【フロサポ遠征記】セレッソ大阪戦を観に行ったら、自分のルーツを辿ることになってふくらはぎが死んだ話。(後編)
前編はこちら
遠征2日目、それぞれの「いにしえの都」へ。
3:30。新聞配達の人と競り合いができそうな時間にもぞもぞと起きた私は、いそいそと支度を始めました。隣のベッドではまだ友人が寝静まっている、静かな大阪の朝です。
先に種明かしをしてしまいましょう。私は今日、奈良県内にある祖父の生家を訪ねようと思い立っていたのです。
祖父は奈良のあるお寺で生を受けたのち、親類の寺に後継者がいないという報せを受け、幼少期に私の地元である長野へとやってきました。そこから60年以上にわたり住職を務め、廃寺寸前の寺を1代で立て直し、ちょうど3年前の2019年1月に数え年100歳で遷化(※)をしました。
恥ずかしながら祖父が亡くなってからその偉大さに気付き、この旅ではぜひ奈良まで足を伸ばして、祖父の生家であるお寺を訪ねようと思っていました。
友人は友人で、京都で和菓子屋巡りをしたいらしく、2日目については日中別行動をし、夕方過ぎに再び大阪で落ち合うことにしました。お互いを尊重できる関係性に感謝しつつ、寝ている友人を起こさないよう、そっとホテルの部屋を出ます。
そこから、始発の近鉄に乗って奈良まで向かうのでした。大阪を出た時は真っ暗でしたが、生駒あたりできれいな朝焼けが見えました。
――ふくらはぎが死ぬまで、あと約8時間――。
本日のお品書き!~旅の行程~
私は基本的に「旅は効率的にめいっぱい楽しみたい派」のため、あえて計画を立てないコンセプトの時以外は、比較的きっちりと行程を決めて旅に臨みます。
そんな今回のお品書きは......。
1.春日大社で前回お参りし忘れたところに詣でる
2.大神神社で縁結びを願う
3.祖父の生家を訪ねる
4.ならまち(奈良駅付近)を散策
こちらになっております。
本当はね、松本山雅時代に応援していた飯田真輝選手が在籍する、奈良クラブの試合も行きたかった!でもよりによってセレッソ戦と1時間違いのキックオフで被っていて、何をどう繰り合わせても無理でした......。
更に言えば橿原神宮も行きたかったですし、自分のルーツついでに名前の由来に1枚嚙んでいるらしい、明日香村にも行きたかったのです。
しかし奈良クラブのホームスタジアム、橿原神宮、明日香村の3か所はエリア的に近いようなので、次回の奈良旅は必ずやその3か所を巡るのだ......!
というわけで、やや後ろ髪を引かれる部分はあれど、今回の旅に全力で行きます!
旅の行程1、春日大社~ポンコツを添えて~
奈良に着いた私は、さっそく春日大社へと向かいます。3年前に奈良に訪れた際も春日大社に行ったのですが、歩き疲れて肝心の本殿にお参りができなかった記憶があったため、今度こそ本殿までたどり着くぞという強い気持ちを持って、ずんずんと向かいます。
紅葉がきれい!
表参道を通って、やっと会え......ん?
来たこと......ありました......。
なんと間抜けなことよ......。鹿も心なしか、憐みの表情を浮かべている気がします。
私が愛する川崎フロンターレの小林悠選手は、天然すぎる行動を連発するあまり関係者間で「ポンコツ」と愛を込めて呼ばれていますが、小林選手もびっくりするほどのポンコツっぷりです。小林選手は同い年だけに、シンパシーを禁じ得ません。
しかし先はまだ長いので、ここでへこたれている場合ではありません。再び心を強く持って、美味しい朝ごはんを食べるべく駅前に戻ります。
とはいえまだ朝の8時前。やっているお店は限られています。そんな中綿密な調査の元見つけたのは、いわゆる「駅ナカ」のこちらでした。
JR奈良駅の1Fに入っているこちらで、「これぞ朝食」といえるものをいただきます。基本的に地元で採れたものを提供されているとのこと。
朝方かなり冷え込んでいたので、お味噌汁の温かさがしみます......。サラダもしゃきしゃきで、田舎育ちの人には分かるかもしれませんが、「太陽の味がする畑で育ったお野菜」の味がします。期待していた以上に美味しい!
そしてメインディッシュはこちら。
TKG!!濃い黄身がお醤油に優しく包まれながらお米に絡みます。箸を休めている暇などなく、ぺろりといただいてしまいました。
普段は定食などを頼んでも「ごはん半分にしてください。」とお願いすることが多いものの、このTKGに関しては治外法権です。致し方ない。
そしてお腹と心が満たされた私は、次の目的地へと向かうのでした。
――ふくらはぎが死ぬまで、あと約5時間――。
旅の行程2、大神神社~縁結びを願って~
次に向かったのはこちら。
三輪駅にある、大神神社です!
なぜ大神神社に来たのかと言うと、こちらにある「三輪山の赤い糸伝説」なるものに惹かれ、「私もそれにあやかりたい!」と、鼻息荒く出向いたのでした。私の赤い糸はいずこに繋がっているのか、そろそろお示しいただけませんでしょうか。きっと三輪山に登ればヒントが得られるかもしれない......!?期待に胸が膨らみます。
そんなこんなで、神社に着くといそいそと登拝の手続きをします。大神神社は三輪山そのものがご神体であるため、お参りをするためには山を登る必要があるのです。
さらに、「カメラ等での撮影禁止」「水分補給以外の飲食禁止」「山で起こったことは口外しない」など、神域ならではのルールやしきたりがあるようです。
そのため、ここでの体験を詳細に語ることは控えなければならぬことが残念なのですが、ひとつだけ言わせてください......。
私自身いくら山生まれとはいえ、山登りは数年ぶりだったため、なかなかしんどかったんですね。それでも負けず嫌いゆえにペースを落とさずに歯を食いしばって登ったのです。「信じられるのは己の脚力のみ!」と自身を鼓舞しながら。
ご縁が結ばれたくて山に登ったのに、結果として己のみを信じることで登り切ったわけです。なんという矛盾でしょうか。私の赤い糸、どこかで切れちゃってないですよね?ね?
......。
......。
ごほん。
下山後、疲れた体を三輪名物であるにゅうめんに癒してもらいました。三輪はそうめん発祥の地とも言われ、兵庫県の「播州そうめん」、香川県の「小豆島そうめん」と並ぶ、日本三大そうめんの産地なのです。
すごく優しいお味ながらしっかりうまみのある出汁に、細くて柔らかい中にもコシを感じるそうめんのハーモニーが響きます。ああ、なんという調和でしょう......。和音に例えると、ドミソくらいの基本的な、でも間違いのない和音です。......そろそろ自分でも何を言っているのか分からなくなってきたので、このへんでおしまいにします。
ちなみに後から知ったのですが、このあたりはOWL magazineアンバサダーである、かほさんの「ど地元」とのこと。とっても良いところでした!
――ふくらはぎが死ぬまで、あと約2時間――。
旅の行程3、祖父の生家~ふくらはぎの死亡を添えて~
三輪を後にした私は、登山による心地よい疲労感に包まれながらも、いよいよ自身のルーツである祖父の生家へと向かいます。
最寄りの駅は「御所駅」という、奈良の南西にある場所です。どうやらその御所駅から車だと5~10分ほどの距離らしいのですが、私は駅前にあるレンタサイクルで自転車を借りることにしました。
これがとんでもないチョイスになると知らずに、レンタサイクルの手続きを進めます。
少し古めのママチャリがあてがわれましたが、走行に問題はないようです。レンタサイクル屋のお母さんにご挨拶をし、元気に自転車をこぎ出しました。
しばらくは幹線道路沿いを走ればいいようで、見通しの良い道が続きます。天気が良いことに感謝をしつつ、私の地元もたいがい田舎だけど、ここもなかなかだなぁと思いつつ、軽快に目的地までの距離を縮めます。
しかし、目的地まで400mくらいになったところで幹線道路から外れると、一気に雲行きが怪しくなりました。
目の前に、坂道が立ちはだかります。
しかも、坂の勾配はどんどんきつくなっていくではありませんか。
はじめはなんとか自転車をこいでいた私ですが、たまらず降車し、自転車を押して坂道をのぼりますが、さっきまでサポートをしてくれていた自転車が、今では鉄の塊として、坂をのぼらんとする私の足を引っ張ります。
11月だというのに額からは汗が吹き出し、ふくらはぎは張りつめ、その辛さは三輪山の比ではありません。しかもこの山登りは想定外に降って湧いたもの。心理的なしんどさもあいまって、思わず涙交じりにつぶやきます。
「じいちゃん、山で生まれたなんて聞いてないよ......。」
ここでGoogle マップさんにお願いです。ぜひ次期開発ではDEMデータを組み込んで、標高も分かるようにしていただけると幸いです。私より。
そんな風に泣きべそをかきながら、300メートル強の急勾配に何度も心が折れかけながら、ふくらはぎを酷使しながら、なんとか自転車を捨てることなく、ついに目的地に着きました。
これが祖父の生家......。
紅葉が映える、立派なお寺です。
ひとしきり感慨に浸った後は、母にも写真を送りました。
お寺からの景色も開けています。じいちゃんは、小さい頃この景色を見ていたんだね。
じんわりと胸に広がるものを感じながら、帰りはゆるやかな坂を選んで自転車で下山です。
気のせいでしょうか。帰りはサドルに足を載せるだけなのに、足の震えが止まらないような......。生まれたての小鹿にでもなったような......?
――ふくらはぎ、死亡――。
レンタサイクルを返却すると、ふた山登った34歳の足はガッタガタで、なんとか御所駅まで戻ったのでした。
ちなみに御所駅の駅舎は、明治時代に創建された当初のまま残っているものとのこと。大正生まれの祖父も利用したのかもしれません。
旅の行程4、ならまち散策~再びのポンコツを添えて~
からがら電車に乗った私は、頭も体もぼんやりと動かない中で、1時間ほどの仮眠を取りました。
そこで何とか少しは動けるまでに回復をし、ならまちを散策すべくJR奈良駅から近鉄奈良駅方面へと向かいます。
前回奈良を訪問した際、神社仏閣巡りに歩きすぎてならまち散策ができなかったと記憶していたため、今度こそと体力を振り絞り、JR奈良駅前の交差点を渡り、三条通りへと入ります。
......。
......。
来たこと、あるかも。
恐らく前回も、体力の限界を迎えつつも「ならまちを歩きたい!」と意地で回ったのでしょう。わずかばかりに記憶が蘇ってきました。
由緒正しい観光地にある風情のお土産屋さん、奈良漬けのお店、そして......餃子の王将。この並びを見て、3年前のうっすらとした記憶が確信へと変わります。
あ、絶対に来たことある。
......。
ポンコツやないか。
小林選手も驚きのポンコツやないか。
もはやこの時点で自分で自分にちょっぴり引いているのですが、またしても謎の意地を発揮しつつ、最後の体力を振り絞り、前回巡ってないであろう場所を歩きます。
しかしこのあたりで朦朧とし始めているため、写真はほとんどありません。
かろうじて写真におさめた「中川正七商店」の看板。ここでまたしても奈良クラブを想起し、今度訪れた際は絶対に試合を観に行くことを改めて誓います。飯田選手がそれまで在籍してくれていますように......。
ここで駅前の人混みに心が折れ、予定よりも少し早い電車に乗って大阪へと戻りました。
時を同じくして、京都の人混みに心が折れた友人から、大阪に戻ると連絡が入ります。
ああ、人混みができるくらい、みんなが外を出歩ける世の中にやっとなってきたんだなぁ......むにゃむにゃ......。
アディショナルタイム~再びの大阪~
再び大阪で落ち合った私たちは、お土産を買うと余った時間を有効活用するため、思い立って占いへと出向きました。
でももはや朦朧としていた私は、言われたことをほとんど覚えていません。目指している仕事の方向性は間違っておらず、人の引き立てで良い運びになると言われたような......。頑張ります。
友人は占いの後「絶対縁切り神社に行く!」と言っていたので、由々しきことがあったのかもしれません。
そんな時間を過ごした後、ごはんを食べて新幹線に乗るのにちょうど良い頃合いになりました。
事前に「2日目の夜はお好み焼きが食べたいね」と話していたのですが、われわれが結果的に向かったのは串カツだるま。
2日連続、2回目の出場です。
前日にハマっただるまハイボールを再び飲みたい私と、とにかくレンコンの串揚げがもっと食べたい友人の意見が合致した結果でした。どないやねん。
そしてだるまハイボールとレンコンの串揚げを心ゆくまで楽しんだわれわれは、家路に着くのでした。
新大阪駅に向かう途中のツリーが、冬の訪れを告げています。
長かったような、あっという間だったような。
今回も色々な出会いがあったなぁ。楽しかったなぁ。
また来るね!きっとそう遠くないうちに!!
延長戦~その後のふくらはぎ~
帰宅時にぱんぱんになっていたふくらはぎは、その後悲鳴を上げました。
具体的に言うと、翌日には表層筋である腓腹筋の痛みがピークに達し、腓腹筋の痛みが引いてきたかと思えば、今度はその奥にあるヒラメ筋がずーっとじわじわ痛み続けたイメージで、1週間ほど歩行困難になっていました。
会う人会う人にゲラゲラ笑われながらも、「速筋と遅筋の違いを自らの体で感じる実証実験をしてるの!」と強がります。が、ふざけてふくらはぎをつつかれた日には撃沈し、しばらく立ち上がれません。年齢を重ねて弱った筋肉を酷使したら、筋肉ちゃんはこんなにへそを曲げてしまうんですね......。
大阪から帰ってきてからというもの毎日きっちりお風呂に浸かり、絶叫しながらマッサージをするルーティンを繰り返して、ようやく平常運転に戻ったのは10日ほど経ってからでした。
現在寒い日が続いて筋肉が収縮しやすくなっているので、みなさまどうかふくらはぎなど、くれぐれもご自愛くださいませ。筋肉ちゃん、過労、ダメ、ゼッタイ。
また例の病における感染者増加が叫ばれていますが、今シーズンもJリーグが無事に開幕しますように。好きなところに旅ができますように......。
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サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
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