なぜABC-MARTに入社したのか?
靴に興味はなかった。
自分の靴のサイズですら正確にわからなかった。
そんな私がなぜ全国女性販売員のトップを獲れたのか?
摩訶不思議な物語のはじまりである。
~ABC-MARTに入るまで~
体育系の専門学校を卒業後、ジュニアテニスコーチとコンビニのアルバイトを1年ほど続けていた。
同い年の友人たちは就職が決まっていく・・・そんな年だった。
頭の片隅にそのことはあっても、不思議と焦りはなく、悩みのない日々を送っていた。
『定職に就きなさい』
いつからか母と顔を合わせるたび、こう言われていた。
《うるさいなぁ・・・》
返事だけして何もせず何か月もやり過ごしていた。
また母が同じことを言ってきた。
『定職に就きなさい』
でもその言葉は以前と違い重みが増した上、声は震え母の目には涙が溜まっていた。
《えっ?!そんなに?!》
母と私の温度差はものすごく違っていた。
このまま何もしないとまた言われて面倒くさい。
『わかった。わかったよぉ・・・』
そう返事をして
《どこか適当に受けて落ちて、行動したことを見せれば少し収まるだろう》と考えていた。
そんなねじ曲がった感情で就職活動を開始した。
肘をつき、頬に手を当て求人誌をめくり、良さそうなところに付箋を貼る。
その付箋のひとつ、目に止まったのがABC-MARTだった。
専門学校時代の友人が就職した会社だったので名前は知っていた。
《ここにしてみっか》
本当に軽い気持ち。失礼な選び方だった。
面接の申し込みをし、クローゼットに眠っていたスーツを引っ張り出した。
人の多い渋谷。
《面倒くさいなあ・・・》
そんな気持ちで面接会場までため息まじりに歩いたのを今でも覚えている。
続く
【次回、面接会場。その合否の行方】