結果、湿疹などの皮膚症状が表れる場合もあります。

春は肝の働きが活発になります
肝とは、肝臓のことをさすのではなく、肝機能全体のことをさします。
肝は体内に入ったものを解毒する働きがあるので、春は体内の毒素や老廃物を排泄する働きが活発になります。
症状が出るとつらいですが、体内の大掃除なのでありがたいですね。

活動することをすすめているので、ウォーキングやジョギングなどの適度な運動するのがいいようです。
新しいことを始めるのもいいですね。

②夏の養生法

夏の三ヶ月を蕃秀という。
草木が成長し、万物が茂り花咲き乱れ、陽気が最高潮に達する時期である。
この時期は太陽が沈むと寝て日の出とともに起きる。
日中が長いけどなまけてはいけない。
適当に運動して一日一回は発汗するように心がける。
気分的にも発散するような気持でいるとよい。
もし陽気を発散しないと、身体内に熱がこもって病気になる。

(同著より引用)

夏は「蕃秀(ばんしゅう)」というそうです。
これは万物が生長して繁栄華美になることをいいます。
天地陰陽の両気が盛んに交合し、万物に花咲かせ実らせます。
(北海道医療大学 http://www.hoku-iryo-u.ac.jp/~maruho/2c-03.html )

適当に運動して発汗するのがいい、とありますが、近年の夏の暑さは異常なので注意が必要です。
日の出とともに早起きし、まだ涼しいうちに運動し、日中の暑い時間は室内でゆっくり過ごすのが現代の夏の養生法だと思われます。

一日中冷房のきいた部屋にいては陽気を発散できず、不調の原因となるので、涼しい時間帯に適度な運動を心がけましょう。

③秋の養生法

秋の三ヶ月を容平という。
万物が実を結ぶ時期だ。
すべてが引きしまり収納される時期である。
当然陽気も体内深く収納される。
この時期は早く寝て鶏とともに起きる。
あれもやりたいこれもやりたい、などとイライラして、活動的になってはいけない。
この時期に活動しすぎて、陽気を発散すると肺が弱り、冬になって下痢になる。

(同著より引用)

秋は「容平(ようへい)」というそうです。
「容平」とは収めるという意味と、成長がとまり調整するという意味があります。
自然界のすべてのものは熟して実り、すべてのことが安定してきます。
(参照「ニーハオ!中医学的養生法」 http://www.akyrise.jp/cyuigaku/2011/10/post-5.html)

まさに「実りの秋」ですね。
秋は先ほどまでの春夏とは違い、「活動的になってはいけない」とあります。
陰が強まっていく季節なので、それに合わせて活動もおとなしくしていく必要があるようです。

秋は肺(肺機能)の活動が活発になる季節です。
肺が弱い人はこの時期に無理をすると、肺炎や喘息などの肺の病にかかってしまいます。
当院にも秋は肺の症状が出ている人が多く来られます。

肺は「皮毛」をつかさどります。
「皮毛」とは、皮膚の一番上層部、つまり皮膚表面をさします。
皮膚を鍛えると、肺の病になりにくくなります。
皮膚の鍛え方には、タオルを使い、乾布摩擦の要領で皮膚をこするといいです。
皮膚は外界との境目であり、バリアの役割をしています。
皮膚が鍛えられると、外からのバイキンの侵入を防ぐことができるので、免疫力もアップします。

④冬の養生法

冬の三ヶ月を閉蔵という。
万物が静かに沈み消極的になる時である。
すべてが収納され、貯蓄されておく時期で、決して発散してはいけない。
この時期は早く寝て遅く起きる。
陽気も深く貯蔵されているから、心身ともに活動的になってはいけない。
運動などで発汗するなど絶対だめである。
もしこの時期に発汗したり、酒を飲んで一時的に陽気を多くし、その反動で冷えたりすると腎が悪くなる。
冬に無理すると、春になっても陽気が発動しません。
必ず手足がだるくなります。
鼻血を出すこともあります。

(同著より引用)

冬は「閉蔵(へいぞう)」の時期。
その名の通り、閉じてエネルギーを蔵める(おさめる)時期です。

「決して発散してはいけない」とあるように、むやみに動かないことがポイントです。
ウインタースポーツが好きな方は、汗をかいたらこまめにふき、運動の後はお風呂に入るなどしてしっかり体を温めることが大切です。

冬の間ゆっくり過ごして生命力を養うことが、春夏の時期に活動的になれることにつながっています。
冬はとにかく足元を温かくして、のんびり過ごしましょう。

まとめ

以上が古典からみた四季の過ごし方です。
いかがでしたか?

起きる時間・寝る時間を日の出と日の入りに合わせているのが、いかにも自然にそくした生活という感じですよね。

今はまだ陰が多い時期なので、のんびり過ごして春夏の活動に備えるのがいいようです。
みなさんも無理なくお過ごしくださいね。
と言っている私も、今、夜遅くに書いているので、この辺でおしまいにします。

今日もありがとうございました!



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