売れた作品に対する嫉妬心は、僕が小説を書く前からあったのだ
あの頃の嫉妬はなんだったのだろう
僕はいま、小説を書いている。
これまでに長編を数作と短編を数十作ほど。
そしていつの日かそれが出版され、世に出ることを夢見る者である。
自分で小説を書き始める前から、小説というものが好きだった。
まぁ、好きでなければ自分で書こうなどとは思わないと思うが。
これはまだ、僕が小説を書き始める前の話である。
電車通学、通勤をしていた頃が一番読書をしていた時期だと思う。
駅ナカの本屋さんに立ち寄っては、気になるタイトルやあらすじの本を買い、行き帰りの電車の中で読んでいた。
そんな買い方をしていたものだから、やはり当たり外れ(失礼な言い方ではあるが、当時の気持ちのまま書いておく)はあったもので。
「リアル鬼ごっこ」を読み終えた時なんか、「はぁ?なんじゃこりゃ」と口に出して言った覚えがある。
こんな作品のために自分は時間を潰されたのかとマジで腹が立った。
学生時代の話になるが「恋空」なんて読む気もしなかったし、イケメン俳優が受賞し出版された「KAGEROU」など、作品を読まずに酷評されたレビューを見ては溜飲を下げていた。
「きみの膵臓をたべたい」が話題になったときも、「どうせあんなもん」という気持ちがあり結局読まなかった。
まだ、小説を書き始める前の話である。
あの時自分の中にあった気持ちは何なのだろうと考える。
当てはまる感情の名前は「嫉妬心」だ。
「こんな作品でも出版されている」「有名人だから受賞したんだ」
そういった思いがあったのだろう。
まだ、小説を書き始める前の話である。
それはきっとどこかで憧れがあったのだ。
小説というものに対して。
憧れと理想を踏みにじられたような気持ちがあったのだろう。
そしていま、自分で作品を作るようになってその正体がようやく分かったような気がする。
そして前述した作品たちがどれだけすごいのかも。
あの時、作品に対して嫉妬する思いが無かったら、僕は小説を書き始めていなかっただろう。
嫉妬心というものは一見ネガティブにも思えるが、それに対する執着がなければ起こりえない感情だ。
だからこそきっと、あの頃から。
僕が書き始めるのは決まっていたことのようにも思える。
それに気づかせてくれたんだ。
いまなら素直に言えるよ。
ありがとう「リアル鬼ごっこ」
いまだに許してはないけどな。