靴に興味はなかった。 自分の靴のサイズですら正確にわからなかった。 そんな私がなぜ全国女性販売員のトップを獲れたのか? 摩訶不思議な物語のはじまりである。 ~ABC-MARTに入るまで~ 体育系の専門学校を卒業後、ジュニアテニスコーチとコンビニのアルバイトを1年ほど続けていた。 同い年の友人たちは就職が決まっていく・・・そんな年だった。 頭の片隅にそのことはあっても、不思議と焦りはなく、悩みのない日々を送っていた。 『定職に就きなさい』 いつからか母と顔を合わせるたび、
接客術を書くと予告したのだが、私の歴史を語ったあとのほうがわかりやすいので、もう少しあとに登場させます。 ABC-MARTで働く。と、腹をくくってからの切り替えは早かった。個人売上の意識、わからないことを徹底的に聞き、早く仕事に慣れることに重きを置いた。 正社員になるまでの2か月はほとんど記憶がない。 本当にがむしゃらだったからだ。 昼休みは上司と話したいのに、当時彼氏からメールの返信が遅いだの少ないだの言われ不機嫌になられ、煩わしくて別れた。他にも理由はあるけど、それ
降り立ったことがない銀座の地。 八百屋のようなべらぼう口調の呼びかけをするABC-MARTはそこになかった。巨大なビルのきれいな店舗。 さすが銀座。 場違いな気がしてならなかった。 ひとつ年上の男の子と一緒に初日を迎えた。 その当時のABC-MARTの制服・青色のポロシャツに着替え、アメリカサイズ・ヨーロッパサイズの見方や在庫の位置、フィッテイングを一通り教えていただいた。 お客様にどう声をかけていいかわからないし、いきなり革か合皮か質問されてもわからないし、ひきつっ
面接会場。 グループ面接で4~5人横一列に座り、面接官は2人だった。 今でも面接官の方の顔と名前は覚えている。 左端の方から志望動機を話す。 最初の方は同い年くらいの男性。 その次の方は30代半ばか40代くらいの男性。 とても年上に見えた。 2人とも緊張していて声が震えており、面接の例文に出てくるような志望動機だった。 それを聞いて私も緊張してきたのである。 なぜか? 実を言うと志望動機を考えてこなかった。 落ちる気満々なので、他の方のを聞いて真似しようと考えていた。